徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

鈴木 隆夫(すずきたかお)(一般社団法人徳洲会理事長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

鈴木 隆夫(すずきたかお)

一般社団法人徳洲会理事長

2019年(令和元年)9月30日 月曜日 徳洲新聞 NO.1204

指導者は“沈黙”すべき時を知る
謙虚に傾聴し有言実行することも
将来のリーダー輩出なくして明日はない

「昨日、予期せぬ出来事が起きました。東京地方検察庁の強制捜査が、徳洲会東京本部および湘南鎌倉総合病院に入りました。これを重く受け止め、適切な対応をしなければならないと思っております。どうか職員の皆様方には、冷静に受け止めていただきたくお願いします」

2013年9月17日、快晴の朝でした。この公職選挙法違反による強制捜査をきっかけに、バッシング報道が続きました。「理事長一族の選挙マシン」、「強制的な動員」、「組織ぐるみの隠蔽か」――徳洲会はメディアの餌食でした。経営的にも最高収益を更新し続け、絶好調のなかの出来事でした。「白鳥は白い」という、これまでの常識が、黒鳥の発見によって覆された「まさかの出来事」、まさにブラックスワンの出現でした。

病院経営という荒野を彷徨い 歩きながら未来を見つけ出す

翌月20日、グループ創設者・指導者である徳田虎雄先生が理事長を退任され、私が理事長職を継ぎました。それまで破竹の勢いで伸び続けてきた399億円の税引前利益が、一気に236億円にまで転落。沖縄徳洲会の特定医療法人格も取り消され、法人税の優遇措置による軽減分39億円の納付も行いました。

徳洲会は法人税の優遇措置によって得た利益よりも、はるかに大きな費用を投じ、離島・へき地医療を守ってきました。指し示す方向性は、今でも正しかったと信じています。しかし「患者さんのため」という名目の下、何でも許されるといった思いは、明らかに私たちの傲慢でした。

この代償は大きなものでした。多くの職員が地検特捜部の取り調べに、対応を余儀なくされ、ご家族や仲間たちを悲しみに晒(さら)し、職や社会的地位を失った人もいました。組織も社会的信用をなくしかけました。

しかし、これをきっかけに徳洲会は歩むべき道を取り戻したのです。ピンチをチャンスに変えたのです。この一件を組織における「Never Event」として心に刻み、同じ過ちを決して犯さない覚悟で活動することを、あらためて社会に約束します。

病院の新院長は、昨日まで普通の医師だったところ、突然、経営者となり、職員の生活や患者さんの命を守ることを余儀なくされます。経営という数字合わせや、明日、何をなすべきかを問われ、その重圧に体を壊しながらも夢、責任を果たそうと、無理を重ねる院長も多くいます。彼らの心は病院経営という荒野を、彷徨(さまよい)歩いているのです。明日への道は、彷徨いながら見つけ出すしかないのです。

皆さんのなかから、将来の指導者(リーダー)を輩出しなければ、徳洲会に明日はありません。経営者は今日と明日のことを考えます。指導者には、さらに明日の一歩先を考えてほしい。正しいことを知っているだけでは、指導者たり得ず、実行がともなわなくてはなりません。正しい決定を導き出す判断力と勘をもたない者も失格です。

指導者は、よく聞くことと“沈黙”すべき時を知らねばなりません。沈黙は強力な武器です。人は聞いている時にこそ学ぶことがあります。雄弁は単なるおしゃべりになってしまうことも認識すべきです。時には謙虚な姿勢が必要であり、謙虚さを忘れた結果、傲慢と取られ、人々が離れていってしまうこともあるでしょう。もちろん、どんなに素晴らしい意見をもっていても、有言実行できない人もまた、指導者としては失格です。

6年前、社会的に糾弾され、多くの仲間を失った私は、まさに敗者でした。その私にとって最大の武器は「忍耐」でした。もう少し頑張ろうと、心を皆と合わせ、ようやく職員一同で未曽有の危機を乗りきることができたのです。今、徳洲会は、しなやかに立ち直り、新しい未来に向かって踏み出しています。

湘南鎌倉医療大学が開学へ 徳洲会の理念継ぐ人材育成

来年4月、学校法人徳洲会の湘南鎌倉医療大学が、学びの門を開きます。私たちが掲げる理念を継承し、日本と世界の医療を担う未来の人材を育て、旅立たせる学び舎。私の夢は「入り来る人を選び、学び舎から出る人を選ぶ」門番になることです。

徳田先生が興した理念が、今また未来に続きます。徳田先生は真の指導者であったと同時に、どんな優れた指導者でも過ちを犯すことを教えてくれました。

大きな困難を乗り越え、徳洲会の願いである「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会の実現」に向け、皆で頑張りましょう。

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