徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)5月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1133 一面

摂食嚥下リハビリを強化
与論徳洲会病院
南部徳洲会病院と連携

与論島唯一の病院である与論徳洲会病院(鹿児島県)は、南部徳洲会病院(沖縄県)と連携し、リハビリテーション科の摂食嚥下(えんげ)機能障害に関する診療を強化している。2016年8月に南部病院の滝吉優子リハビリテーション科医長が与論病院を視察、リハビリ専門医や言語聴覚士(ST)不在の状況下、看護師や理学療法士(PT)などに摂食嚥下リハビリを指導する必要性を感じ、同年11月から月1回の応援を開始した。与論病院の久志安範院長は「離島でも都市部と変わらない摂食嚥下リハビリができる病院としてモデルケースになりたい」と意欲満々だ。

離島病院のモデルケースに

「与論病院が離島でのモデルケースに」と久志院長(左)と滝吉医長 「与論病院が離島でのモデルケースに」と久志院長(左)と滝吉医長

南部病院は14年にリハビリテーション科による摂食嚥下機能障害に関する診療を開始。翌15年に「相談窓口」、「院内連携」、「地域連携」の三本柱の整備を本格的に始めた。滝吉医長はこうしたノウハウを生かし、16年11月に与論病院に月1回出向く応援診療をスタート。同時に離島の状況に合わせた三本柱の整備に尽力している。

与論病院の「相談窓口」は、同院の看護師が、回診が必要な入院患者さんを事前にピックアップし、滝吉医長が応援時に患者さんの相談に乗る。同院は17年3月に嚥下造影検査を開始、相談窓口の機能を大幅に強化した。同検査は造影剤を含む食物を飲み込んでもらい、食物の動きや嚥下関連器官の状態をX線透視下に観察。とくに不顕性(症状が現れない)の嚥下障害の原因解明に役立ち、患者さんや家族に画像を見てもらいながら説明できるメリットがある。

患者さんごとに食事条件や手技の方法をカードにしてベッドサイドに掲示 患者さんごとに食事条件や手技の方法をカードにしてベッドサイドに掲示

「院内連携」では与論病院の看護師教育からスタート。まずは16年12月に滝吉医長が「とろみ選手権!」という勉強会を実施。これは参加者がつくった食物の粘度を簡易とろみ測定キットを使い測定するもので、最終的に「濃い」、「中間」、「薄い」の3段階のとろみ作成を目指した。滝吉医長は「この勉強会により自分たちの現状が実感できたようで、以降の教育活動が円滑になりました。努力の結果、翌月には標準化できました」と振り返る。

また、電子カルテで嚥下造影検査の結果を一定のフォーマットに落とし込み、食事条件や手技の方法を記載し、院内で共有できるようにした。さらに、これを実践で使いやすくするため、同院の職員が自発的に、患者さんごとの支援方法をカードにまとめベッドサイドに掲示した。

家族が患者さんに上手に食べさせている様子に滝吉医長(右)が感動 家族が患者さんに上手に食べさせている様子に滝吉医長(右)が感動

また、17年4月に摂食嚥下の包括的評価ツールの勉強会を南部病院で開催した際には、与論病院からも久志院長をはじめ5人が参加。勉強会後に久志院長が自院の病棟を回診し、院内連携がさらに深まった。

久志院長は「勉強会で口から食べることの重要性を学びました。医師は指示を出すだけですが、実際に患者さんのケアをしているのは看護師やPT。レベルアップのために必要なことは何でも協力しようと思います」と意欲的だ。

「地域連携」は17年下期から取り組んでいる。職員が成長するに従い、退院後に入居する介護施設などの食支援技術の違い、摂食嚥下に関する温度差を認識した。滝吉医長は「退院後も継続したケアができれば、再入院率の低下、QOL(生活の質)向上につながります。まずは症例を通じて医介双方の共通認識を育てることから始めました」。今後は病院、介護施設の職員が主体となり合同勉強会の開催を計画している。

成功体験を積み重ね成長

南部病院の具志堅ST(左から3 人目)によるアイスマッサージの勉強会 南部病院の具志堅ST(左から3 人目)によるアイスマッサージの勉強会

取材の日、南部病院からは滝吉医長に加え、友寄寿美子・回復期リハビリテーション病棟看護師長と具志堅亮祐STも同行。これまでは滝吉医長のみだったが、チームで応援に行くのは初の試み。滝吉医長は「与論病院のチームが成熟してきたので、当院のチームと情報交換することで、お互いに刺激になると考えました」と意図を説明する。

まずは嚥下造影検査を行い、続いて4人の患者さんをベッドサイドで診察。なるべく与論病院の看護師やPTに患者さんのケアを実践してもらい、滝吉医長はアドバイスを送ることに徹していた。この間、病院の垣根を越えて看護師同士で情報交換をしたり、摂食嚥下リハビリの専門家であるSTに質問を投げかけたりし、交流を深めた。

ベッドサイドで家族が患者さんに嚥下食を上手に食べさせるのを観察していた滝吉医長は「与論病院の看護師やPTのケアを見て、患者さんの家族が学ばれたのだと思います」と感動。「こうした成功体験はすぐに共有し、次につなげるようにしています」と説明する。

具志堅STによるアイスマッサージ(嚥下反射を誘発させるための方法)の勉強会も行った。「口の中をなでるだけではなく、しっかり圧をかけて」などポイントを解説。与論病院の看護師とPTはさっそく回診のなかで実践し、自分のものにしていた。

滝吉医長は「与論病院では予想以上の早さで院内連携が構築されています。医師やSTなど摂食嚥下リハビリの専門職がいない状況で、自分たちが〝最後の砦(とりで)〟という意識で働いているのだと思います」と評価。

久志院長は「今後、摂食嚥下リハビリを強化したい離島病院が出てきた際には、当院に見学に来ていただき、方法を学んでいただけるようになれば良いと考えています。環境の似ている離島病院同士だからこそできる連携をしていきたいです」と意気込みを見せる。

PAGE TOP

PAGE TOP