直言
Chokugen
Chokugen
直言 ~
大城 吉則(おおしろよしのり)
中部徳洲会病院(沖縄県) 院長
2025年(令和7年)03月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1482
「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」は貧困、飢餓、自然破壊による気候変動など、国際社会が抱える問題を解決して、“持続可能な世界”、“誰一人取り残さない社会”を実現するために、2015年9月の国連サミットで採択され、30年までに、その達成を目指す国際社会の共通目標です。国連で採択されて以後、多くの企業が、SDGsの理念に沿って持続的な成長を目指すようになり、一般にも認知されるようになりました。
SDGsの達成のために提唱された17項目のゴールの中で、医療に関わるものとして、③すべての人に健康と福祉を、⑧働きがいも経済成長も、⑩人や国の不平等をなくそう、⑪住み続けられるまちづくりを、⑰パートナーシップで目標を達成しよう――があります。これらは、徳洲会グループの基本理念である“生命だけは平等だ”、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会の実現」に合致するものと考えております。
病院運営でも持続可能な成長・発展は必須で、それには規模の拡大(病床数)、職員の満足度・モチベーションの向上、医療の質の向上が不可欠です。
私が21年1月に当院の院長に就任した当時は、新型コロナウイルス禍の真っ只中で、病院の成長・発展のグランドデザインを考える余裕はありませんでした。沖縄県は他県に比べ感染拡大の規模が大きくなる傾向にあり、爆発的に増加する患者さんへの対応、困惑する高齢者施設への支援、そして行政からの要請による感染病床の増床など、病院の総力を挙げて対応しました。コロナ禍における実績が評価されたこともあり、当院の病床数は368床から408床へ増床が段階的に認可され、公的病院を除く県内の医療施設の中では最大規模となりました。さらに、沖縄県本島の中部地区の自治体からは、病院新設(200床規模)の打診もあり、徳洲会グループ本部と密接な連携を取りながら、この計画の実現に歩を進めていく予定です。
当院の看護部は21年から特定行為看護師の育成を開始しています。医師が行う一定の医療行為(末梢挿入型中心静脈カテーテル〈PICC〉挿入、胃瘻・膀胱瘻交換、気管カニューレ交換、褥瘡壊死組織の除去など)を、トレーニングを受けた看護師が行うもので、看護師による迅速で高度な医療処置、タスクシフト(業務を他職種に移管・共有すること)による医師の負担軽減が主な目的でしたが、看護師のスキルやモチベーションの向上にも大きく寄与しています。会得した高いスキルで活躍の場が広がった先輩看護師の後ろ姿に、若手看護師も刺激を受ける良い循環を生み出しており、看護師の離職率の改善にもつながっています。
医療はさまざまな領域で急速に技術革新が起き、医療の質も向上しています。とくに、手術領域では開腹手術から腹腔鏡下手術、ロボット支援手術へと低侵襲化の潮流は止められません。ロボット支援手術の保険適用が拡大され、当院でもロボット支援手術を増やしてきました。手術の増加にともない、「da Vinci Xi」1台では対応が困難になってきたこと、さらなる低侵襲手術、審美性の向上を目指し、24年12月に沖縄・九州地方では初の単孔式手術支援ロボット「da Vinci SP」を導入しました。この1月にはda Vinci SPを使用した1例目の手術を行い、今後、消化器外科、婦人科領域でのda Vinci SPによる手術件数の増加が期待されます。
また、心臓血管外科領域でも低侵襲化が進んでおり、当院では小切開低侵襲心臓手術(MICS)に加え、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)も導入し、県内3番目の認定施設になりました。脳外科では急性脳梗塞患者さんに対するカテーテル血栓回収術により、重篤な後遺症から多くの患者さんを救済していますが、沖縄県の北部地域からもヘリ搬送される急性脳梗塞患者さんが増えており、当院脳神経外科診療の地理的範囲が拡大しています。
このように、その時々の課題、医療需要に真摯に向き合うことで、必然的に規模の拡大、職員満足度・モチベーションの向上、医療の質の向上に寄与することになり、病院の持続的な成長・発展につなげることができると考えています。 皆で力を合わせ、頑張っていきましょう。