徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

笠利病院(鹿児島県) 院長
岡 進(おかすすむ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

岡 進(おかすすむ)

笠利病院(鹿児島県) 院長

2022年(令和4年)09月05日 月曜日 徳洲新聞 NO.1354

離島・へき地の医師不足解消の切り札に
すべての医師がローテートによる勤務を
病院の質を保ち医師の成長も促す機会に

私は長崎大学医学部を卒業後、同大第二外科に入局し消化器外科を学びました。30年間、医局の関連病院をローテートし、その後、徳洲会に入職しました。徳洲会では診療所、ふたつの小規模病院を経て、笠利病院に院長として赴任し14年が過ぎました。当院は鹿児島県の離島、奄美大島の北部に位置します。奄美空港は車で約10分の至近です。この空港はハブ空港で、鹿児島には1日10便、東京、大阪、福岡、沖縄にも直行便があります。格安航空会社も2社あり、私がこれまで勤務したなかで最も交通の便が良い所です。

神経ブロックなど痛みの治療 年間で2000例程度を実施

離島の小規模病院はどの病院も医師不足です。当院(医療療養型89床)も常勤医師は私を含め4人(医科2人、歯科2人)です。歯科医師のうち1人は宇治徳洲会病院(京都府)から2カ月ローテート、医科医師のうち1人は当院での勤務が週3日、週2日は隣島の徳之島にある伊仙クリニック、あまぎユイの里医療センターに勤務しています。非常勤医師は週1回が3人、2週に1回が7人、月1回が3人、不定期が約7人で、専門外来や当直などを行っています。これら約20人の非常勤医師によって医師の定員が守られています。

大学医局員は、若い時は半年から1年間でローテートします。4~5年経つと2~3年間のローテートとなります。これにより関連病院の質を保ち、医局員も多くの病院を回ることで成長します。離島・へき地の病院でも嫌がる医局員はまずいません。そこにずっととどまるわけではないからです。この大学医局のローテートを徳洲会でも取り入れるべきだと思います。離島・へき地の病院への応援は超規模・大規模・中規模病院中心に行っていますが、可能な限り、これら全病院の医師が離島・へき地でローテート勤務を行うのはどうでしょうか? 期限が来れば異動できるのですから、そう負担ではないと思います。

武蔵野徳洲会病院(東京都)院長の桶川隆嗣先生が「徳洲会幹部になる職員は離島・へき地勤務が必須であってもいいのではないかと思っています」と、「直言」(7月18日発行号)に書かれています。これを発展させ、すべての医師がローテート勤務を行えば、離島・へき地の勤務も当然ということになります。

当院は人口約5400人の笠利町で、唯一入院できる病院です。入院治療には制限がありますが、外来は急性期病院と同様に行い制限はありません。ここで私は医師ひとりでできる医療技術を身に付けました。まずペインクリニック(痛みの治療)です。星状神経ブロック、頸部硬膜外ブロック、仙骨ブロック、大腰筋筋溝ブロックなどを年間2000例ほど行っています。これ以外にも下肢静脈瘤硬化療法、陥入爪ワイヤー療法などを実施しています。ペインクリニックにより、疼痛コントロールを積極的に行っていますので、当院に勤務となれば、これらの技術の習得が可能です。

奄美群島には、各島に徳洲会病院があります。内科、外科、整形外科などはありますが、循環器科で血管造影ができる医師が必要です。奄美大島にある名瀬徳洲会病院にはその設備がそろっています。次に呼吸器内科の専門医で気管支鏡ができる医師が必要です。ローテートが確立されれば、これらのことは容易と思います。

電子カルテの導入に際して 多くの関係者の協力に感謝

当院では7月より電子カルテがスタートしました。3カ月前から準備を始めましたが、いざ開始となると大変です。外来ではメディカルクラークが横にいて操作してもらっています。当院のクラークのほかに大隅鹿屋病院、名瀬病院からも応援をいただきました。この派遣がなかったら病院業務は大混乱を来したと思います。引き続き名瀬病院より応援をいただくことになっています。外来での投薬がすぐに薬局に届きますので、患者さんの待ち時間が短縮しました。また投薬に問題があれば、すぐに薬局から問い合わせがあり、薬局長と相談します。

電子化で看護師、薬剤師、事務職員らが恩恵を受けています。電子カルテ化を承認いただいた執行理事会、導入に際して尽力してくださった徳洲会インフォメーションシステムならびに、大隅鹿屋病院、名瀬病院をはじめ立ち上げに協力いただいた病院や関係者の方々に、心より御礼申し上げます。今後とも皆で頑張りましょう。

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