徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

医療法人徳洲会 理事長
一般社団法人徳洲会 理事長
東上 震一(ひがしうえしんいち)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

東上 震一(ひがしうえしんいち)

医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長

2024年(令和6年)01月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1425

病院運営の停滞乗り越える手段
徳洲会が歩んできた歴史の中に
救急断らず目の前の患者さんにベスト尽くす

昨年10月からコロナ補助金が、ほぼなくなり、徳洲会グループの運営状況はコロナ後の新たな局面に直面しています。具体的に言うなら、単月の総医業収益と最終利益との乖離が著しいということです。これは前回の全国セミナーでも問題点として指摘しましたが、非常に高額なデバイス(医療機器)や薬を使用する治療法が、それぞれの分野で、大きな比率を占めるに至っている影響かもしれません。

従来では総医業収益というものは、その病院が(あるいは徳洲会が)提供した医療の“量”と“質”を直接反映するものと捉えて大きな齟齬はなかったのですが、高額な医療材料を必要とする治療法が増えてきた場合には、注意が必要です。

総医業収益は伸びているが 利益率は低迷している状況

たとえば大動脈弁狭窄(大動脈弁が硬くなって開きにくくなる病態)という心臓弁膜症がありますが、この治療法は、従来から心臓外科医が胸を開いて硬くなってしまった弁を切除し、人工弁に付け替える大動脈弁置換術という開心術が一般的でした。しかし最近ではカテーテル操作で、新しいステント付き人工弁を留置するだけで終わる経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)という治療法が開発され、急速に広まっています。患者さんにとっては心臓を止めることも、胸を開くこともなく、弁置換術と同等の治療が完結するわけですから、信じられないような医学の進歩と言えます。ただ、この治療法の場合、病院が医療費として請求するのは、1件あたり約500万円、その総額は従来の大動脈弁置換術と大きな差はありませんが、TAVIの場合、デバイス(新しいステント付き人工弁)料が約450万円と非常に高額で、保険請求の実に90%程度が材料費ということになります(従来手術での人工弁費用は約100万円)。

高額な医療材料使用に裏打ちされた総医業収益の伸びは、徳洲会全体の運営状況を評価する時、注意を払うべき事象と考えます。手術リスクの高い患者さんにとっては、圧倒的な福音でもあるTAVIという新たな治療法を、制限しようというものでも、ましてや否定する議論でもありません。しかし医業収益の伸びが今までのように、それぞれの医療チームが力を合わせて頑張った結果としての伸びと、単純には分析できない警鐘として捉えていただきたい議論です。

総医業収益は確実に伸びているのに、利益率は低迷している――。これが現在の徳洲会グループが直面している状況です。この頭打ちの閉塞を乗り越えていくためには、どうすればいいのか、画期的な手法など、あろうはずもなく、結局、基本に立ち返ること、自分たちは今まで、どのようにして、さまざまな困難を乗り越えてきたかという基本に立ち返ることだと思っています。

弱い人や病める人を助け 共に苦労する仲間を守る

「救急を断らない」。この精神を大切に守り、いかなる時も目の前の患者さんを第一に考えベストを尽くす――。考えてみれば、私たちの基本は、これだけです。しかし救急を断らないということは、新入院の増加につながり、いかなる救急からの入院要請にも応えようとすれば、病床の回転率を高める必要があります。結局、許可病床を使い切ることにつながっていくのです。徳洲会は、限られたスーパードクターの力を頼りに成長してきたわけでもなければ、巧妙な経営理論を駆使して運営してきたわけでもありません。いつの時も、愚直に弱い立場の患者さんの側に立って、救急医療に取り組んできたのです。「救急を断らない努力」、「許可病床を使い切る努力」。これが現在の閉塞状況を乗り越えていくことになると確信しています。

徳洲会の存在目的は、決して利益を追求することではありません。弱い人、病める人を助け、社会のためになって、そして共に苦労する仲間を守ることです。徳田虎雄・名誉理事長は、徳洲会職員の尊厳を、その生涯にわたって守ると宣言されています。

徳洲会グループを構成する多くの仲間たちは、それぞれ考え方も違い、持ち味、才能もさまざまだと思います。しかし同じ理念でつながる仲間たちが、でこぼこの才能を寄せ合わせて、欠点を補い合い、徳洲会という一つの“偉大なるもの”をつくっていきたいと考えています。

皆で頑張りましょう。

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