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直言

Chokugen

医療法人徳洲会顧問(麻酔科医師)
落合 亮一(おちあいりょういち)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

落合 亮一(おちあいりょういち)

医療法人徳洲会顧問(麻酔科医師)

2022年(令和4年)06月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1343

20年ほど前にタスク・シェアを導入し
在院日数短縮や手術室運営デジタル化
今日の「医師の働き方改革」に先鞭をつける

昨年12月から医療法人徳洲会にお世話になっています。1979年に慶應義塾大学医学部を卒業し、以来40年以上にわたり麻酔科医として活動しています。

2003年、東邦大学医療センター大森病院の麻酔科が崩壊するという一大事がありました。病院の麻酔科がなくなるというのは、すべての急性期医療が一瞬にして停止することを意味します。当時の野口鉄也理事長が学生時代の恩師だったこともあり、その再建をお手伝いすることになりました。麻酔科をゼロから再建する具体的なプランを立てる段になり、卒業以来、初めて麻酔科診療について深く考えました。その結果、麻酔科医だけでは何もできないという非常に簡単な事実に気付き、驚きました。そこで看護部、臨床工学部、薬剤部、歯科口腔外科、理学療法科、事務部に再建の協力をお願いしました。これは20年近く前の話ですが、タスク・シェアを行ったことになります。その後、「周術期センター」という新しい部署を創設していただき、手術や麻酔に関連する診療科横断的な機能を集約して、高効率化を図りました。

看護師の特定行為研修 パッケージ化にも寄与

とくに重点を置いたのが「術前リスク評価」と「術後鎮痛チーム」です。日本麻酔科学会の施設認定を得るには、毎年、麻酔台帳を提出する必要があります。年間200万件余りの全身麻酔に関連した情報が集約されますが、偶発症調査に力点が置かれています。2000年代のデータによると、重大な合併症が年間2600件前後生じた結果、850件余りの麻酔関連死亡につながりました。しかし、麻酔自体が原因であったものは、ごくわずかで、術前より合併する慢性疾患が原因の60%でした。つまり治療中あるいは未治療の慢性疾患に対応できる体制を構築しなければ、安全な周術期管理は難しいことが明らかとなったのです。そこで看護師、薬剤師、歯科衛生士が連携しリスク評価を行い、入院前に内科的な介入を行うことにしました。

また、手術後の疼痛対策には、痛みの情報を連続的に捉えなければ正しい評価と対応ができません。そこで、PCAポンプという鎮痛専用ポンプを使用することで、患者さん自身が積極的に鎮痛をコントロールし、その情報をデジタル化したかたちで解析できる環境を導入しました。全身麻酔で手術を行った患者さんの35%前後が、こうした積極的な鎮痛方法を必要としましたが、痛くない術後経過が実現できました。

こうしたチーム医療によるタスク・シェアを進めることで、手術症例の平均在院日数を2・5日短縮できました。またチームに加わった用度課、医事課の事務スタッフは手術1例ごとの収支差額を算出することで、在庫管理の精度向上、手術室の増改築中の経営プラン策定など、手術室運営のデジタル化を可能にし、これも病院経営を考える際の大きな柱となりました。この活動は後に日本麻酔科学会の「周術期管理チーム」プロジェクトに発展し、看護師の特定行為研修のパッケージ化や、今日の「医師の働き方改革」でのタスク・シェア/シフトにつながる結果になっています。

越国で周術期プロジェクト 厚労省の新興国支援事業に

16年度には厚生労働省の新興国支援事業として、ベトナムでの周術期プロジェクトが採択されました。ベトナムでの教育を私が担当するとともに、毎月2人のベトナム人麻酔科医を大森病院に迎え、診療の実際を見学、学習していただき、ベトナム麻酔科学会の最優先事業にもなりました。私の定年後、海外支援事業をさらに拡大する予定でしたが、コロナ禍のため残念ながら不透明な状況です。

昨夏に開かれた日本呼吸療法医学会で、長年の知己を得ている岸和田徳洲会病院顧問の篠﨑正博先生にバッタリお会いし、「落合は今、何をしているんだ」と問い詰められました。当時は何もしていないことがバレてしまい、安富祖久明理事長との面談の機会をいただきました。現在、一般社団法人徳洲会で「働き方改革」導入にご協力したり、電子カルテに眠るビッグデータの利活用に悩んだり、湘南鎌倉総合病院外傷センターでお手伝いをしながら毎日を過ごしています。患者様のために、徳洲会の皆様のために、何かお役に立てることがあればと感じる今日この頃です。今後とも、よろしくお願いを申し上げます。

皆で頑張りましょう。

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