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直言

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佐藤 守彦(さとうもりひこ)徳洲会感染管理部会 部会長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染対策室 部長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

佐藤 守彦(さとうもりひこ)

徳洲会感染管理部会 部会長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染対策室 部長

2021年(令和3年)8月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1299

世界で吹き荒れる新型コロナ変異株の猛威
今まで以上に基本的な感染対策の徹底が要
医療人として施設外でも自覚ある行動を取る!

インドでは4月から5月にかけて、新型コロナウイルスが未曾有の大流行を起こし、1日当たりの新規陽性者数が最大で40万人、累計で40万人が死亡しました。これはインドで発生したデルタ株という変異株の影響が大きいと思われます。火葬が間に合わないため、公園や空き地が臨時の火葬場になる地獄の光景が世界で報道されました。最近の報告では、インドで実際には数百万人が死亡した可能性があるとのことです。

この感染性、病原性を増したデルタ株が、パキスタンやバングラデシュなど周辺諸国に拡散し、さらにインドネシア、タイ、ベトナム、台湾といった今までは新型コロナ対策の優等生と言われた東南アジア諸国にまで拡大しています。

英国では、ワクチン接種が進み、いったんは新規感染者数が落ち着いたものの、その後、デルタ株の拡散が続き、1日当たり5万人以上の新規陽性者が出ています。

一方、南米ではブラジルでガンマ株という変異株が発生、ペルーで発生したラムダ株という変異株もアルゼンチンやチリなど周辺諸国に拡散しています。たとえ、デルタ株の大流行が終息しても、別の変異株が次々と世界的な大流行を起こす可能性があり、今後の変異株の動向には注意が必要です。

多彩な変異株流行の危険性も 第5波に対し事業継続計画を

東京オリンピックでは万全な感染対策(バブル方式)を誇示しましたが、選手や関係者から陽性者が続出しました。これからパラリンピックが開会しますが、多彩な変異株が国内にもち込まれる危険性は続きます。

オリンピックと同じタイミングで全国の新規陽性者数が急増しています。東京都、沖縄県は緊急事態宣言下にありましたが、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に宣言が広がりました。まん延防止等重点措置も新たに8県に適用され、13道府県に拡大しました。お盆休みの時期に入るため、地方の実家に帰省したり、観光地に行ったりすれば、首都圏から地方へウイルスが拡散する危険性が高まります。今はまだ大流行に至っていない地域であっても、今回の第5波では事前に十分な準備(事業継続計画)を整える必要があります。

治療薬についてはレムデシビル(抗ウイルス薬)、デキサメタゾン(ステロイド)、バリシチニブ(JAK阻害薬)が承認薬として使用されてきましたが、新たに抗体カクテル療法(カシリビマブ/イムデビマブ)が特例承認されました。これはコロナウイルス表面のスパイクタンパクの受容体結合部位に選択的に結合することにより、スパイクタンパクとヒトの細胞の表面にあるACE2受容体との結合を阻害し、ヒト細胞へのウイルスの侵入を防ぎます。

その他、トシリズマブ(IL-6阻害薬)、ファビピラビル(抗ウイルス薬)、イベルメクチン(抗寄生虫薬)などが臨床試験中です。複数の抗体や抗ウイルス薬(プロテアーゼ阻害薬など)も開発が進んでいます。ワクチンについてはDNAワクチン、組み換えタンパクワクチン、不活化ワクチンなど国産ワクチンの開発も進捗しています。鼻から噴霧して投与する粘膜ワクチンも国内外で研究開発が進行しています。

開発進む新治療薬・ワクチン コロナ制圧へ期待感が高まる

これらの新しい治療薬やワクチンが実用化されれば、臨床症状や社会条件に合わせた治療・予防法が選択可能になり、新型コロナウイルスの制圧も遠くない将来に実現が期待できます。

7月26日に徳洲会感染管理部会の執行部・ブロック長会議を開催し、徳洲会グループで発生した感染事例など情報を共有しました。複数の病院で院内保育園の園児が陽性となり、保育園が閉鎖。親御さんの職員が出勤できなくなり、病棟業務に支障が出ました。保育園での感染対策の見直しと、陽性者が出た場合の対応について検討が必要です。また、ワクチンを2回接種してもウイルスに罹患(りかん)する職員が多数発生しており、確固とした感染対策の徹底が不可欠です。職員の外食が起点となってクラスター(感染者集団)が発生した事例もあり、施設外での自覚ある行動が望まれます。

第5波を乗りきるには、徳洲会グループの全職員が一丸となって、ウイルスに立ち向かう勇気が必要です。患者さんに安心・安全な医療を提供できるよう、お互いに励まし合って、皆で頑張りましょう!

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