徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

山之上 弘樹(やまのうえひろき)静岡徳洲会病院 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

山之上 弘樹(やまのうえひろき)

静岡徳洲会病院 院長

2021年(令和3年)5月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1285

人類は感染症による幾多の危機を克服
新型コロナも必ずコントロールできる
ワクチンは有効手段のひとつで多くの接種望む

当院は昨年12月10日から1月30日まで、職員、患者さん合わせ90人に上る新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)を経験しました。この当時、徳洲会グループ内最大のクラスターであり、多くの皆様に、ご心配とご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。また、徳洲会グループ内および行政機関から多大なご指導をいただいたことに感謝申し上げます。

クラスター判明時点で当該病棟から13人の感染者を発見、すでに院内に感染が拡大していることが予想されたため、新規入院、通常外来診療、救急外来、検診業務を停止し、全職員、全入院患者さんにPCR検査を開始しました。12月10日は田辺信宏・静岡市長が定例会見で当院でのクラスター発生を発表、上空には報道機関のヘリコプターが飛来し、当院の全景が繰り返し県内ニュースで報道されるなか、同日夕方に市役所で、私は佐藤篤事務長とともに多くのテレビカメラが並ぶ前で記者会見を行いました。以降、地元紙の静岡新聞はクラスター関連情報として当院の感染者数を連日掲載し、県内テレビ局は毎日のように当院の全景とともにクラスターについて報道、それにより職員の心はすり減らし続けられました。

院内感染の状況を随時発表 事実隠さず報告する重要性

職員のパートナーが出勤を拒まれたり、お子さんが保育園や幼稚園に登園しないように言われたり、また、お子さんが所属するクラブチームの遠征が中止になったり、タクシーに乗車拒否されたりするなど、さまざまな形で職員が痛め付けられました。さらに、医療機関から受診の予約を延長するよう強要される事例もありました。理解者であるはずの医療機関からの差別的な対応により、さらに深く傷付けられることになりました。2月1日に終息宣言を出す際、前もって関連官庁に相談していましたが、公式に終息宣言を出す前日に、県内報道機関から終息の見込みと、先に報道されるおまけまで付きました。公表もしていないのに、県内ニュースで「静岡徳洲会病院が明日、終息宣言を出す見込み」と聞いた時の驚きといったら……。

当院はホームページ上で情報を公開し続けました。どこの病棟で患者さん、職員の感染が何人発生したか、累計感染者数は病棟ごとで何人かをすべて公表し、院内の現状をわかりやすく外部に発信しました。更新のタイミングは、静岡市の感染者数発表と同時間帯とし、行政側の発表と齟齬を来さないようにしていきました。院内で起きていることを、そのまま公表することに恐怖心もあったのですが、結果的には「何が起こっているのか、よくわかっていい」という声を数多くいただきました。

苦しくても、事実を隠さず報告する重要性を、あらためて教えていただきました。また、個人や医療・学校関係、企業・各種団体の皆様方からのご支援や温かい言葉は、さまざまな誹謗中傷を受け続け、心が折れそうになった当院の多くの職員の心の支えになりました。本当にありがとうございました。

人の気持ち巧妙に利用し感染 クラスター終息後も闘い続く

新型コロナウイルスは飛沫・接触感染で、発症前に感染性をもち、人間の根本的な喜びである触れ合いたい、言葉を交わし、わかり合いたいという気持ちを巧妙に利用し、感染を拡大させていきます。そして、気が付いた時には、あちこちに火の手が上がっているのです。クラスター経験前は、その恐ろしさが実感できていませんでした。

院内クラスターは終息しましたが、地域での新型コロナウイルス感染症の流行を押さえ込めたわけではありません。院内ではマスクをつねに着用、休憩室でも距離を取り、食事中も会話を控え個別に摂るよう徹底。新型コロナウイルスと闘うなか、鬱々(うつうつ)とする日々はしばらく終わりそうもありません。

ただ、確実にわかっていることがあります。人類はこれまで感染症による幾多の危機を乗り越えてきました。AIDS(エイズ)(後天性免疫不全症候群)は発見当初、不治の病として非常に恐れられましたが、現在は治療薬の進歩により、確実な内服さえしていればコントロール可能な疾患となりました。新型コロナウイルス感染症も必ずコントロールできる方法が発見されます。ワクチンはその有効な手段のひとつで、多くの方々に接種していただくことを望みます。

皆で頑張りましょう。

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