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直言

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高杉 香志也(たかすぎかしや)与論徳洲会病院(鹿児島) 院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

高杉 香志也(たかすぎかしや)

与論徳洲会病院(鹿児島) 院長

2020年(令和2年)12月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1265

島の方々の健康と生活と笑顔守る病院へ
教訓を生かし新型コロナ対策に万全期す
入れない・広げないのみならず潰されないも重要

7月21日より当院で発生した院内クラスター(感染者集団)および与論島内のアウトブレイク(集団発生)で、当院が反省し学んだことをどのように今後に生かすか、何とか「直言」をまとめたのは11月2日のことでした。その数時間後、軽度の体調不良を訴える職員に、念のためPCR検査を行ったところ陽性の報告を受けました。本島での第2波到来の始まりでした。

全職員の日常業務での標準予防策の徹底が要

本島での第1波は7月21日に当院職員が初の感染確認となり、8月5日の最終発生まで計55人の感染者を数え、「与論クラスター」と命名されました。本島の人口は約5200人ですので、人口10万人対比1057人という大規模な感染でした。院内発生としては入院患者さん6人、そのご家族4人、職員とそのご家族5人の合計15人がクラスターとなりました。患者さん、ご家族、関係者の方々に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしました。

しかし、そこから当院が反省し学んだこともあります。本島の第1波では55人中35人が発症され、そのうち8人(約23%)の患者さんは熱発以外の軽微な症状(咽頭(いんとう)痛、咳嗽(がいそう)など)で発症されています。軽微な症状でも、感染した職員が患者さんのケアを行うことにより、6人もの入院患者さんに感染させています。無症状病原体保有者(55人中20人)が36%と多いことも合わせると、職員全員が日常業務での標準予防策を徹底することがいかに重要であるかを痛感しました。職員の日頃の体調管理の重要性、体調不良を自覚した際に無理せず仕事を休める環境づくりの大切さも考えさせられました。

これらの教訓を生かし、二度と院内クラスターを発生させないよう皆で取り組みました。第2波では当院職員より4人を陽性者として出しましたが、発生から4週間で計3回の院内PCR検査を行ったところ、入院患者さんへの感染は認めませんでした。しかし、当院職員の院内濃厚接触からの自宅待機は2人出ました。いずれも食後、マスクをはずしての会話が原因であり、休憩中でも標準予防を継続する重要性などを再確認しました。

感染患者さんの初回確認から最終発生までは第1波で17日間、第2波で19日間。感染経路が不明の市中感染は認めず、比較的短い期間での収束となりました。その要因として①一般社団法人徳洲会の迅速な対応により、グループ病院から医師、看護師などの応援や、物資の補充をいただき病院機能が守られた、②島の方々が日常生活制限に真剣に取り組んだ、③保健所の方々が濃厚接触者を早期に洗い出し、迅速にPCR検査を行えた、④鹿児島県が本島の医療崩壊を防ぐため、無症状病原体保有者を含めた新型コロナに感染された方を積極的に島外へ搬送してくださった、⑤鹿児島市内や奄美大島の病院が患者さんを受け入れてくださった、⑥日々の業務と生活に不安を抱えつつも当院スタッフが必死に頑張ってくれた――ことなどが挙げられます。そのどれかが欠けても、このような結果にはならなかったと思います。皆様にあらためて謝意を表します。本島では感染された方への誹謗中傷や差別的な扱いはなく、回復して帰島した人たちを「お帰り」、「大丈夫だったか」と温かく迎えました。

介護サービスが危機的局面 福祉分野の拡充が焦眉の急

一方、8〜10月の高齢者の骨折数は昨年の10人と比し本年はすでに18人と増加しています。コロナ禍による高齢者の外出自粛や通所リハビリテーション中止などにともなうADL(日常生活動作)低下が一因となっている可能性があります。さらに追い打ちをかけるように、島で唯一の通所リハビリテーションが感染防御、人手不足により休止となりました。高齢化率34・8%の本島で、介護サービスが大きな危機を迎えています。高齢者の健康と笑顔を守るには、福祉分野の拡充が焦眉の急です。当院、徳洲会ができることは何か、率先して検討を進める必要があると考えます。

新型コロナへの対策は〝入れない〟、〝広げない〟の感染対策のみでなく、〝潰されない〟があります。社会や経済、病院だけでなく、皆の生活、心身の健康、笑顔が潰されないことも重要なのです。世界の新型コロナ感染症はまだまだ収まる気配がありません。人の出入りがある以上、本島に第3波はいつか来ます。当院は島の方々の健康と生活と笑顔を守る病院となれるよう、今回の教訓を生かしていきます。

皆で頑張りましょう。

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