満元洋二郎(名瀬徳洲会病院総長)

徳洲新聞2008年(平成20年)10/27 月曜日 NO.644

“奄美ヘルシーリゾートアイランド”の実現に向けて ~「弱きを助け、悪しきをくじく」の慈愛の念を基本に~

私たち奄美ブロックの職員は、徳洲会の唱える「生命だけは平等だ」の理念を実現するために「何時でも、何処でも、誰もが最善の医療を受けられるような社会にすること」の実践を目標に日々努力しています。奄美大島の南には、瀬戸内病院の前身の加計呂麻病院があった加計呂麻島、さらには請島・与路島など?離島の中の離島?といわれる地域があり、そこには奄美でも最も厳しい医療環境があります。その地域の方々に最善の医療を提供するにはどうすべきかが、私たちの最大のテーマです。

私が奄美に戻った最大の理由は、父が肺がんを患い床に臥したからです。「内地で手術をするからおいでよ」といくら勧めても、父は頑なに「島から絶対に離れない」と言い続けました。このような島の人の感情を、無視するわけにいきません。

奄美に暮らす人の平均所得は年200万円以下です。わずか60床の瀬戸内病院で、出雲病院の田原英樹院長、名瀬病院の砂川剛外科医長の協力を得て、鏡視下の大腸切除術、胃切除術、食道切除・再建術、ヘルニア根治術などを行ったのも、こうした理由からです。そしてこれらの手術がすべて成功しているという事実もあります。患者さんを集め大病院で治療することも大事ですが、医師がチームを組み、移動して治療することも効果的です。このように離島・僻地の患者さんの立場から考えると、いろいろな構想が生まれます。

まず、医療では医療講演を通じての徹底した予防医療の普及、最新の医療機器を投入して確実な診断・最善の治療を行うこと。さらに電子カルテの導入で、奄美ブロック全体でネットワークを組み、診療内容・投薬状況・画像診断を参照でき、緊急時にはドクターヘリが出動できるようにしていきます。

福祉の充実に対しては、福祉施設の増設、在宅介護・医療の実施、病児保育・学童保育・24時間保育などが可能な託児所の設置などが挙げられます。

奄美群島での、英国が提唱した「ゆりかごから墓場まで」の医療・福祉の実現が目標です。そのためには、医師会をはじめ他の医療・介護グループとの協力と、医療資源を有効に活用するネットワークが不可欠です。

徳洲会の理念実現は、私たちの行動と実践哲学にこそある

陽明学に知行合一という言葉があります。いくら知識があっても、その知識に行動が伴わなければ何の意味もなさないということです。よいことを言っても、それを実行するとなると本人ではなく、他人に任せる人がいます。そのような知識人・政治家が増えているように思われます。徳田虎雄理事長は単なる言葉だけでなく行動し様々なことを成し遂げてきました。能宗克行事務総長が先の「直言」で言われたように、鹿児島県が公表した平成18年度の県下49市町村国保加入者1人当たりの医療費は、安い順に天城、徳之島、和泊、知名、伊仙。上位15位までに奄美群島10町が入り、最も低いのは天城町の30万5013円。一番高い湧水町の62万87円に比べれば半分以下で、県平均の48万420円に比べて3分の2以下という事実があります。

また、奄美群島の人口約12.1万人の主な6島に、徳洲会は病院7、クリニック5、老健2、グループホーム8の他、有料老人ホーム、看護ステーション、居宅介護支援事業所など計30の施設を有し、CT8台、MRI6台を配備し、バス30台で患者さんを送迎しています。職員数は1700人を超え、経済効果は97億円にも達しています。

奄美ブロックで作り上げた医療モデルを全国に広めていく

05年度の奄美群島の高齢化率は27.7%。全国平均の20.1%を大きく上回っていますが、1人当たりの医療費は県平均の3分の2以下に抑えられているのです。これを全国展開することができれば、医療費を10兆円あまり削減することができ、後期高齢者医療の問題も解決できるようになるでしょう。

離島・僻地では医師、看護師等の人数が不足しており、最善の医療を行うためには最新の医療機器を導入しなければなりません。そして無駄な治療や手術、検査、薬漬けをやめ、適正な医療材料や薬品価格での低コストの医療を経営努力で実現することが求められます。そのためには、自立した病院・診療所・施設を目指し、この厳しい医療環境の中で生き抜いていく覚悟がいります。病院経営を考える場合、患者さんと職員、組織の利益の3点を柱とすることが必要です。組織の利益だけを考えると儲け主義となり、患者さんから見捨てられてしまいます。やはり患者さんの利益を原点として、三者の落としどころを考えるのが大切だと思っています。患者さんのニーズで病院を変化させることができ、黒字経営を維持できると思うからです。

医療講演に加え、戸別訪問も重要です。白衣を脱いで話をすると、意見や批判を率直に話していただけて病院に対するニーズがよくわかり、医師でない一個人としての力が試されます。

やはり人に対しては謙虚にあるべきで、何が必要かを理解したら行動に移さなければなりません。私たちは離島・僻地にあって体感したことを実現するために努力しているのです。官僚が机上で考えただけの医療政策に屈服することはできません。

私たち奄美ブロックの職員は、徳田理事長の提唱する「ヘルシーリゾートアイランド構想」の実現に努力していかなければならないと考えます。日本各地の医療と福祉を必要とする人たちだけでなく、その介護をする人たちも含めて、皆さんに奄美で心身を癒していただくことができればどれだけ素晴らしいことか。物事には本末があります。何が根本で何が枝葉末節か理解しなければなりません。論語に「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」とあります。仕事は楽しく、遊びは真剣に。皆で頑張りましょう。