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直言

Chokugen

棟方 隆(むなかたたかし)帯広徳洲会病院(北海道) 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

棟方 隆(むなかたたかし)

帯広徳洲会病院(北海道) 院長

2021年(令和3年)4月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1282

職員一丸となり決して気を緩めず
感染防止対策に継続して取り組む
ワクチンによりコロナがなくなる訳ではない

新型コロナ感染症が暗雲のように全世界を覆っています。2021年4月9日(午後3時20分)現在、世界の感染者数は1億3396万3482人、死亡者数は290万2328人(米ジョンズ・ホプキンス大学発表)。医師になって42年、まさか自分の現役時代に、このような感染症が全世界に蔓延し、社会生活が一変する事態が起こるとは想像もしていませんでした。

「頑張って!」と児童・生徒 地域からの支援が心の支えに

20年12月16日、施設往診から戻ると「院長、先ほど、病棟勤務の看護師が発熱外来を受診し新型コロナ抗原検査で陽性が出ました」との報告を受けました。これが当院のクラスター(感染者集団)発生の始まりでした。直ちに入退院、外来診療(投薬は可)、健診、時間外・救急受け付け及び通所リハビリテーションをストップし、保健所の指示を仰ぎました。

直後の検査では22人(患者さん14人、職員8人)の陽性が確認されクラスター認定となりました。地区医師会での協議で、当院は20年12月5日より、3階の急性期病棟でコロナ疑似症例と陽性患者さんを受け入れ、4階の地域包括ケア病床と障害者病棟で他の患者さんを受け入れる体制を取っていましたが、この4階病棟でのクラスター発生でした。管内のクラスター発生施設からも入院患者さんを受け入れており、職員も複数同時陽性となったことから感染経路は不明です。

保健所、一般社団法人徳洲会、徳洲会感染管理部会、徳洲会ブロック内病院の感染管理認定看護師と臨床検査技師及び国立感染症研究所医師らにもWEBで参加いただき、毎日のように対策本部会議を開き、ゾーニング(区分け)を含めた詳細な感染拡大防止策や患者さんのベッド移動などについて協議を継続しました。クラスター発生時に新聞社やテレビ局から取材の申し込みがありましたが、発生時の陽性者は氷山の一角であり、その後、急増することが予想されたため全て断り、発生状況は当院ホームページに、陽性者数、解除基準を満たした患者数及び退院患者数を公表、随時更新する方針としました。最終的に53人の陽性者(患者さん32人、職員21人)が出ましたが、21年1月22日を最後に新規陽性者はなく、2月6日に終息宣言を発しました。当日は地元の新聞社の取材に応じ記事を出してもらうことで、クラスター終息の周知に役立ちました。

クラスター発生後、これまでに経験したことがない不安な毎日でしたが、「頑張って!」という児童・生徒からの寄せ書きなど、地域住民の方々からの温かいご支援が心の支えとなりました。一方で、心ない誹謗中傷を受けたり、子どもを保育園で預かってもらえなかったりした職員もいました。

厳しい状況下でも屈せず協力し合った職員が誇り

しかし、この厳しい状況のなかでも決して屈することなく、職種の垣根を越え、協力体制を取ってくれた職員たちを誇りに思います。病院として約7週にわたり、地域住民の方々には大変ご心配をおかけし、また通常外来、時間外及び救急患者さんなどの受け入れができず、多大なご迷惑をおかけしたことを、この場を借りてお詫びします。コロナ対策で重要なことは①症状観察(とくに発熱で、呼吸器症状は問わない)、②積極的なPCR検査(短時間で結果が出る院内検査)、③陽性者の早期発見と早期隔離、④誰も濃厚接触者にならない行動の徹底(とくにマスクをはずす食事時、ロッカー室など)、⑤個人防護具(PPE)着脱の訓練と相互チェック(正しい着脱法の連続写真の掲示と鏡の設置)でしょう。

今回のクラスターの経験をふまえて、入院時の厳重なスクリーニング(選別)チェックを整備し、たとえ陰性でも入院後数日間は疑似症例として経過観察を行い、数日後に再陰性を確認し一般病棟に移すことを方針に据えました。発熱外来も1階救急外来を改装し他の患者さんとの動線を厳格に分け、会計や投薬も同所でできるようにしました。今後、ワクチンや新たな治療法に期待する部分は大きいですが、それらによって新型コロナウイルスが消えてなくなる訳ではなく、この先何年にもわたって、このウイルスと共存していくことになると思います。今後も職員一丸となり、決して気を緩めることなく感染防止対策に継続して取り組む必要があります。皆で頑張りましょう。

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