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直言

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下山 ライ(しもやまらい)湘南鎌倉総合病院(神奈川県)オンコロジーセンター長兼外科部長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

下山 ライ(しもやまらい)

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)オンコロジーセンター長兼外科部長

2021年(令和3年)2月8日 月曜日 徳洲新聞 NO.1273

基本に立ち返り個人防護具を正しく使用
手指衛生も徹底し3密も避け感染を防ぐ
「コロナに、私だけ大丈夫はありません」

当院は県に委託され中等症のコロナ患者さんを診療する臨時医療施設を運営しています。主に集中治療部、救急総合診療科、総合内科、総合診療科が診療にあたっていますが、私たち外科医も携わっています。そんななか、十分な個人防護具を使用していたにもかかわらず、思いもよらず私が患者の立場になったこと、また〝コロナ慣れ〟と言われているような状況に、もう一度危機感をもっていただきたく、筆を執らせていただきます。

同僚の言葉に深刻さを実感 一時は外科医引退も考える

異変を感じたのは入院2日前、昨年11月中旬でした。手術中にこれまでにない倦怠(けんたい)感を感じ、何とかその日の手術を終え帰宅。翌日には体調が回復、少し疲れていただけかと思い1日外来を行いましたが、夜、帰宅したところ38度台の発熱がありました。翌朝になっても解熱せず発熱外来を受診、PCR検査で陽性が判明。入院時のCT(コンピュータ断層撮影)では、ごくわずかな肺炎像がありましたが、発熱以外の症状はなく、隔離期間の10日が過ぎたら、すぐに復帰できるだろうと考えていました。入院後も発熱以外の症状はあまりなく、パソコンを病室に持ち込み業務を行いました。その後、発熱にはデキサメサゾン、肺炎にはファビピラビルが開始されました。3、4日経っても解熱傾向はなく、日中はデキサメサゾンの影響で解熱していたのですが、夜になると発熱と頭痛が続く状態でした。入院1週間目のCTでは肺炎像が悪化、デキサメサゾン増量(20㎎)およびファビピラビル継続の方針となりました。ただ、この時点でも自覚症状は発熱のみで、デキサメサゾン増量の翌日からは発熱も37度台にとどまり、回復しているように感じました。

しかし、その後、酸素飽和度の低下が見られ酸素とレムデシビルの投与が開始されました。トイレへの歩行だけで88%ぐらいまで低下し、息切れがひどくなりました。安静時には経鼻カニューレ2Lで93~94%。ただ深呼吸ができず、明らかに吸気量の減少を自覚しました。この時、今後、人工呼吸器管理が必要になる場合、どこでどこまで治療を受けたいかと同僚医師に言われ、状況の深刻さを実感しました。集中治療部の先生方は人工呼吸器やECMO(エクモ)(体外式膜型人工肺)が必要になった時も、当院で継続して全力で診療すると言ってくださり、循環器科の先生方は、いつでもECMOを入れられるように準備していたと後からうかがいました。幸い、デキサメサゾンが奏功し発熱がなくなり、呼吸状態も徐々に改善。ようやく3週間の入院生活を終え、何とか退院しました。重症度としては中等症のⅡでしたが、自分自身のCTよりも軽症でありながら、酸素化悪化のため高度医療機関に搬送される患者さんも多く、ここまで復帰できたのは運が良かったとしか言いようがありません。

自宅に帰れましたが、歩行すると数分で頻呼吸となり酸素飽和度は92%ぐらいまで下がる日が続きました。階段の昇降もできず、ちょっとした荷物も運べず肺障害の重篤さを実感しました。2週間の自宅療養後、昨年末から外来だけは再開しましたが、患者さんと会話を続けることもままならず、到底手術ができる体力などありません。このまま外科医を辞めなければいけないかもと本気で考えました。

退院から1カ月が過ぎ、ようやく診療にも復帰し、手術を少しずつ再開しました。労作時の酸素飽和度の低下もごくわずかになりましたが、頻脈・頻呼吸は相変わらず続いています。

誰しもが同じリスク背負う それでも地域医療守らねば

「コロナに、私だけは大丈夫はありません」。たいした合併症もなく健康でしたが、これほど日常生活に制約が出るとは思いもよりませんでした。

しかし、それでも私たちは地域医療を守っていかなければならないのです。いつ誰が感染し重症化するかわかりません。私が罹患(りかん)した同時期に臨時医療施設の2人の職員が感染しましたが、それ以上の拡大はなく、また、通常の診療の際にもマスク、ゴーグルをつねに着用していたため、職員や診療した患者さんに濃厚接触に相当する人はいませんでした。診療科スタッフ、患者さんも後の検査で陽性となった人はいません。私たちにできることは基本に立ち返り、個人防護具を正しく使用し、手指衛生を行い、密を避け感染を防ぐ行動を取るのみです。

皆で頑張りましょう。

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