徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)4月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1076 一面

徳洲会グループ
肺がんキャンサーボード
多施設がWEB使い参加

徳洲会グループは肺がん診療の質の向上を図るため、呼吸器部会が主導し「徳洲会肺がんキャンサーボード」を開始する。徳洲会は臨床と研究の両面から、がん医療強化を目指すオンコロジー(腫瘍学)プロジェクトを推進しており、その一環だ。グループのスケールメリットを生かし、多施設を結んで多職種が参加するカンファレンス(症例検討)を開催、最適な治療方針を決定する。こうした形のキャンサーボードは徳洲会で初の取り組み。一般のインターネット回線から隔離された通信網と、強固なセキュリティ機能を有するWEB会議システムを活用し実施。まず4月に4病院で試行的に取り組み、5月をめどに参加病院を拡大していく。

まず4月から4病院で試行

「患者さんと医療従事者の双方のお役に立てるキャンサーボードを目指します」と竹田部長 「患者さんと医療従事者の双方のお役に立てるキャンサーボードを目指します」と竹田部長

診療科や職種の垣根を越え多様な観点から、がん患者さんに対する最適な治療方針を検討するのがキャンサーボード。エビデンス(科学的根拠)に基づいた有効性の高い集学的治療(手術、化学療法、放射線治療など)を、個々の患者さんの病状や意思、家庭環境など生活背景もふまえ実施していくうえで有効な仕組みだ。

肺がんは、がん種別の罹患(りかん)率で3位(2012年、国立がん研究センター)、死亡率では1位(14年、同)。早期発見が難しく、難治性で予後不良となる症例が少なくない。そのため近年、がん細胞の遺伝子を解析し、検出した遺伝子変異に応じ、治療効果が期待できる分子標的薬を投与する「プレシジョン・メディシン(精密医療)」が、肺がん薬物療法の主流になりつつある。実施には高度な専門知識が求められるが、消化器や循環器などの領域と比べ、呼吸器は専門医数が全国的に少ないなど課題もある。

徳洲会呼吸器部会は、より質の高い肺がん診療を提供するため、グループのスケールメリットを生かし、多施設が参加する「徳洲会肺がんキャンサーボード」を開始する。

一般的にキャンサーボードは公立・民間を問わず単独の病院内に設置、運用するケースが多い。多施設参加型はめずらしいが、個々の病院のマンパワーのみに頼らない治療方針の意思決定が可能になるため、診療の“質の向上”と“標準化”が期待できる。

まず4月から宇治徳洲会病院(京都府)、八尾徳洲会総合病院(大阪府)、大隅鹿屋病院(鹿児島県)、千葉西総合病院の4病院で試行的に実施する計画。参加職種は呼吸器内科、呼吸器外科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科の専門医に加え、がん関連の認定看護師やがん薬物療法認定薬剤師も予定。

細胞診や組織診などを担う病理診断科の医師に関しては、徳洲会病理部門の青笹克之・最高顧問(大阪大学名誉教授)に推薦を依頼し、人選を進めている。

開催は週1回(毎週火曜日・午後6時開始)とし、第1回の開催は4月4日。試行期間を経た後、5月をめどに参加施設を拡充していく。当面は徳洲会グループの肺がん診療の基幹施設である日本呼吸器学会認定施設7病院と同関連施設3病院(表)を含む10~15病院を想定、今後、参加を呼びかけていく。

宇治病院の竹田隆之・呼吸器内科部長(徳洲会呼吸器部会長)は「多様な専門家の観点を導入することで、見逃しを防いだり、治療選択の可能性が広がったりするため、患者さんにメリットがあります。一方、主治医にとっても、さまざまな意見や見方をふまえ、合議により治療方針を決めることができますので、負担の軽減にもつながります」とアピール。

続けて「現状でも、ほとんどの病院で適切な治療を行っていると思いますが、グループのスケールメリットを生かして各病院が補完し合い、どこの病院を受診しても質の高い医療を提供していけるよう、患者さんと医療従事者の双方のお役に立てるキャンサーボードを目指します」と抱負を語っている。

地理的に離れた施設が参加するキャンサーボードを実施するには、レントゲンやCT(コンピュータ断層撮影)の画像など診療情報を共有するシステムの整備が欠かせない。これについては、セキュリティ機能がきわめて高いWEB会議システムを活用し、通信ネットワークを構築。

宇治病院と八尾病院で実施した検証試験の様子(左から竹田部長、藤村部長) 宇治病院と八尾病院で実施した検証試験の様子(左から竹田部長、藤村部長)

3月13日には宇治病院と八尾病院を結んで検証試験を実施。徳洲会インフォメーションシステム開発部の藤村義明部長が立ち会い、竹田部長、八尾病院の瓜生恭章・内科部長(呼吸器部会教育研修委員長)が同システムを稼働、操作方法や画質のチェック、問題点の洗い出しなどを行った。それぞれ自院で画像を閲覧するのと遜色(そんしょく)ない画質を得たことなどから、実際のキャンサーボードの使用に十分耐え得るシステムとの結論に至った。

仮に試行期間の4病院で試算した場合、各病院が3症例を提示し、それぞれ10分議論しただけでも2時間を要してしまう。このためキャンサーボードにかける症例の選定方法については、参加施設数や4月からの試行期間の状況をふまえ、検討していく意向だ。また、開始から数回は竹田部長が総合司会を担うが、その後、認定施設や関連施設の医師の持ち回り制にする構想だ。

呼吸器部会が発足したのは15年7月。徳洲会は、安全で質の高いがん標準治療の普及などを目的に、徳洲会オンコロジープロジェクトに取り組んでおり、同プロジェクトの一環として、肺・大腸・乳がんの各領域で臨床研究や臨床試験を推進。肺がん領域では試験の経過や方針、肺がん診療の最新情報などを共有するために、「肺がん研究会」を開催している。

呼吸器部会は、同研究会を母体として発足。以降、学会形式の症例検討会を半年に1度のペースで開催するなど、グループの呼吸器診療のレベル向上に尽力している。症例検討会はこれまでに4回実施。

竹田部長によると、肺がんキャンサーボードの設置はグループ内の医師からの「症例検討会で後方視的に振り返るだけでなく、呼吸器部会があるのであれば徳洲会グループとして、目の前にいる患者さんが、今まさに必要としている意思決定を行う仕組みを設けてはどうか」という意見が発端だという。

「症例検討会も参加者のスキルアップに資する重要な活動ですが、“目の前の患者さん”に対する取り組みとしてキャンサーボードは大きな一歩です。呼吸器部会としてどちらも重要な活動と位置付け、キャンサーボードを軌道に乗せていきたい」(竹田部長)

徳洲会グループの日本呼吸器学会認定施設および関連施設

【日本呼吸器学会認定施設】
千葉徳洲会病院
千葉西総合病院
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)
宇治徳洲会病院(京都府)
八尾徳洲会総合病院(大阪府)
和泉市立病院(大阪府)
【日本呼吸器学会関連施設】
札幌東徳洲会病院
鎌ケ谷総合病院(千葉県)
名古屋徳洲会総合病院

呼吸器部会がホームページ

徳洲会呼吸器部会は独自のホームページを開設した。コンテンツは徳洲会や呼吸器部会の概要、症例検討会の開催案内や過去の開催情報、施設一覧など。過去の開催分に関しては症例検討の抄録に加え、ミニレクチャーのPDFデータを公開。将来的には症例検討会の動画配信も行っていきたい考えだ。ホームページで情報発信し、医学生や呼吸器専門医の資格取得を目指す後期研修医などへのアピールにも努めていく。

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