直言
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直言 ~
安富祖 久明(あふそひさあき)
一般社団法人徳洲会 理事長
2021年(令和3年)2月1日 月曜日 徳洲新聞 NO.1272
世界的大流行の新型コロナウイルス感染症は、とどまるところを知らず拡大を続けています。国内でも第3波が押し寄せ、今や全国の1日当たりの新規感染者数は1月28日現在で、3969人、重症者数は1032人、累計死亡者数は5361人と増加、11都府県には緊急事態宣言が出されました。
東京都、大阪府、神奈川県をはじめとした大都市部では、市中感染が起こり、医療が逼迫(ひっぱく)、経済も落ち込み、社会全体も混乱を来しています。人々も不安と恐怖と分断に悩んでいるように思えます。一部の報道では命(医療)を守るか、経済を優先するかという二極化論争を報じていますが、こうした論争は混乱を招くばかりです。今こそ最善の政策と将来の危機対策をもとに、社会全体がひとつの方向に向かっていくことが重要です。
一般社団法人徳洲会(社徳)は厚生労働省などの通達を参考にして「新型コロナウイルス感染症への対応について」という通知を発し続けています。全国で院内感染が多発しており、徳洲会でも複数の施設でクラスター(感染者集団)が発生しています。新型コロナウイルスは、つねに身近に存在していることを前提に、各徳洲会施設は社徳からの通知を全職員に周知し、最大限の緊張感と危機意識をもって、それを実行してください。
明るい兆しも見え始めました。1年半という驚くべき短期間でワクチンが開発され、接種が各国で始まっています。
ワクチンの効果はどの程度か、変異株にも効くのか、重篤な副反応は出ないか――など不安な点も多々ありますが、ワクチンなくしては明るい未来が描けないのも現実。過信しすぎず、その効果に期待したいと考えます。わが国でも医療従事者から先行して2月末頃にワクチン接種が始まる見とおしです。社徳も厚労省、自治体、関係医療機関と連携し、スムーズなワクチン接種に協力していきます。
新型コロナウイルスとの闘いは長期戦です。コロナ対策を徹底しながらも、グループ経営を健全に保ち、さらに発展させていく考えです。
今年取り組むべき9つの項目を策定しました。①新型コロナウイルスへの対応、②病院の建て替えなどによる療養環境改善および診療機能向上、③介護事業の拡大、④修復腎移植など先進医療の推進、⑤法人組織の見直し、⑥AI(人工知能)やICT(情報通信技術)の積極的な導入、⑦事業継承などM&Aの推進、⑧ブロック組織の強化、⑨海外事業の検討です。
⑤の法人組織の見直しに関してですが、徳洲会はグループ形成の過程で、さまざまな形態の法人が設立され、多い時には21法人が存在していました。徳洲会グループとひと口に言うものの、法人が違えば意思決定機関が異なり、人的・物的資源や資金移動もままなりません。
これまで粛々と進めてきた法人合併により、現在、病院を傘下にもつのは医療法人徳洲会(医徳)、医療法人沖縄徳洲会(沖徳)、埼玉医療生活協同組合の3法人にまで集約できました。昨年9月の理事会で沖徳の医徳への合併を決議し、今年10月いよいよ統合が実現します。
コロナ禍により、日々、不安を抱えながらも職務に精励する職員の皆さんが、少しでも安心、安全な医療・介護・福祉サービスを提供できるように、今後とも全力でバックアップしていきます。必要な物資を滞りなく現場に届け、感染対策はもちろんクラスター対応のノウハウも提供します。
採用増などによる人的資源の投入、各種補助金申請の指導などにも積極的に取り組みます。症状がある人や濃厚接触者に対し、先手を打って検査を行い、感染者を発見、非感染者と区別していくことが、感染拡大を抑制し、患者さんや職員を守ることにつながります。そのためには自治体検査に頼るばかりでなく、各施設の検査体制の強化にも努めます。
長い新型コロナウイルス感染症との闘いに、疲労困憊(こんぱい)しながらも医療人としての矜持(きょうじ)をもち、日々増加する感染患者さんを優しく迎えている職員の皆さんが、これからも頑張ろうと思えるよう、手厚い支援を継続していきます。コロナが明ける日は必ず来ます。その日が一日でも早く近づくように、皆で頑張りましょう。