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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)5月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1132 一・二面

湘南鎌倉総合病院消化器病センター
新型胆道鏡で積極的に学会活動
先進医療施設中心の多施設共同研究も

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の小泉一也・消化器病センター部長は、2016年1月に導入した新型デジタル経口胆道鏡「スパイグラスDS」関連をテーマに学会発表に積極的だ。15年10月に国内で販売開始した同機は、従来機に比べ操作性に優れ、デジタル化により画質も向上しているため、同院は全国に先駆けて導入。小泉部長は「賀古眞センター長を中心とする消化器病センターでは、今後も基本的な診療技術の向上とともに先進的な医療を積極的に取り入れ、患者さんの体の負担を減らし、安心して治療が受けられるようにしていきたい」と意欲的だ。

胆管がんの診断精度が向上

「今後も積極的に先進的な医療を導入していきたい」と小泉部長 「今後も積極的に先進的な医療を導入していきたい」と小泉部長

これまで胆管、膵(すい)管に病気が生じた場合、内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)を用いた検査が一般的だった。これは内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、胆管または膵管の出口から逆行性に造影剤を注入、体外からX線で撮影する検査方法だ。しかし、ERCPでは胆管・膵管内の病変を直接見ることができず、結石と腫瘍の鑑別が困難な例などもあった。胆管がんの手術では、ERCPで腫瘍の範囲を予測してから開腹し、病変から採取した検体を迅速病理診断に出し、腫瘍の範囲を確定させながら進めていた。

同院が16年1月に導入したスパイグラスDSは、ERCPのスコープ内から胆管に挿入する胆道鏡で、従来よりも画質・操作性が大幅に向上している。同機では腫瘍の進展範囲を直接視認しながら生検を行うことができるため、ERCP単独に比べ切除想定範囲を術前に正確に決めることができるようになった。

同院は全国に先駆けて同機を導入した経験から、16年11月に兵庫県で開催された第24回日本消化器関連学会週間(JDDW2016)で、今後導入を検討している医師などに向け機器展示場でブースレクチャーを実施。講師を務めた小泉部長は「レクチャー後も操作性やコストなど個別に質問を受け、関心の高さを感じました」と振り返る。

内視鏡を用いて治療を行う小泉部長(右)と増田作栄医長 内視鏡を用いて治療を行う小泉部長(右)と増田作栄医長

翌年の17年10月に福岡県で開催された第25回日本消化器関連学会週間(JDDW2017)のなかで開かれたワークショップで、小泉部長は「新型デジタル経口胆道鏡下生検の有用性~透視下生検との比較から~」と題し発表した。

胆管狭窄(きょうさく)例に対する組織学的検査で、ERCPによる透視下生検58例、スパイグラスDS下生検25例を対象にした結果、正診率は前者の81.0%に比べ、後者は92.0%と高い数値を示した。「ERCPは2次元なのに対し、スパイグラスDSは3次元で病変を視認できます。再検査数の削減や治療までの期間短縮につながる可能性が示唆されました」と結んだ。

がんの診断について、同年7月に京都府で開催された第48回日本膵臓学会大会で、小泉部長は「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対するスパイグラスDSを用いた経口膵管鏡検査の有用性」というテーマでの発表も行っている。

IPMNはがんになる前段階で早期発見することが重要な疾患。発表では5例について後方視的に検討した。同機は安全に施行可能であり、副乳頭からの挿入や拡張分枝内病変の生検が症例によって可能であるなど操作性を評価。「乳頭状隆起の視認と生検が全例で可能。結節と粘液の鑑別ならびに腫瘍性病変の確認などの点できわめて有用と考えられます。しかし、良悪性診断や範囲診断では今後、工夫を要します」と結論付けた。

JDDW2016のブースレクチャーはスパイグラスDS の導入を検討する医師らで盛況 JDDW2016のブースレクチャーはスパイグラスDSの導入を検討する医師らで盛況

スパイグラスDSのもうひとつの特徴は、胆石や膵石の破砕術にも使える点。これについて、同年9月に山形県で開催された第53回胆道学会学術集会で、小泉部長は「近年における経口胆道鏡下レーザー破砕術の役割」と題し発表、今後、適応が拡大する可能性を示した。

また、胆管ステントとひとかたまりになり従来法では排石困難であった巨大結石に対し、スパイグラスDSを用いレーザー砕石治療を行った動画は、米国内視鏡学会のビデオジャーナルに掲載。

こうした学会発表や同院での実績を聞き付け、近隣の病院のみならず大学病院からも紹介患者さんが出ている。この患者さんは肝移植後の肝内結石で、対症療法として1~2カ月に一度、ERCP下によるステント交換を繰り返していた症例。同機の使用により、細い枝状の管に処置具を入れながら結石を除去することで完全排石が得られ、再発を認めずに経過している。

また現在、同院は国内の先進医療施設を中心に26施設が参加する「胆膵疾患の診療におけるスパイグラスDSの臨床的有用性と安全性に関する多施設共同前向きレジストリ試験」に協力。国内では、まだ症例数が少ない同機の臨床的有用性を検証するため、7月までに200例を集め、解析していく。

小泉部長は「基本的な内視鏡技術を磨くことが大前提ですが、さらに先進的な医療を導入することで、患者さんの体の負担を減らし、より安全な医療が提供できるため、これからも積極的に検討していきたいです」と展望を語ったうえで、「当院での経験を伝えることで多くの患者さんが低侵襲な治療を受けられる機会を得られるように、学会や論文での発表、さらに徳洲会グループ内の勉強会などにも取り組んでいきたいと思います」と意気軒高だ。

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