徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

千葉徳洲会病院 院長
鶴田 好彦(つるたよしひこ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

鶴田 好彦(つるたよしひこ)

千葉徳洲会病院 院長

2022年(令和4年)04月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1334

危機に対し怯まない胆力を養い正面から
正確に見据え必ず乗り越える強い意志を
災害時はすべての医療者が医療対応のリーダー

第6波が収束傾向となった3月下旬、当院は初めてクラスター(感染者集団)を経験しました。病院に先立ち院内保育所でクラスターが発生し、保育士12人のうち8人が陽性となり、保育所閉鎖の瀬戸際でしたが、3日に1回のPCRスクリーニングで、新規陽性者をいち早く拾い上げる方針により乗りきりました。この間、少人数で休みも取らず運営を続けてくれた保育士の方々、頻回のPCR検査に耐え保育所利用を継続し、職務を敢行してくれた職員、お子様方に謝意を表します。保育所が収束してきたところで、今度は病棟で患者さん5人、職員8人が陽性となりました。従来通りの感染対策のなかでの発生です。

当院は2020年3月に陽性患者さんの受け入れを開始しました。周囲を住宅地に囲まれ拡張性がないため、発熱外来を夕診エリアに設け、陽性患者さんには1病棟を封鎖し対応しています。これまでは20年秋に3人が院内感染となっただけでした。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。肥前国の第9代平戸藩主、松浦清の言葉です。クラスターがなかったのは、皆の努力に加え運にも助けられたからですが、今回は運が悪かったと片付けることはできません。

急性期オーバーベッド続くも 患者さん・家族・職員が協力

第5波では若い世代を含め地域の人工呼吸器対応の限界を超える重症者が急激に溢れ、「命の選別」の議論が現実味を帯びました。本人と家族の思いが違う場合、また本人に意思確認ができず関係者が意思決定できない場合、限られた時間のなかで、これは酷な選択です。自分や家族の命について考えに考えても、なかなか決められるものではありません。決めたつもりで、いざ本当にそうできるのか、できるだけ後悔しないよう考え尽くすべきと思います。第6波では患者数は多いものの人工呼吸器を要する方が少なく、悲壮感は一見少ないですが、多くの病院がコロナ対応のための病床制限を行い、冬場も重なったことで一般救急も溢れる状況でした。当院も急性期オーバーベッドが続き、入院適応トリアージ(選別)を行ったり、一部の方には帰宅いただいたりするなど、患者さん・ご家族、職員の理解と協力により、現場がギリギリ支えられたことに感謝します。

東葛地域では多数の介護施設でクラスターが起きました。地域のコロナ病棟占有率が90%を超え、酸素投与などが必要な方以外は施設待機となりました。医師、看護師が常駐しない施設もあり感染対策は困難を極め、状態が悪化し、救急車を呼んでも受け入れ先が数時間見つからないケースも出ました。私たちが心苦しく思うなか、東葛地域では毎週水曜日夜に全コロナ対応病院、消防署、保健所がWEB会議を、月曜日は千葉県重点医療機関WEB会議が開催されるようになり、情報共有が行われ、多くの施設が困難を抱えながらも連携して頑張っています。

徳洲会病院は離島・へき地では最後の砦、都市部でも多くの病院が頼りにされ、頑張っている姿に、とても力付けられました。現場で力を尽くされている方々に深く敬意を表します。

複数の職員が使命感をもって 立ち上がり徐々に連帯強まる

この長期化した〝災害〟 で得られたこともあります。当初は現場での協力に葛藤がありましたが、複数の職員が使命感で立ち上がり、その輪が広がり、皆で力を合わせれば困難を乗り越えられるという自信や連帯感、危機管理意識が高まりました。震災への意識も地域や病院で、この2年間進みました。当院でも21年12月、行政や医師会を巻き込み、「病院前救護所」の訓練を行いました。いつ震災が来ても大丈夫という状態にはほど遠いですが、複数の職員が主体的に行動していることを心強く思います。

人は危機に直面した時、事実から目をそらし遠ざける心理があります。「どれほどの困難にぶつかっても、最後には必ず勝つという確信を失ってはならない。同時に、自分が置かれた現実のなかで最も厳しい現実を直視しなければならない」。ベトナム戦争で20回以上の拷問を耐え生き抜いたストックデールの逆説として知られる言葉です。

災害時は医療者一人ひとりが地域での医療対応のリーダーとなり得ます。危機に対して、怯まない胆力を養い、正面から正確に見据え、必ず乗り越えるという強い意志をもつことが求められます。皆で頑張りましょう。

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