直言
Chokugen
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直言 ~
山上 美恵子(やまがみみえこ)
一般社団法人徳洲会 看護部門 人事・総務部 部長
2024年(令和6年)02月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1427
徳洲会看護部門が新体制となり1年半を迎えました。思い起こせば本部看護部門のあり方・組織体制と業務の見直しを、メンバーで何度も話し合ってのスタートでした。
当部門は八木沼正子本部長を中心に「人事・総務部」、「教育部」、「業務部」、「地域部」の4部門で構成しています。省みると、私は看護部長に就いてから現在まで、人事管理に翻弄されてきたように思います。看護管理者の役割は「看護の対象のニーズと看護職の知識・技術が合致するよう計画し、財政的・物質的・人的資源を組織化し、目標に向けて看護職を導き、目標達成度を評価する役割の者の総称をいう」(日本看護協会)と記されています。人的資源の組織化は、最も重要で難儀な課題と言っても過言ではありません。
2006年の診療報酬改定で7対1施設基準が設けられ、看護師争奪戦が繰り広げられました。看護師職能の位置付けが評価されたとも言えますが、管理者の能力が試されることにもなりました。事業計画達成のために必要な人員を確保すると同時に、看護の質を保証するためには離職防止が重要となります。しかし、地域偏在化している病院には容易ではありません。だからこそ、都市部で看護師を確保し、離島・へき地への人的資源の投入を継続的に行うことが、徳洲会の看護管理者の責務だと思っています。
岸和田徳洲会病院の看護部長だった当時の私が、組織全体を考えるようになったのは、17年に東上震一院長(現・理事長)に機会をいただき、大阪市立大学大学院(現・大阪公立大学)の経営学研究科前期博士課程グローバルビジネス専攻に進学したことがきっかけです。徳洲会や他法人の歴史を調べるに連れ、徳洲会の理念に対する信仰にも似た思いが増しました。当時、徳洲会は組織改革を行っている最中であったため、課題研究論文のテーマを「理念を再構築する看護管理者の使命~非営利法人の100年ブランド戦略~」としました。修了後5年が経過し、今、8万字の論文を少しずつ実践できる立場となりました。約1万5,000人の看護職員が「徳洲会で良かった」と胸を張って言える組織運営と価値創造を目標としています。
看護管理者には「聴く力」が必要です。部下の意見や不安、悩みなどを聴き続けるには随分、忍耐力が要ります。しかし、それらを受け止めて緩和できれば、人に優しくなれます。人とは、もちろん患者さんも含みます。人間関係の良い職場は人が離れません。また、聴く「場」つくりも管理者には求められます。場のない組織は一人で考え込み、陰で語り、問題が表出することなく、気が付けば人は去っています。会議や委員会など各病院には多くの場がありますが、自由に語り合えないならば、決定事項を紙やメールで発信すれば事足ります。ファシリテーション(議論のスムーズな進行)ができない集まりは、有意義ではありません。管理者や委員長は、意識してファシリテーターの役割を担ってほしいと願います。
巨大グループに成長した徳洲会では、どのようなスキルでも看護職員が活躍する場所があります。縁あって徳洲会に入職した人を安易に離職させず、目標管理の中で働き続けられるように、管理者は支援してほしいと思います。人間関係やハードワークに折れそうな看護師を早期に察知し、環境を変え看護の楽しさや喜びを呼び起こさせるよう、濃密なコミュニケーションを大事にしてもらいたいです。
今年度は離島・へき地13病院へ80人枠、湘南大磯病院へ30人枠の看護師支援を依頼し、100%を上回る達成率で推移しました。短期でのブロック内支援体制も実施できました。また、3カ月ごとに、支援する側の管理者が、受ける側の管理者にZOOMを活用し面接する機会を設けてもらいました。支援者の意見には、双方の業務改善や意識改革のヒントが多くあり、情報交換・共有の有効性を実感できました。
次年度からリフレッシュ休暇が始まります。各部署でカレンダーを広げ、「私はここで取りたい!」、「この月に家族と旅行を計画します」と笑顔で語り合う場面を想像し微笑んでいます。どんな状況でも互いに支え合い、豊かな心を育める徳洲会看護部へと成長できるように、皆で頑張りましょう。