1次・2次救命処置
BLS・ALS
BLS・ALS
人は誰にでも「急変」のリスクがある。たとえば、あなたの家族や友人、隣にたまたま居合わせた人が突然倒れた場合、どのように対応したらいいのだろう。一般の方でもできるAED操作と、心臓マッサージ(胸骨圧迫)によるBLS(1次救命処置)を紹介します。
清水徹郎部長
CPR(心肺蘇生法)の重要性は、1970年代から認識されるようになり、現在では新規に自動車や自動二輪車の運転免許を取得する際や、スキューバダイビングのレスキューコースでも必須手技となっています。
CPRには、一般の方でも行えるBLS(1次救命処置)と、救急救命士や医師による気道確保、点滴・薬剤投与といった高度な処置を行うACLS(2次救命処置)があります。
BLSの重要性について、ALS(徳洲会2次救命法)コースのディレクターを務める清水徹郎・高気圧酸素治療部長(南部徳洲会病院/沖縄県)は、次のように話します。
「心肺停止から1分以内にAED(自動体外式除細動器)による電気ショックおよびBLSが施行された場合の社会復帰率は、100%に近いといわれています。タレントの松村邦洋さんがマラソン中に倒れ、AEDと心臓マッサージ(胸骨圧迫)で救命されたのは有名な話ですね」
倒れた人が心肺停止状態の場合、1分経過するごとに7~10%ずつ救命率が低下するといわれています。その場に居合わせた人(バイスタンダー)がAEDを使い、適切な心臓マッサージも行うことが高い救命率につながります。
「AEDがこれだけ普及し、救急救命士制度が充実したにもかかわらず、心肺停止になった患者さんの社会復帰率は数%にすぎません。その原因を客観的に分析したところ、救命に最も大切なのは、素早く心蔵マッサージを開始し、なおかつ質の高い(速く、強く、しっかり戻す)圧迫をできるだけ中断することなく行うことが大切だとわかりました。2010年のAHA(アメリカ心臓協会)のガイドラインでは、左記のBLSの流れのようにシンプルに変更され、誰にでも実施できるよう改善されました。
救命処置には、ためらうことなく積極的に取り組んでほしいですね。不安な場合には、一度講習を受けることをおすすめします。地域の消防署などが無料で講習会を実施していることが多いので、お近くの保健所や消防署に問い合わせてみてください」
倒れている人を見つけたら、まず周囲の安全を確認してから近づきます。胸から肩を軽くたたきながら「大丈夫ですか?」と反応を見ます。このとき、患者さんを強く揺さぶるようなことは避けましょう(頸椎に損傷があるかもしれないので)。
反応がなければ、大声で周囲の人に助けを求めます。「誰か来てください。119番に電話して、AEDを持ってきてください!」と呼びかけ、周りの人にも手伝ってもらいましょう。
ただちに胸骨に、肘をしっかり伸ばしながら指ではなく「手のひらのつけ根」を当てます。1分間に100~120回、成人であれば約5cm胸が下がるくらい強く絶え間なく圧迫します。押した後は、圧迫をしっかりと解除することが重要です。
人工呼吸のトレーニングを受けたことがあり自信のある方は、30回の心臓マッサージ(胸骨圧迫)後に2回の人工呼吸を加えてもかまいません。抵抗感のある場合は、心臓マッサージを「中断せずに続ける」ことが重要です。
AEDが到着したら、心臓マッサージを交代してもらいAEDのスイッチを入れます(カバーを開けると、自動的にスイッチが入るタイプのものもあります)。電極のついたパッドを写真のように貼り、AEDの音声ガイドに従います。
この際、ペースメーカーの埋め込み(鎖骨下のこぶのような出っ張り)がないことを確認、埋め込まれている場合は、出っ張りに重ならないように貼ってください。
電気ショックが必要かどうかをAEDが自動的に判定します。ショックが必要であるとアナウンスされたら、周囲の安全(周りの人が患者さんに触れていないこと)を確認して放電スイッチを押します。
放電後、すぐに心臓マッサージを再開します。AEDは2分ごとに心電図を自動的に解析するので、その指示に従います。
蘇生に成功した場合でも、AEDのパッドは救急車が到着するまではがさずにそのままにしておきます。
通常、空港や駅、学校などの公共施設や商業施設、企業など、人が多く集まるところに設置されている(写真)。
開けると自動的に電源が入るものと、手動で電源を入れるものがある。心肺停止状態になった方の胸に電極のついたパッドを貼ると、自動的に心臓の状態を判定し、必要な場合には電気ショックを与えて心臓を正常なリズムに戻す医療機器。
AEDの電源を入れると、その操作方法を音声で指示してくれるため、医療従事者ではない一般市民でもこの医療機器を使って救命することができる。