直言
Chokugen
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直言 ~
海江田 令次(かいえだれいじ)
福岡徳洲会病院院長
2019年(令和元年)9月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1203
ラグビーワールドカップ2019日本大会が9月20日に始まりました。福岡市でも3試合が予定され盛り上がっています。福岡徳洲会病院は練習用のラグビー場に近く、県のラグビー協会から選手の救急受け入れに対応する医療機関として要請を受けています。海外の選手たちに、JCI認証(国際的な医療機能評価)病院に恥じない医療を提供したいと考えています。
病院長をスポーツの監督になぞらえ、どうあるべきかという議論があります。投手の一球一球ごとに、攻撃方法や守備位置の変更の指示を送る野球型と、試合が始まったら、ある程度、選手の判断に任せるラグビー型の監督に分けて語られることが多いようです。前回のラグビーワールドカップ対南アフリカ戦で、日本代表のエディ・ジョーンズ監督は試合終盤、「ショット」(引き分け狙いのペナルティゴール)と叫んだようですが、選手の耳には届かず、勝利を目指す選手たちは奇跡の逆転トライを取りました。病院では各職員が現場で判断し対応すべきことが多いのですが、職員はつねに一丸となって病院全体の目的に向かうことが大切でしょう。
“One for all, All for one”はラグビーの精神を表す言葉です。一人ひとりが皆のために努力し、皆でひとつの目的を達成するために力を合わせる。ラグビーでは勝利を目指しますが、病院も職員が日頃からポリシーを共有し、医療安全と患者さんのアウトカム(治療の結果)向上を目指す病院運営に通じる精神です。
当院は1979年10月1日に開院し、今年で40周年を迎えました。多くの地域住民の皆さんや病院業務を支えていただいた企業の方々、これまで勤務してくれた当院の職員や現役職員、徳洲会グループの皆さんの協力の賜物です。職員一同、心から感謝を申し上げます。
開設後、診療体制の充実を図るため、ほぼ10年ごとに増築してきました。免震化対策の早期実現や設備環境の改善を望む声も日に日に高まりました。そうしたなか、新しい時代に即した医療を展開するために14年9月1日に新築移転しました。
新病院では救急患者さんの初期治療から診断、手術やカテーテルによる血管内インターベンションなどの治療が円滑にできるよう設計し、屋上にはヘリポートも設置。地下には放射線治療装置、PET-CT(陽電子放出断層撮影-コンピュータ断層撮影)を配備しました。ハイブリッド手術室では、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI(タビ))の症例を重ねています。外科、泌尿器科ではダビンチによるロボット手術に今年から取り組んでいます。医療の進歩をできるだけ早く住民の方々が享受できる体制を取り続けていきます。
当院は18年12月、JCI認証を取得。福岡県では初の認証でした。今後も認証を継続できるよう努力していく所存です。
医師の教育研修も重要な業務です。臨床研修を当院で修了した医師は、これまで480人を数え、徳洲会グループのみならず海外でも活躍する医師を輩出しています。初期研修プログラムに加え内科、外科、救急科、形成外科、麻酔科の専門研修プログラムもあり、専攻医も募集しています。若い医師に選ばれる病院でありたいと思います。
2人に1人が、がんになる社会では、がんの標準治療の提供は必須と考えます。また、地域医療支援病院としての役割を果たすことも重要な責務です。
ラグビーのチームは、フォワードのようにパワープレーが求められる巨漢の選手だけでなく、バックスやスクラムハーフのように足の速い選手や小柄でも司令塔として判断力に優れた選手など、異なる個性を生かしつつ、それぞれのポジションの役割を理解した専門家集団であることが必要です。病院も同じだと思っています。基本的なことを押さえつつ、個性を生かして専門の能力を高めることがチーム力の増強に必要です。当院には1500人の職員が働いています。それぞれが個性を育て、能力を高める努力を重ねましょう。各診療科や部署を活性化し、新しい知識や技術を学ぶ積極的な職員が求められます。職員全員が病院の使命を理解して研鑽(けんさん)するとともに、自分の個性と能力を高める意欲をもち続けることが、50周年に向けての課題です。皆で頑張りましょう。