徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

中川 秀光(なかがわひでみつ)野崎徳洲会病院院長 (大阪府))

直言 生命いのちだけは平等だ~

中川 秀光(なかがわひでみつ)

野崎徳洲会病院院長 (大阪府)

2019年(令和元年)11月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1209

徳洲会ピアレビューが目指す最大の眼目
患者さんのための医療安全と質の向上に
電子カルテリモート接続で緊急時も迅速対処

徳洲会グループ独自のピアレビユー(peer review)が2017年4月にスタートしてから2年半が経過しました。これは手術手技に対し評価項目を設け、グループのベンチマーク(指標)と比較し、各病院の課題を顕在化させ、医療安全と医療の質の向上を目指す日本で初めての試みです。医療安全と質に関して、米国では認定非営利団体である医療施設認定合同機構(JC)が、米国内で2万以上の医療施設と医療プログラムを認定し、多くの州は、医療施設がこの認定を得ることを、公的医療保険制度の高齢者および障害者向けメディケア、低所得者向けメディケイドの条件としています。合同機構国際認定(JCI)として、米国外の医療機関も認定しており、現在、徳洲会病院8施設も認定を受けています。

17年の開始時には強い反発も内部告発者を守ることに留意

このほか米国では、医療の質の改善に関する法律(1986年、HCQIA)や、メディケア・メディケイドサービスセンター(メディケア・メディケイドの支払いを決定する政府機関)、多くの民間保険会社によって、質を測定し報告することが要求されます。最近では特定のネバーイベント(決して起こしてはならない医療事故)に対する支払いを拒絶することも認められる状況にあります。このように米国では支払い側の強い要求の下、ピアレビューが発展しました。しかし、日本ではこうした制度的な医療の質の要求がなかったことから、医師もその自覚に乏しかったと言えます。

そこで、徳洲会ピアレビューは実行可能を優先し、医師が医師を評価する米国型とは違ったタイプにつくり上げ、守秘義務と免責保護、または秘匿特権が保護されることに留意。しかし、前述のとおり、日本ではピアレビューの風土が醸成されておらず、開始時の強い反発は当然と言えるべきものでした。当初は未熟なシステムでしたが、医師をはじめ職員の忍耐と協力により推し進めることができ、徳洲会版ピアレビューによって徐々に医療安全と質向上の概念が浸透してきていると考えられます。

多くの反対がありながら、このようなシステムが遂行できたことは、徳洲会グループの誇りだと確信します。今年4月に事務局として一般社団法人徳洲会(社徳)医療安全・質管理部が新たに設置され、第二段階のピアレビューがスタートしました。

この間、各診療科評価委員長や外部委員を交えた検証委員会で、問題のある診療科、問題医師に対する指導を行いました。また、第一段階のピアレビューで問題となった項目として、①病院に設けた診療科事務局の負担軽減と業務の効率化、②緊急手術と待機手術で合併症の差が反映されていない、③患者満足度アンケートの回収率に差がありすぎる(100~30%)、④各科評価委員の検討に際してデータが不十分、⑤特定医師の診療が問題視された場合や、緊急情報がもたらされた場合の対応――などが浮上しました。

対策としてはアンケートを廃止したり、合併症については心臓外科、外科、脳神経外科の3部門は緊急手術と待機手術に分けたりしました。また事務局を社徳に移管したことで、現場の事務作業を軽減。さらに調査用サイトを構築、データ作成手順も簡素化、社徳から電子カルテリモート接続によって診療情報の収集もできるようにしました。

このリモート接続を応用した第二段階のピアレビューは、徳洲会グループ共同倫理審査委員会の許諾の下、第一段階では行えなかった緊急情報が得られた場合の迅速対処ができるようになり、より精度の高いシステムになりました。一般的にピアレビューは、問題が起きてから対処することが多い緊急型ですが、徳洲会の第二段階ピアレビューでは、平常時に加え緊急時のピアレビューも実施することが可能になったのです。

今後は問題医師の配置転換や再教育を徹底するシステムも

徳洲会版ピアレビューでは内部告発者の保護と、米国で05年に成立した患者安全と質向上のための法律(PSQIA)に拠って、報告された情報を秘匿特権により保護し、裁判となった場合、開示請求からこれを守り、法的責任や制裁を負わされることがないように努めます。今後は問題医師の配置転換や再教育を徹底するシステムの構築が重要と考えます。ピアレビューは、患者さんのための医療安全と質の向上が最大の眼目です。皆で頑張りましょう。

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