岡進(笠利病院院長)

徳洲新聞2009年(平成21年)7/13 月曜日 NO.680

離島・僻地の限られた医療資源に対する連携・支援に感謝 ~「何でも診察します」の中に誰にも負けない専門性を加えたい~

当院は今年3月、開院10周年を迎えました。昨年4月に院長として赴任した私は、最初に地域の患者さんの穏やかな性格に驚きを感じました。外来受診時に待ち時間がいくら長くても、診察時には医師に対するねぎらいの言葉をいただきます。そこには、都市部のクールな人間関係とは無縁の地域性とともに、離島の医療過疎の歴史から医師を大事にしなければならないという思いを感じます。徳洲会グループは奄美ブロックだけでも、7病院のほかにクリニックや老健など30施設をもち、地域の医療・福祉の一翼を担っています。

当院も地域での役割を考えながら、島で暮らす方々の思いに十分に応えていきたいと思います。現在、医療療養型70床で常勤医師1名と常勤歯科医師2名、職員80名ですが、グループ内外の連携・協力によって幅広い医療・福祉サービスを提供できるようになりました。特に奄美ブロックの中心施設である名瀬徳洲会病院からは、医師をはじめコメディカルの応援もいただいており、小病院の効率的な運営へのサポートに感謝しております。当院はこれまで、厳しい経営状態が続いていましたが、昨年4月から収益が増加し、ブロックの利益率ではいつも上位を占めるようになりました。

民間病院では、その存続のために一定の収益が不可欠です。特に当院のような療養型病院では、常に満床を維持することが最低条件となります。ただし、診療報酬が出来高制ではないので、満床状態でも医業収入増は期待できません。収益をさらに確保するには、外来患者さんを増やす必要があります。そのため当院では、外来診療で、内科・外科・歯科はもとより、専門性の高いペインクリニックと鍼治療を実施しています。

受付・看護師・薬剤師・医師の努力で患者さん増加を図る

今年の3月までの1年間に、星状神経節ブロック1416例、仙骨ブロック2180例、頚部硬膜外ブロック46例、鍼治療4748例を行いました。中でも星状神経節ブロックを重視しており、自律神経失調症、奄美に多い多汗症やアレルギー性鼻炎の患者さんに積極的に勧めています。また、漢方薬と耳鍼法を併用したダイエット治療も実施。現在では名瀬市内から来院される方が最も多くなりました。この成果については、本年6月の「第60回日本東洋医学会学術総会」で発表を行いました。

さらに、下肢静脈瘤に対する硬化療法にも力を入れるとともに、グループ内外の医師の協力を受け、眼科や皮膚科、耳鼻咽喉科などの特別診療も行っています。このように外来診療により専門性の高い治療を加えたことで、一層外来患者さんの数が増えたと受け止めており、以前に比べると倍増しています。

これらの外来患者さんの増加は、医師の力だけで実現できるものではありません。現在の医療制度の下では、全ての薬や治療に関する価格は、ほとんどどの施設でも同じようなもの。このことは皆さんもよくご存じでしょう。他業種では、商品を安く提供することで集客力を上げる方法がありますが、人の命を扱う病院ではそうはいきません。

お客さんがまた来られるような選ばれた施設となるためには、サービス業界では病院が一番厳しいとの認識が必要です。まず病院受付で好印象を得ること。これはどの施設でも接遇研修などで徹底して行っています。次に差が出るのが、外来看護師です。患者さんは具体的な病気のことや、聞いてほしいことを訴えてこられます。ここでの看護師とのやりとりで、患者さんは治療や医師に対してのイメージが湧くと思います。しかし、病院で収益増の最も大事な仕事を任されている外来看護師が優遇されているとはいえません。大半が子育ての最中で夜勤が不可能です。病棟で夜勤を行う看護師に、「あなたはやる気があって接遇も上手だから、ぜひ外来に来てもらいたい」とは私の口から絶対に言えないのです。

夜勤手当がなくなり経済的に不利になるからです。外来に人材を集め、接遇をよくすること、具体的には夜勤手当と同額程度の処遇をすることで、外来はより活気にあふれるでしょう。

グループに不可欠な徳洲会の理念という共通の価値観

医師がサービスに徹するのは当たり前のこと。患者さんの話を十分に聞き、よく説明し、自分の技量を最大限に発揮する。患者さんに選ばれる病院になるには、外来の受付事務と外来看護師、医師の三者の連携と努力が必要です。それが外来患者さんのみならず、入院患者さんの増加につながると考えています。

企業として活動していくには利益を出し、組織として自立する必要があります。その利益は患者さんに還元するために設備投資に回され、さらなる医療サービスの充実へとつながります。

小規模病院単独では、特に離島・僻地では病院の存続すら難しい状況ですが、同じ価値観をもつグループの仲間が助けてくれています。その価値観の源が、「生命だけは平等だ」という徳洲会の理念であり、誰も否定できない判断基準となります。

この徳洲会の理念を職員一人ひとりが判断基準とし、毎日の朝礼で自分の胸に刻み、その物差しと方向性で業務を改善していけば、必ず患者さんに信頼される病院になるはずです。

今まで徳田虎雄理事長は、直言の中でもそのことを何度もわかりやすく啓示されています。

「住民参加・住民監視・住民管理」、「第一に理念の共有、第二に教育・躾、第三に数字合わせ」、「整理・整頓・清掃・清潔・躾の5S」など、その表現はさまざまですが、目的は一貫して弱者のための医療の実践にあります。日々の医療業務から実感できることは乏しくても、患者さんが笑顔で病院から帰られるときに得られる充実感、達成感を覚えることができれば、少しは成長した自分を自覚することができるのではないでしょうか。

皆で頑張りましょう。