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直言

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高橋 智(たかはしさとる)徳洲会薬剤部会部会長 一般社団法人徳洲会薬剤部部長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

高橋 智(たかはしさとる)

徳洲会薬剤部会部会長 一般社団法人徳洲会薬剤部部長

2021年(令和3年)3月8日 月曜日 徳洲新聞 NO.1277

感染症発症を予防し死亡者や重症者発生を
できる限り減らし感染症の蔓延防止を図る
ワクチン接種はリスクベネフィットの視点が重要

新型コロナウイルスは瞬く間に全世界に広がり、私たちの生活や社会活動を一変させました。患者さんに向き合う最前線の医療従事者は防御服、フェイスシールド、マスク、手袋など付けて宇宙服のような姿で対応し、その過酷さは想像を絶するものがあります。それにもかかわらず、看護師さんのお子さんが保育所への通所を断られたり、差別されたりする報道を目にするたびに、とても悲しい気持ちになります。また、infodemic(根拠のない不確かな情報)が、まるでウイルスが感染拡大するように伝播した時もありました。見えない敵だからこそ翻弄されるわけですが、闘いに勝つためには、正確なデータに基づいた根拠のある情報が重要です。

国内接種2万例超うち3例 重篤な副反応も1日で回復

3月4日までに、世界で1億1500万人以上が感染し、255万人もの死者を出しています。日本では43万人が感染、8052人が亡くなっています。ワクチン開発は通常なら数年かかりますが、新型コロナワクチンは1年足らずの非常に短い期間で開発されました。

2月14日に米ファイザー製(商品名:コミナティ筋注)が薬事承認を受け、17日には国立病院機構・東京医療センターで医療従事者への先行接種が開始されました。このワクチンは世界初のmRNAワクチンで、開発期間が短いということもあり、安全性、有効性などに不安の声も聞かれます。しかし、これまでの報告では、有効性に関し発症予防効果は95%と非常に高い数値です。今後、国内で接種可能になるワクチンを見ても、米モデルナ製が94・1%、英アストラゼネカ/オックスフォード大学製が70%と、インフルエンザワクチンの30~60%という有効率と比べ、歴然としています。

また、安全性に関しても、国内で17日~25日までの間に先行接種した2万1896例のうち、重篤な副反応の報告は3例のみでした。内訳は皮膚および口腔(こうくう)内のアレルギー、冷感・悪寒戦慄(おかんせんりつ)、脱力・発熱でしたが、全例1日で回復しています。添付文書上の副反応の発現率が高く不安に思うかもしれませんが、これらの副反応はワクチンの一般的な副作用です。米CDC(疾病予防管理センター)からも、米国で開始から2カ月を経たコロナワクチン接種について、昨年12月14日から1月13日までの1カ月のデータをまとめたレポートが発表されていますが、安全上の重大な問題は検出されず、局所的および全身的な副反応は一般的なものでした。アナフィラキシー(アレルギー症状が複数の臓器に出現した状態)の報告もありましたが、異常副反応や予期しない例はありませんでした。アナフィラキシーは100万接種当たり4・5件の発生頻度で、一般的なワクチンと比べても、際立って高いとは言えないと結論付けています。

これまでのコロナワクチン情報を分析すると、安全性、有効性が非常に高いことがわかりますが、ワクチン接種は任意によるもので、それによる差別があっては絶対にいけません。ワクチン接種ではリスクベネフィット(有用性と副作用のバランス)を考える必要があります。

ワクチンのない世界では、コロナ感染が収束せず、周期的に感染拡大の波が来て、いつ終息するかわかりません。一度コロナに感染すると、一定の割合で重症化し死亡者が出ます。感染が拡大すると医療が逼迫(ひっぱく)し、通常では亡くならなくてもよい患者さんが亡くなることが起こります。たとえ回復しても日常生活に支障が出るほどの後遺症が続くという報告も多くあります。ワクチンなしでは先の見えない不安な状況が、ずっと続くことになります。

個人のみならず社会全体を守るための集団免疫の獲得

ワクチン接種の目的は「新型コロナ感染症の発症を予防し、死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、結果として感染症の蔓延(まんえん)防止を図る」――最終的に多くの国民が接種し、「集団免疫」を獲得することにあります。これにより、個人のみならず社会全体が新型コロナの感染から守られるのです。今、全人類はワクチンをもってコロナに立ち向かおうとしています。徳洲会にもワクチンの搬入が始まりました。ワクチンが行きわたるまでには、まだまだ時間がかかりそうですが、私たちは医療従事者として、正確な情報をつねにアップデートしながら、ワクチンを安全に、公平に接種できるよう、皆で頑張りましょう。

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