徳田たけし(衆議院議員 医療法人徳洲会常務理事)

徳洲新聞2011年(平成23年)1/31 月曜日 NO.759

「生命だけは平等だ」の理念と哲学は世界の医療を牽引する~日本の医療・福祉の充実と財政再建の両立がこれからの課題~

現在の日本は、医師の地域偏在と診療科偏在、救急医療への不安、介護提供サービスの不足、国民皆保険制度の財政基盤の不安定さなど、さまざまな医療問題に直面しています。

昨年、厚生労働省が行った調査では、医師の地域別および診療科別での偏在が深刻化しており、全国平均で現在の1.14倍の医師が必要とされています。地域的には、東京や大阪などの大都市圏の医師の充足率が高い半面、山梨、高知、青森など地方での医師不足が深刻です。診療科別では、リハビリ科、救急科、産科の順に医師不足の度合いが高くなっています。

救急医療に対する国民の不安も解消しなければなりません。1997年から10年間で、年間の救急搬送人員は327.8万人から481万人へと5割近く増えました。2006年には、奈良県で妊婦を乗せた救急車が多数の病院に断られ、妊婦が死亡する出来事があり、救急医療のあり方が問われています。

介護でも、高齢者だけの世帯や重度の要介護者に対する支援が不足しており、加えて介護従事者の不足もあり、多くの問題を抱えています。

現在の日本の高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は、世界で最も高い22.57%で、国連などの推計によると、25年には30%に達し、米国の18%、フランスの22%、ドイツの25%などを大きく上回るとされています。わが国の医療・福祉は、これからの超高齢社会に向けて、質・量ともに大きな向上が求められています。

社会保障の抜本的改革と財政再建の両立を図る方策を

わが国では、年金・医療・介護などに支出される社会保障費の増加は止まりません。昨年末に2011年度政府予算案が発表されましたが、一般会計歳出総額92兆4116億円のうち社会保障費は28兆7079億円で、実に全体の31%を占めています。

高齢化により社会保障費は毎年1兆円程度の自然増が予想され、現在35兆円の国民医療費が25年には67兆円に増加し、社会保障給付費全体では09年度の98兆円が、25年度には141兆円にふくらむと予測されています。

現在、国と地方の借金は973兆円で、5年後には財政破綻してもおかしくないきわめて厳しい状況です。今後も社会保障費が増え続けることを考えると、財政再建はわが国が直面する最大の課題です。菅直人政権では、歳入増加の目的で消費税増税を含む税制の抜本改革を進めようとしています。しかし、現行制度をそのまま維持すれば消費税を30%にしても不足します。

増税の前に、まず歳出で一番大きな割合を占める社会保障、特に医療・福祉の抜本的な改革が不可欠です。医療レベルを維持・充実させながら、社会保障費を抑制する効率的な医療制度が求められているのです。

厚労省は、これまで医師数と病床数を増やすと医療費が増加するとの考え方をもとに医療制度改革を行ってきました。たとえば、85年の医療法改正で、都道府県ごとに地域医療計画が策定され、各医療圏で病床数が制限されるようになりました。

しかし、その計画自体が地域の人口に比例してではなく、既存の病床数から立てられました。医療団体などの既得権益を重視した病床数の調整に重きを置き、地域に必要な病院整備をおろそかにしたために、本来の目的であった病床数の地域格差の解消は実現されませんでした。

05年度からは、社会保障費を毎年2200億円抑制する目標を決め、必要な社会保障経費を削減する政策が取られました。しかし、医師不足などの問題を放置して機械的に削減したため、医療崩壊は加速しました。

地域や診療科別の医師偏在を解消するには増員が不可欠で、さらに多くの看護師や介護従事者も必要です。「医師数を増やすと医療費が増える」という主張もあります。しかし、1990年から18年間で歯科医師数が34%増加し、診療所もコンビニより多くなったにもかかわらず、歯科医療費はほぼ横ばいで、競争でサービスは向上しています。病床数や医師数の制限は、かえって医療の充実や財政の面で大きな障害となっているのではないでしょうか。

徳洲会の理念と新しい医療モデルの構築が日本を救う

世界に誇るわが国の医療水準を高齢化時代に対応して充実させる一方で、社会保障費を抑制するには、一段と効率的な医療モデルの構築が必要です。それが私たちグループに求められる新たな使命だと考えます。

「いつでもどこでも誰もが最善の医療を受けられる社会を目指して」活動を続けてきた徳洲会は、24時間オープン・年中無休など新しい医療モデルに果敢に挑戦してきました。

医師の招聘など、さまざまな面で経営の難しい農村・離島にも病院を設立し、都市部に比べ高齢化率が高い地域の病院経営ノウハウをつくり上げてきました。今や奄美群島をはじめとする離島でしっかりとした経営基盤を築き、地域に欠かせない社会的存在になっています。

効率的な経営で社会貢献するのが徳洲会の特徴です。統計では、グループの施設がある地域では1人当たりの医療費が少なくなっています。06年3月から07年2月までの鹿児島県の1人当たり医療費の平均は46万7002円。最も少ない市町村は天城町の30万5013円、2番目は徳之島町の32万7514円、3番目は和泊町の33万199円、以下、知名町、伊仙町といずれもグループ施設が中心になっている所ばかりでした。医療費の低い上位10市町村のうち、実に8市町村にグループ施設があります。これは徳洲会が高齢化率の高い農村・離島で、効率的な医療を提供している証明です。

「生命だけは平等だ」の理念と哲学を海外でも実践する徳洲会は、「世界の厚生省」として世界の医療を牽引することが期待されているのです。

皆で頑張りましょう。