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直言

Chokugen

東大阪徳洲会病院 院長橋爪 慶人(はしづめけいと)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

東大阪徳洲会病院 院長橋爪 慶人(はしづめけいと)

2021年(令和3年)10月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1308

各職員が前を向き自分のできること探し
正しく恐れ最善願いながらも最悪へ備え
徳洲会の仲間を思い積極対応する職員に感謝

2019年末、中国・武漢市から始まった未知の感染症――。日本では当初、帰国者を対象に水際対策が取られ、当院も20年1月17日にICT(感染制御チーム)を中心に対策を開始しました。その後、渡航歴のない感染者が確認され、ヒト―ヒト感染が報告されるに至り、当院は2月26日から新型コロナ対策報告会議を毎日開催しています。

院内へ広げないことに重点
置くことで綻びを最小限に

当院は老衰や誤嚥(ごえん)性肺炎、がん末期の看取りなど終末期医療を行っており、いったんクラスター(感染者集団)が発生すれば、20人以上の死亡が容易に想像できます。ウイルスの性質がわからない段階では、感染防御は、でき得る限りの対策を講じることからスタートしました。転機が訪れたきっかけは、事務職員からの「人とすれ違っても感染するのではないかと、通勤も買い物も怖くてできない」という声でした。目の前の恐怖に対し「正しく恐れる」ことが重要と考え、徐々に明らかになってきた新型コロナウイルスの性質を、勉強会を通じ全職員にわかりやすく伝えていきました。そこから、PCR検査には偽陰性があること、症状がないスプレッダー(二次感染例を引き起こす感染者)がいること、発症2日前から感染力をもつことがわかり、発熱もなく体調の良い職員でも感染源となる可能性が示唆されました。


それまで職員には私生活の行動制限から体調管理、家族にも気を遣う生活を求めましたが、このような状態が長期に及ぶことで綻びも危惧されました。このため、それまでの感染予防策はあくまでお願いレベルとし、病院の感染防御は外部からのもち込みを防ぐ観点から、誰が感染者であっても院内に広げないことに重点を置く策に移行しました。病院に入るところから出るところまでマスクを徹底する、食堂ではいつ、誰が、どの席に座ったのか記録を取り、完全な黙食、休憩中の密を避ける――などに絞ったことで、これだけは守っていこうという意識ができ、綻びも最小限にできました。この考えは面会制限にも影響を与え、20年9月から余命1~2カ月の患者さんには、ご家族との面会を許可しました。1週間に1度など、制限しながらですが、コロナ禍でも最期を看取れたことに、ご家族から感謝の気持ちをいただけ、スタッフの精神的な支えになりました。

PCR陽性でも退院基準を
満たせば心配なく受け入れ

あと問題視されたのは、新型コロナ治療後の患者さんが退院できないことでした。当院では、通常、地元の患者さんを中心に受け入れ、遠方の患者さんが転院してくることはあまりありません。一方、新型コロナ陽性患者さんを受け入れているグループ病院には、大阪府下全域から重症患者さんが集まってきていました。当初は、当院が後方支援としてアフターコロナの患者さんを受け入れたとしても、数が知れていると推察されました。しかし、アフターコロナの患者さんの受け入れを躊躇(ちゅうちょ)している多くの介護施設や病院でも、いったん当院で受け入れ、その後10~14日を経て再燃していなければ容易に受け入れてもらえることがわかり、受け入れを始めました。12月7日に1例目、その後、グループ病院を中心に31例の患者さんを受け入れました。退院したのは21人、残念ながら7人は、コロナ治療後の全身状態の低下から老衰状態となり、看取ることになりましたが、新型コロナによる死亡はなく、PCR陽性でも退院基準を満たしていれば、心配なく受け入れられることが確認できました。新型コロナ陽性患者さんを受け入れている病院のベッドが、適切に回転するための支援ができたと考えています。


今回の「直言」を書くにあたり、役職者にこの1年10カ月を振り返るレポートを提出してもらいました。そこからは当院のような脆弱(ぜいじゃく)な病院なりの苦労や悩みを読み取ることができました。それでも職員一人ひとりが前を向き、自分のできることを探し、ただただ守りに入るだけでなく、正しく恐れ、最善を願いながらも最悪に備える対応を、皆が実践してきた事実をあらためて確認できました。これが院長としての一番の収穫と言えるかもしれません。新型コロナ患者さんの治療を続け、疲弊しながら頑張っているグループの仲間を思う心をもち、自分たちのできることに積極的に取り組む職員に感謝です。


皆で頑張りましょう。

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