藤田安彦~喜界徳洲会病院院長~

徳洲新聞2012年(平成24年)12/24 月曜日 NO.857

離島医療の存続には並々ならぬ覚悟と努力が必要 徳田虎雄理事長の思いを真摯に受け止め皆で頑張ろう

10月30日、徳田虎雄理事長が9年ぶりに喜界島に来島されました。ヘリコプターから降り立った姿は凛(りん)として、出迎える人たちの歓声に柔和な笑顔で応えていました。出迎えた島の人たち50人と記念撮影後、当院へ。

徳田理事長の到着を心待ちにしていた当院職員をはじめ、有料老人ホームひまわり苑とひまわり第一・第二保育園の職員、川島健勇(たてお)喜界町長以下町会議員や町の方たち330人が盛大な拍手で出迎えました。歓迎会では、1997年1月3日に来島された際に書かれた色紙「真実一路」、「愛とこころ」の2枚を会場の中央柱に飾り、職員を代表して私が挨拶しました。徳田理事長の信念に従い島の人たちに喜ばれる病院にしていく決意を述べました。この8月には、MRIを1・5テスラに更新、10月にはPACS(パックス)(医用画像情報システム)を導入していただき、あらためてお礼を申し上げました。人口7800人の島では十分な高性能機器で、急性期脳梗塞や脳腫瘍、乳腺疾患、胆道疾患、前立腺腫瘍、婦人科疾患、脳脊髄疾患、関節疾患などの画像診断に役立っています。

これはCT、MRI、内視鏡、超音波などの画像をモニターで見ることができ、印刷は不要。時間的ロスも少なく、患者さんに検査結果をモニターで見てもらいながらわかりやすく説明できる利点があります。機器を眼光鋭く見つめる理事長の姿から、離島への思いを伝えるために決死の覚悟で来島したのがひしひしと伝わってきました。

理事長がここまで頑張ることができたのは、郷里・奄美の心を持ち続けたからでしょう。琉球、薩摩、アメリカの支配という、奄美の長い苦難の歴史から私は人間として生きる根本原則を学びました。その原則とは、理事長のいう「弱きを助け、悪しきをくじく」にあり、それに従い「生命(いのち)だけは平等だ」の理念が生まれたのだと思います。人口11万人余りの奄美群島の島々に、7病院と30医療福祉施設、CT7台、MRI5台をもって離島医療を担い、「奄美を日本一、世界一の医療福祉の島に」という理事長の約束は達成されつつあります。しかし、離島・僻地(へきち)医療を持続・発展させていくには並々ならぬ努力と覚悟が必要です。医療・福祉に携わるスタッフの高い倫理性と使命感と献身的な努力が必要と話す理事長の思いを聞くたびに、私たちの使命の大きさを実感します。

理事長の離島医療にかける情熱強い信念に島への赴任を決意

喜界町の高齢化率は33.5%で、奄美群島では宇検村(うけんそん)に次いで高いため(09年度)、高血圧症や糖尿病、骨粗鬆(しょう)症、慢性心不全、弁膜症、高脂血症の方が増えています。独居の方が多く、都市部で医療を受けられる人は限られます。この島ですべての医療が完結できることを、島の人たちは望まれています。それに応えるには、奨学金制度を利用して医師や看護師として島に戻って医療・福祉に貢献できるようにしていく必要があります。

当院は築21年、建物や冷暖房装置、各種配管などに老朽化が見られます。そのため近い将来、建て替えねばならず、健全な経営努力と将来設計が必要です。

全国にコーヒー店を展開するスターバックスには、6つのミッションステートがあります。(1)お互いに尊厳と威厳を持って接し、働きやすい環境を作る、(2)事業運営上での不可欠な要素として多様性を積極的に受け入れる、(3)コーヒーの調達や焙煎(ばいせん)、新鮮なコーヒーの販売において、常に最高級のレベルを目指す、(4)お客様が心から満足するサービスを常に提供する、(5)地域社会や環境保護に積極的に貢献する、(6)将来の繁栄には利益が不可欠であることを認識する。

これらは理事長がいつもいわれていることと相通じます。86年5月、私は島根医科大学(現・島根大学医学部)放射線科に入局。以来、放射線専門医として20数年にわたり医療に携わっています。2004年7月に徳洲会に入職。内科医としての診療に自信はありませんでしたが、入職後は東京西徳洲会病院の板垣徹也院長(現・総長)の下で5年1カ月、専科に携わりながら救急当直、内科外来に従事し、内科も学びました。理事長の離島医療にかける情熱と強い信念に思い至ったとき、命を懸けて離島医療に挑戦することを決意し、10年9月30日に喜界徳洲会病院の院長に赴任。理事長から「晴天(せいてん)の霹靂(へきれき)」といわれましたが、その本意はいまだに謎です。

離島の研修医たちは厳しい環境下で逞しく成長していく

離島医療に携わって2年2カ月が経過。いまは療養、介護病棟、訪問医療を担当する76歳の田村俊秀先生と、週3日の産婦人科を担当する谷本憲保(のりやす)先生が常勤医です。外来、病棟、検診、訪問、老人施設や学校などの検診業務を常勤医と研修医で対応しています。常勤医が少ないため、初期研修医(宇治徳洲会病院)や後期研修医(湘南鎌倉総合病院、八尾徳洲会総合病院)に負担が重くのしかかっています。台風を含め厳しい気象条件で救急ヘリが飛べないこともあり、研修医は過酷な環境下で逞(たくま)しく成長していきます。彼らの力に負うところも多く、頭が下がる思いです。外科、小児科、整形外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、肝臓内科、リウマチ科、腎臓内科、皮膚科などは応援で対応している現状です。今後は、総合診療ができる家庭医の常勤化が望まれます。それだけに、榛原総合病院での家庭医療科の新設は大いに期待しています。

理事長は、私利私欲のためでなく人への愛と心で医療に臨むべきといいます。しかし実践は容易でなく、理事長の著作『生命だけは平等だ』を朝礼で読むのは、徳洲会の理念を職員に植えつけ、管理者としての自分に言い聞かせるためです。

弱っている人や困っている人たちのために、徳洲会の存在理由はあると思います。単なる自己満足のためではなく、社会を好転させる源になるよう、 皆で頑張りましょう。