上山 泰男(徳之島徳洲会病院院長)

徳洲新聞2014年(平成26年)8/11 月曜日 NO.941

島の医療は全国の同志が担っている 深刻な医師不足から常勤医7人に増 グループの皆様に感謝の気持ちでいっぱい

徳田虎雄・前理事長が育った徳之島三町のひとつ、伊仙(いせん)町の2008~12年の合計特殊出生率(ひとりの女性が一生に産む子どもの平均数)は2.81と日本一。徳之島は泉重千代(いずみしげちよ)さんらに代表される子宝長寿の島です。

徳之島には当院と民間総合病院、単科精神科病院、4診療所があります。当院の年間救急搬送は1100件超、急性期医療、外来での慢性疾患治療、出産数200人を超える島内唯一の周産期医療、登録者約300人の訪問看護、学校健診や予防接種など保健業務、果ては検視まで担います。公的病院のない島で、当院は島民の医療の最前線かつ最終拠点として、命の誕生から終わりまでを支えています。そのことに職員は自負と誇りをもっています。

私が院長として赴任した11年6月、常勤医師は私と産婦人科の伊藤史浩(ふみひろ)医師のたった2人で、あとは初期と後期の研修医が3人いるだけでした。そんな深刻な常勤医不足のところに飛び込もうという酔狂な医師はなかなかいません。

医師不足の現実を徳洲会本部に陳情したところ、内科、外科、循環器科、小児科、産婦人科の応援を出していただきました。その甲斐(かい)あって徐々に常勤医が増え、ようやく現在7人の常勤医を抱えるに至っています。また、今年度も外科と小児科は引き続き応援をいただき、看護師や薬剤師、リハビリ職など他職種の派遣も徳洲会グループから受けています。

鹿児島県の医療組織の援助で経験ある産婦人科医2人招聘

協力の輪は徳洲会グループだけにとどまりません。子宝の島を維持するうえで一番の懸念事項であった産婦人科医は、徳之島三町、鹿児島県医師会産婦人科部会、鹿児島市立病院、鹿児島大学医学部産科婦人科学教室、鹿児島県こども福祉課の援助により、2人の経験ある産婦人科医を招聘(しょうへい)。徳洲会病院長会や徳洲会本部からの定期的な小児科支援がなければ、彼らも二の足を踏んだでしょう。

離島の医師不足の要因として考えられるのは、次のとおりです。

若い医師は離島では専門医などの資格が取れない、指導医がいない、高度な医療機器がない(離島では高額な機器を少ない患者さんのために置いておけません)、本土に行くのに時間がかかるため学会や研究会に出席できない、専門医にすぐ紹介できない、離島勤務の診療経験を学会も大病院も評価しない、専門医は自分の専門領域の患者さんを多く診療したい、子どものための学校・予備校がない、配偶者が同意しない、離島手当が少ない――などです。

私たちの病院で、すべての疾患を治療できるわけではありません。必要時には島外搬送を行います。日中は沖縄県のドクターヘリ、夜間は自衛隊ヘリ、時に海上保安庁の協力もあります。自衛隊のヘリは鹿児島県知事から沖縄県知事に依頼して、沖縄の自衛隊ヘリが来島します。

当院が依頼してから、患者さんが紹介先へ到着するまで搬送時間は平均3~4時間。病状の悪化を心配しながら待つしかありません。患者さんや家族はどれだけつらいでしょうか。搬送先は沖縄の病院が80%、奄美大島(あまみおおしま)の鹿児島県立大島病院は20%です。急変した妊産婦さんや新生児の搬送はとくに急ぎます。当院の過去5年間の妊婦さんの救急搬送は28例、新生児は13例ですが、妊婦さんと新生児の死亡はありませんでした。

妊婦さんと新生児受け入れ 病院の決定システムを構築

現在は鹿児島市立病院や鹿児島県のご配慮で、妊婦さんと新生児の受け入れ病院の決定システムが構築されました。このシステムが始まる以前から、皆様のおかげで母子ともに搬送でき、高度で適切な治療が受けられていたのです。

当院の訪問診療登録人数は約300人です。制がん剤治療や看取りなどもしています。生活保護受給者が利用者全体の30%で、後期高齢者(75歳以上)は同83%、独居高齢者は同25%です。

当院や関連施設は徳洲会全体から見れば小さいです。それにもかかわらず「生命だけは平等だ」の理念の具現化のため、この離島の病院に全国の徳洲会グループの医師、看護師ら職員の方々が、日常の業務を犠牲にして応援に来られています。

この「直言」を通じて黙々と、心を込めて、日々の業務を継続されている徳洲会グループの皆様に、感謝と尊敬の気持ちを表すことができれば幸いです。

皆で頑張りましょう。