德田たけし(衆議院議員 医療法人徳洲会常務理事)

徳洲新聞2012年(平成24年)1/30 月曜日 NO.810

基本的理念に立ち返り国民の皆さまのための社会保障を~消費増税の前に社会保障の抜本的制度改革こそが必要~

国民生活に大きな影響を与える社会保障改革について、政府で議論されています。

1月6日、政府・与党は「社会保障・税一体改革素案」を決定しました。この改革は、年金・医療・介護・子育ての政策自体の改革と、裏づけとなる財源の確保を行うことが目的です。

2011年の債務残高の対GDP比は、米国97.6%、英国90.0%、ドイツ86.9%、フランス98.6%、現在債務危機に陥っているギリシャは165.1%、イタリアが127.7%なのに対して、日本は211.7%と欧米諸国と比べて飛び抜けて高くなっています。

12年度予算案では、国債の新規発行額が3年連続で税収を上回り、財政悪化が一段と進行しています。

その最大の原因は社会保障費の増大で、01年度には81.4兆円だった社会保障給付費が、10年後の11年度には約108兆円と33%も増加しています。さらに、今年から団塊世代が高齢者( 65歳以上)の仲間入りをして受給者側に回るため、社会保障費の増大に拍車がかかります。

この社会保障費を賄うため、政府素案では消費税率を14年4月に8%、15年10月には10%に引き上げることが明記されました。政府は、与野党協議を経て2月に素案を「大綱」に格上げし、消費増税を盛り込んだ「税制抜本改革法案」(仮称)を3月末までに国会提出することを目指しています。

老後に安心を与える「社会保障と税の一体改革」は急務である

今、日本は急激な少子高齢化という人口動態の変化により社会保障制度が破綻の危機に瀕しており、「社会保障と税の一体改革」は急務です。老後の暮らしの基盤となる年金、世界的にも高いレベルの医療、高齢化社会に対応した福祉、この社会保障制度の持続と水準の維持に多くの国民の皆さまが不安を覚えるからこそ、消費も停滞し経済にも悪影響を与えています。

しかし、「社会保障と税の一体改革」を行うにあたり、優先すべきは国民の皆さまが安心と納得を得られる社会保障制度の再構築であり、消費税の引き上げ率や導入時期の決定ではありません。この機会に社会保障の問題や矛盾を解決し、老後の不安の根本的解消が重要なのです。

特に緊急性が高いのは、基礎年金の安定的な財源確保です。そのためにはまず、現在の社会保険方式から税方式への転換を進める必要があります。現行の年金制度は社会保険方式で、社会保険料を納めないと年金が受けられません。

また、老後に必要な年金の原資を同時期の現役世代の年金保険料で賄う賦課方式でもあります。少子高齢化に伴い年金給付が増大する中、このまま制度を維持するには現役世代の保険料が上昇します。そうなれば国民年金の保険料納付率は低下し、将来年金制度が破綻する可能性があります。

これに対して税方式は、基礎年金分の保険料を徴収せず全額を税金で賄います。日本国民は、65歳になれば最低保障年金を給付されることになります。少子高齢化時代には、年金制度の信頼性を高める税方式が優れています。年金制度の持続性確保のために、賦課方式から積立方式に移行していくべきだと考えます。

医療制度においても、公的医療保険の地域格差を解消するべきです。現在、市町村別に運営されている国民健康保険を、都道府県単位、そして、最終的には全国どこに住んでいても平等になるように地域格差を是正していくべきです。サラリーマン、自営業など職業別でも格差がありますので、これも是正する必要があります。

生活保護の医療費を見直す必要もあります。12年度予算案の生活保護費(国・地方分)は3兆7232億円で、費用を負担する国や地方自治体には大きな問題となっています。生活保護費のうち約46%にあたる1兆7077億円が医療扶助で、低額の年金の中から医療費を支払う高齢者などとの不公平性が指摘されています。増税を強いる前に、このような社会保障の抜本的制度改革の具体的な案を示し国民の皆さまにご理解いただくことを優先すべきです。

円高・デフレ対策を優先して社会保障の原点に立ち返ろう

消費増税が経済に与える影響もあります。現在のように、震災によるダメージや欧州危機、戦後最高値の更新を続ける円高、長引くデフレなど、経済環境が非常に厳しい中での増税は、個人消費や企業の投資意欲を減退させ、日本経済にきわめて深刻な悪影響を及ぼします。

多くの企業が、震災後の円高、電力の供給不足を受けて経営危機に陥り、大挙して海外移転を進めています。昨年6月には、折からの円高と電力供給懸念に対しトヨタ自動車の豊田章男社長が、「日本でのものづくりが、ちょっと限界を超えたと思う」とコメントして話題を呼びました。現在の物価高および円高は、日本経済の現状が耐え得る水準を明らかに超えています。

本格的な円高・デフレ対策を実行することにより、都市部と地方双方の景気を支え、再び日本経済を成長軌道に乗せなければ、いくら消費税を上げても社会保障制度を支えるだけの税収を得ることはできません。

「社会保障と税の一体改革」を行うにあたり、最も大切なことは国民の皆さまの理解を得られる社会保障制度改革です。

それは医療が「患者さまのため」なのと同じく、全ては「国民の皆さまのため」という原理・原則にのっとった改革でなければなりません。年金・医療・福祉の各分野で、特定の人々に対する既得権益やエゴがあれば国民の理解を得ることはできず、増税するにしても倒産や失業など社会的悲劇を招き人々を苦しめるものであってはならないのです。あくまでも国民の皆さまを幸せにするための「社会保障と税の一体改革」を実現していきたいと思います。

皆で頑張りましょう。