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直言

Chokugen

金 憲徳(きん けんとく)榛原総合病院(静岡県) 副院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

金 憲徳(きん けんとく)

榛原総合病院(静岡県) 副院長

2021年(令和3年)5月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1287

感染対策で誰もがわかる「見える化」
共通ルールに基づく共通の標識つくる
モチベーション保ちメンタル下げずに闘い抜く

昨年2月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策チームを立ち上げました。3月初旬開催のチーム会議で、診察と検査を並行して行う「発熱外来」ではなく、まず検査ありきの「診察前検査体制」構築を決めました。当院は気候穏やかで、のんびり気質の田舎町にあり、「果たして、ここにコロナ検査体制は必要なのか」という疑問がチーム内にもありました。

家族・自分・地域社会を守る ドライブスルーでの検査採用

しかし、①愛する家族を守る、②かわいい自分を守る、③お世話になっている地域社会を守るをキャッチコピーに、感染者未発生だからこそ水際対策が最重要課題で、PCR検査ツールは必須と意見が一致。近隣に解析を受けていただける民間検査会社があり県から帰国者接触者外来開設の打診もあったことから、3月18日、ドライブスルーによるPCR検査主体の帰国者接触者外来を正式に開設しました。

当時、欧米での感染者急増による病床逼迫(ひっぱく)映像と並んで、日本の「クラスター対策」という言葉がメディアに取り上げられ始めた頃でした。徹底的に感染者を見つけるため検査を行い、感染連鎖を封じ込める欧米の対策に対し、検査数を抑制しクラスター(感染者集団)の早期発見に注力し流行拡大を抑えていくというのが日本の対策の根幹で、今もその流れは変わっていません。COVID-19では無症状者や軽症者が非常に多くいるため、ウイルスを完全に排除することは困難であり、しかも勝手に消えていくウイルスも多いというのが理論背景にあります。多少の漏れはあっても構わないからクラスターを早期に見つけ、次のクラスターを生み出すことを未然に防止することがきわめて効果的という考え方です。「細く長く」続けていく対策としては非常に優れていると思いますが、当時、多くのメディアが勘違いしていたのは「検査数抑制こそスマートな感染対策」と捉えていたことです。クラスターを早期に発見するためには過去2週間の行動履歴を聞き取り、共通の感染源を探し出す「後ろ向きの接触者調査」が必要で、その担い手は保健所職員であり人海戦術頼みでした。できるだけ早く接触者から感染者を発見するための検査体制があってこそ、日本のクラスター対策遂行が可能と考えたのです。

検査のみではわからないCOVID-19の本当の〝質(たち)の悪さ〟を実感したのは、院内クラスターを経験した時です。12月2日、回復期リハビリ病棟入院中の高齢女性が、退院し施設入所するため、退院時PCR検査を行ったところ、陽性が判明。数カ月前から入院されていた患者さん(入院時検査は陰性)で、1カ月前から全病棟面会制限も実施しており検査時まで明らかな症状もありませんでした。翌日実施した同棟の2人の患者さんも陽性で、すでに病棟内で感染連鎖が起きていました。職員は全員陰性でしたので、どこからウイルスが侵入したのか、いまだに不明です。最終的に34人の感染者が発生しましたが、病院と高齢者施設がいかにクラスター化しやすいか実感しました。

職員全員を23グループに分け 毎日1人選びPCR検査行う

この経験をもとに、入院患者さんの検査を2回(入院時と5日後)に増やし、院内感染対策の再確認と並行して全職員対象のモニタリング検査も開始。全職員を職場や職種、就業場所などから23のグループに分け、グループから毎日1人を選び検査する方法です。1人の陽性者(点)を見つけた時点で、すでに複数の感染者(面)が潜伏しており、顕在化した時にクラスターと化すため、職場内で水面下の感染連鎖が起きていないか(面の発見)を目的とした検査です。

院内感染対策では患者さんにもわかる「見える化」を企図しています。道路標識と同じで、たとえば飲食禁止の場、一旦立ち止まって個人防護具(PPE)を確認する場、3密になりやすい場、グリーンゾーン(清潔区域)手前の場などに、全員がわかる標識図の掲示が効果的だと考えます。病院間で応援移動の多い徳洲会ですから、共通ルールに基づいた共通の標識づくりを一考しても良いのではないでしょうか。闘いはまだまだ続きます。とくに今後、ワクチン接種対象外の16歳未満の子どもたちの間での感染拡大が想定され小児科が戦場になると考えます。モチベーションを色褪(あ)せることなくもち続けメンタルを下げずに闘い抜くことが大切です。皆さん、頑張りましょう。

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