徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

鈴木 隆夫(すずきたかお)一般社団法人徳洲会理事長

直言 生命いのちだけは平等だ~

鈴木 隆夫(すずきたかお)

一般社団法人徳洲会理事長

2020年(令和2年)3月30日 月曜日 徳洲新聞 NO.1229

グループを挙げて感染対策を徹底
最悪の事態を想定し最大の備えを
新型コロナウイルスの猛威へ一致団結

中国・武漢市に端を発した新型コロナウイルスは世界中で感染拡大の猛威を奮っています。3月27日現在、感染者数は世界で53万人超、死者は2万4000人を超えました。南半球や東南アジア、中東に加え、アフリカでも流行が始まり、季節的な要因がないように思われ、終焉(しゅうえん)の兆しが見えません。

エドガー・アラン・ポーの短編に『赤死病(せきしびょう)の仮面』という作品があります。赤死病という、ひとたび罹かかると30分も経たないうちに体中から出血し、死に至る恐ろしい疫病が国に蔓延していました。国王は臣下や友人1000人と城塞(じょうさい)の奥に閉じこもり、厳重に通路を封じました。疫病から目を背け、饗宴(きょうえん)にふけっていたある日、仮面舞踏会に、まるで赤死病を装ったかのような仮面の男が紛れていました。その男を捕まえ、仮面を剝(はい)だのですが、中身は空虚。それは人を装った疫病そのものでした。城塞の奥にも病は入り込み、最後のひとりまで命絶えました。

どんなに厳重に封鎖しても紛れ込んでくる見えない感染症の恐怖と不気味さが表現されています。14世紀に流行したペスト(黒死病)がモチーフで、当時、世界人口4億5000万人中、推計1億人が亡くなったと言われ、英国やイタリアでは人口の8割が死亡し、全滅状態になった町や村もありました。

「感染爆発の重大局面」宣言 諸外国では命のトリアージも

東京都は3月25日、感染爆発の重大局面にあると宣言しました。中国やイタリア、米国、ドイツなど42カ国・地域で26 億人以上、世界人口78億人の3分の1が封鎖下に置かれています。

医療崩壊が起こった諸外国の現場では、高齢者から人工呼吸器をはずし、若い人に付け替えるという「命のトリアージ(重症度・緊急度選別)」が現実に行われています。現場の医療者は、どれだけの心の傷を負うのでしょうか。“生命だけは平等だ”の徳洲会の理念そのものに、ナイフのように突き刺さる現実が起こらないよう、あらゆる手立てを講じていかなくてはなりません。

新型コロナウイルスが猛威を奮うなか、徳洲会は感染管理部会を中心に組織を挙げて対策を講じています。感染疑いの患者さんへの受け入れ窓口の案内、発熱外来の設置、出入り業者を含む病院に入るすべての方の健康状態の報告などを徹底しています。職員の曝露(ばくろ)に対するPCR検査や抗体検査など、必要な検査は費用を惜しまずに取り組んでいます。

また、場面別での適切な防護具の装備について、ガイドラインを策定し、濃厚接触者となった職員の扱いについても方針を示しました。飛沫(ひまつ)感染のリスクが高い歯科治療では、緊急性の低い処置は延期、治療にあたっては感染リスクに備えた適切な対策を周知しています。さらには入職の多い時節柄、入職者やそのご家族の渡航歴調査、報告義務も厳格化しています。こうした体験を病院間で共有することが求められます。

総力結集し医療者守ることが患者さん守ることにつながる

古来、このような予測不能な想像を絶する不確実なリスクには、パラノイア(極度の心配性)だけが生き残ってきました。私も心配性です。14世紀のペストの大流行から今、世界が向き合う最大の危機的局面にあって、最悪を予想し、極端とも見える手立てを講じ備えるのです。そして体験を共有し、問題を解決していくしかありません。

マスクや防護具など医療物資をグループの総力を挙げて確保し、必要とする現場に配備して医療者を守ることが、医療を必要とする患者さんを守ることにつながります。

私も皆さんも、この現実に恐怖しています。「恐怖」は心のなかにいつも潜んでいるのです。しかし、いかに自分たちだけが安全であろうとあがいても、舞踏会に紛れ込んだ赤死病の仮面のように防ぎようがないのです。

ならば私たちグループの病院や診療所、介護施設などが、最悪の事態に備え、お互いに協力する筋書きを用意するしかありません。軽・中等症程度の感染症患者さんを受け入れる病院、感染者で埋まった病床からあふれた他の疾病患者さんを受け入れる病院など、その役割に応じて協力し合うことが必要です。

感染爆発の重大な局面――そこにあって今できる最大の備えを国や地方自治体、医師会、地域社会とともに、「医療は患者さんのため」という気持ちをひとつに、皆で頑張りましょう。

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