田原英樹(出雲徳洲会病院院長)

徳洲新聞2008年(平成20年)8/25 月曜日 NO.635

何があっても「患者さんに迷惑がかからないこと」が鉄則 ~理事長の患者さんへの気持ちとグループの結束力を知る~

徳洲会を知ったのは、医学部を目指していた中学か高校の頃です。徳田虎雄理事長の「24時間、年中無休の病院」の理念を知り、すごい人がいるものだなと正直感心し、医師は大変な仕事だと思いました。大学在学中は徳洲会と無縁な生活を送っていましたが、大学医局に入局後、同期である満元洋二郎(現・名瀬徳洲会病院総長)が5年前に徳洲会に入り、にわかに徳洲会が身近な存在となりました。  そして3年前に、彼から出雲地域にも徳洲会病院ができるので来ないかと誘われました。日本で最初に生体肝移植をされた恩師の永末直文先生が退官されるのが決まった後で、私も大学を出ようと思い、次の病院を探していたところでした。 「徳洲会は医師を使うだけ使って放り出す」との噂があり、同僚からはやめたほうがいいと心配されましたが、現に満元が入職して元気に頑張っている姿を見て入職しました。その年の秋頃、初めて理事長にお会いしました。その時の印象は、表情は穏やかであるにもかかわらず、目は爛々と輝き、徳洲会グループ総帥としての厳しさと同時に、会話の中に常に患者さんへの配慮が感じられました。  出雲徳洲会病院は平成18年4月1日にオープンし、今年で3年目となりました。今年3月に前院長が辞任され、看板の整形外科がなくなるかもしれないという大変な時期に院長に任命されました。院長に続き、看護部長、師長3人、MEと透析看護師全員が4月末にかけて退職。単体の病院なら、整形外科外来も透析も閉鎖せざるを得ません。

「チーム出雲」を合言葉にして患者さんのために全員が結束

この危機的状況に対し、理事長が「患者さんに迷惑がかからないように」と働きかけてグループを挙げて応援してくださいました。おかげで整形外科外来、透析も閉鎖することなく、現在では透析登録数は昨年より2倍近くまで伸びています。今回ほど、理事長の患者さんに対する気持ち、グループの結束力を感じたことはありません。また、どの病院もぎりぎりで頑張っているのに、応援を出すことがどれほど大変なことか、考えただけでも胸が熱くなります。本当に感謝の気持ちで一杯です。  徳田理事長の熱い思いや他病院の皆さんのご尽力に報いるためにも、一日でも早く出雲病院がひとり立ちできるようにこれまで以上に努力してまいります。  5月には医療療養型病床をオープン、急性期から慢性期の患者さんまで、多くの方に当院を利用していただけるようにしました。これにより広く県西部や鳥取県との県境から患者さんが来られ、そのご家族が当院で検査を受けられるといった具合に医療圏の拡大につながりました。  これまで当院の8時会は朝の報告会で終わることが多かったのですが、他病院では当然のことでしょうが4月からは直言を幹部全員で読んでいます。徳田理事長や幹部の方々の思いをスタッフに知ってもらい、最後に自分が各部署の長としての心構えを説き自覚を促すという、精神面に重点をおいた8時会へと変えていきました。また病棟や事務室などに足を運び、皆と話すことで現場のモチベーションを上げ、方針をダイレクトに伝えるよう留意しています。  3月までは各病棟から文句が出ていましたが、4月からはスタッフを交流させ、「チーム出雲」を合言葉に、時間の空いた時は忙しい部署を手伝うように協力し合い、各部署の垣根を低くするようにしました。他の徳洲会病院では当たり前のようにできていることが、当院でもやっとできるようになってきました。  また、4月以降は入院患者さんと内科の高齢患者さんの増加による、仕事量の増大、内容の変化で戸惑い、不平不満も出てきましたが、「患者さんのため、職員のため、経営のため」といった3つのバランスを取ることがいかに大切かを説明し、とにかく今はまず頑張って前に進もうと訴え、最近では経費節減のため部屋の冷房を止める理事長の姿勢について話をしています。

徳洲会のノウハウを島根の地域医療と福祉に生かしていきたい

我々が将来に向けて成長していくためには、目標が大事です。そこで、 (1) 患者さん満足度で葉山ハートセンターを抜いて1番になる。 (2) 現状に合った単月の医業収入の目標額を設定。 (3) 秋には新病棟を開棟。 これをほぼ毎日8時会で念仏のように繰り返し唱えて、幹部職員の意識づけをしています。そして目標達成のための具体的なプランを立て実行に移しています。  当院の経営を軌道に乗せると同時に、島根全体の医療を考えたいと思います。県東部は医療が比較的充実していますが、西部は大学の派遣医師の引き揚げなどにより過疎化の一途を辿っています。また隠岐島も医師不足。徳洲会の離島応援のノウハウを島根でも生かし、地域医療を充実させていきたいものです。  北京五輪で柔道の谷本選手の決勝戦を見て、相手の技を我慢して踏ん張った直後に切り返しての見事な一本勝ちは、まさしく柔よく剛を制する柔道の醍醐味でした。試合後のインタビューは、怪我をしてまた柔道ができる喜びや、初心に帰って一から出直そうという謙虚さ、自分を支えてくれた周囲への感謝の気持ちにあふれるもので、目頭が熱くなるのを感じました。金メダルという大きな目標に向かっていくには、相当な努力をされてきたことでしょう。苦しい練習を乗り越えた者だけが得られる喜びは、格別なものです。  自らを振り返り、そこまで努力しているかを問えば、そうでもないように思えます。昔、すぐさぼりたがる性格を見かねて、永末先生が贈ってくださった言葉は「初心忘るべからず」でした。研修医の頃の己の未熟さを恥じた思いを忘れずに日々精進しなさいとのお言葉ですが、まだまだのようです。五輪選手の姿に学びつつ、一層自分を奮い立たせていきたいものです。  皆で頑張りましょう。