徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

尾野 亘(おのわたる)岸和田徳洲会病院(大阪府) 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

尾野 亘(おのわたる)

岸和田徳洲会病院(大阪府) 院長

2021年(令和3年)5月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1288

離島・へき地医療は徳洲会の原点も
本当の意味で実現できていない命題
彼の地での勤務経験から「共感」生まれる

目下、当院は重症コロナ病床として救命救急センターを使用し、15床で受け入れを行っています。昨年4月から168人が入院し、軽快(転院・退院)119人、亡くなられた方は33人で、現在も満床です。

大阪府では府が確保した重症コロナ病床をはるかに上回る重症患者さんが発生し、多くの病院が中等症病床で重症化した患者さんの転院先を確保できず診ています。結果、入院が必要な比較的軽い症状の中等症患者さんは自宅待機となり、急な病状悪化により死に至るケースが散見されます。救急車が搬送先を探すのに数日かかったケースもあります。このような酸素吸入が必要な患者さんの一時避難先として当院の救急外来(ER)陰圧個室3床を使用しましたが、搬送先が見つからず3日間、外来で待機、その間に重症化し気管挿管した症例もあります。

救命センターやICU(集中治療室)といった高度医療病床をコロナ病床に転換したことで、一般救急重症者の受け入れが困難となり、数十軒断られた末、遠く離れた当院まで搬送された方もいます。当院は泉州二次医療圏の救急を守るため、圏外からの救急要請を一時お断りする事態に陥りました。救える命を救えないのが大阪府の現況です。一日も早くワクチン接種が進むことを願います。

幼少の時分に弟を亡くした原体験が徳洲会の生い立ち

コロナ禍のなか、今年も多くの新入職員を迎えることができました。徳洲会の成り立ちや理念について、少し話をさせていただきます。徳洲会は〝生命だけは平等だ〟の理念を掲げ、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」の実現のため努力しています。

「わが故郷の人、皆、幸せにしないといけない。各島にひとつずつ病院をつくりたい。そのためにはお金も要る、医者も要る、看護師さんも要る。そのためには全国に病院をつくらなければいけない。全国に病院をつくって、そこから医者を送っていく」

これは幼い頃、弟を医師に診てもらえず亡くした徳洲会グループ創設者の徳田虎雄・名誉理事長の言葉です。この体験が原動力となり、徳洲会が生まれたのです。我々が実践すべき最重要課題は、離島・へき地医療に積極的に取り組み、さらに発展させることです。確かに当グループは離島・へき地に多数の病院をつくってきました。

しかし、今もなお離島・へき地では人材、とくに常勤の医師・医療スタッフの獲得は困難を極めています。

当院消化器内科では現在、29人の常勤医師を抱え、このうち、つねに10人以上が離島・へき地に出向いています。1回の出向は数日から数週で、定期的なローテーションシステムにより対応、現地の病院がそれぞれ必要とする働き方を行っています。2020年は離島・へき地など22病院で1万5000件の内視鏡検査・治療を実施しました。

離島・へき地には豊かな自然や独自の文化など、都会にはない魅力がたくさんあります。なかでも最大の魅力はコミュニティーがしっかりと残っていることです。観光で訪れただけでは感じられませんが、現地で一緒に仕事をし、患者さんと触れ合えば、すぐに実感できます。

人生をかける価値がある!そこに暮らしたことで開眼

かく言う私も徳洲会入職時は離島・へき地医療に特別な思いはありませんでした。14年前、鹿児島県の離島にある名瀬徳洲会病院での1年間の勤務経験が、一大転機となりました。「離島・へき地医療を何とかしなければ!」という思いは、そこに暮らしたことから生まれ、そこに住む人々への「共感」がもとになっています。自分の人生をかけるだけの価値があると心の底から思っています。

離島・へき地医療は基本的に自治体が主体となり営みます。しかし、そもそも自治体単独では人的資源に限界があります。過疎化が進むなか、あらゆる面で離島・へき地医療を充実・発展させるのは、徳洲会しかないと確信しています。皆さんも離島・へき地で働くチャンスを、ぜひ、つかんでください。チャンスは目の前にあり、彼の地では、きっと私と同じような「共感」を抱くことでしょう。

"離島・へき地医療"は徳洲会の原点ですが、創立48年たった現在も、本当の意味で実現できていない命題です。今こそ原点回帰し、皆で頑張りましょう。

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