藤田 安彦(喜界徳洲会病院院長)

徳洲新聞2014年(平成26年)6/9 月曜日 NO.932

互いに助け合うという離島の風土 自己満足ではなく利他の気持ちを 徳洲会職員は社会に貢献する責務をもつ

5月17日、父が他界しました。子どもの頃はひたすら怖かった父が鹿児島徳洲会病院に入院し、HCU(高度治療室)に横たわって「島に帰りたい」と何度も口にする姿を見た時、強い望郷の念をひしひしと感じました。父の意識が回復し、バイタル(血圧、体温、脈拍)も安定した時点で、徳之島徳洲会病院への転院を鹿児島病院の飯田信也院長に依頼。5月7日、徳之島病院まで飯田院長と看護師さんの付き添いの下、搬送できました。

転院後、しばらく病状も安定していましたが17日午後、主治医の村上楽先生より危篤の知らせを受けたのは喜界空港でのこと。すぐに徳之島便に乗り継ぎ病院に向かいましたが、数十分後に息を引き取りました。父の望みどおり帰郷できたのは、病院のご厚意やスタッフの方たちの献身的なサポートのおかげと感謝しています。

父は常日頃、親戚や知人から頼まれた就職、進学、入院の世話などを引き受けていました。頼まれたことにノーと言えない性格で、母はとても苦労しました。墓参りや帰郷した時の親戚回りにも非常に厳格で、若い時にはうっとうしく思えましたが、今はその気持ちが理解できるようになりました。父が厳しかったおかげで、人生を誤らずにこられた気がします。私たちに残してくれた財産は、親戚や知人に対する愛情と故郷を大事に思う愛郷精神、人間関係で、多くの人に頼られたことは見習わねばと位牌(いはい)に手を合わせました。

西郷隆盛の言葉を紹介します。「道は天地自然の物にして人は之(これ)を行うものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛し給(たま)うゆえ、我を愛する心を以(もっ)て人を愛するなり」。

島ですべての医療を完結できることが島民の願い

現在、喜界島の人口は7450人。年間約50人前後の出生数ですが、死亡数が150~200人程度で人口は減少しています。外来患者数は1日平均約210人と増加していますが、入院数の1日平均は2011年度の100人から13年度は96人と減少。理由のひとつとして、人口減少と死亡数の増加が考えられます。

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科の嶽崎俊郎(たけざきとしろう)教授の報告では、奄美島嶼(とうしよ)地域は長寿者の割合が多いのですが、平均寿命は必ずしも長くありません。05年から始まった同大学の「あまみの生活習慣病予防と長寿に関する研究」結果では、奄美地域の肥満者の割合は日本人平均の2倍。健診受診者では血液中のコレステロール値が高い人の割合が急増しています。また、独居の方が多く、経済的にも苦しい生活です。このため都市部で医療を受けられず、島ですべての医療が完結できることを島の人たちは望んでいます。

離島医療を支えるには業務を担う職員の高い倫理性が大切

10年10月1日に赴任して以降、午前・夕診、介護病棟などの診療を行うと同時に、一般病棟、健診、訪問、老人施設・学校健診、予防接種などの業務を常勤医3人と研修医2人で分担しながら対応。一方、島内すべての救急搬送を担っているため、初期・後期研修医に負担が重くのしかかります。台風、気象条件などにより救急ヘリや定期飛行機が飛べない時もあり、研修医はこうした厳しい環境のなか、逞たくましく成長していきます。

外科、小児科、整形外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科などは非常勤医師で対応しているのが現状。グループ内外からの応援で何とかしのいでいます。看護師などコメディカルもグループから応援を得ています。離島だけの力では存在できない理由がここにあります。今後は常勤の総合診療ができる医師(家庭医)や外科医がほしく、徳洲会が養成に注力する家庭医が増えることを期待しています。

離島医療を支えるのは医療業務に携わる職員の高い倫理性と使命感、献身的な努力によっています。入浴、排泄、食事、リハビリ、検査の介助、混合病棟での勤務、特診日の日曜・祭日出勤、送迎、訪問看護・診療なども職員の支えがあればこそ。少人数で24時間・365日、医療を提供できるのは、離島で暮らす人たちがお互いに助け合うという風土によるものと思います。

貧しい生活や孤独な生活を送る人たちのために、徳洲会の存在価値はあると思います。「生命だけは平等だ」の崇高(すうこう)な哲学をもつ徳洲会職員は、社会に貢献していく責務があります。苦しい時こそ、単なる自己満足のためではなく、利他の気持ちをもって、皆で頑張りましょう。