
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)08月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1556 3面
第31回日本緩和医療学会学術大会が6月19日から2日間、福岡市で開かれた。テーマは「こえをきき、ともにつくる」。徳洲会グループは15演題を発表した。一部を紹介する。
前部長は、がん疼痛に対する脊髄鎮痛法の要諦を配信で解説
田畑看護師は島の緩和ケアの質向上に努める取り組みを発表
どさんコロジーの活動から北海道での遠隔緩和ケアについて発言する藤原院長
「麻酔科医が伝えたいこと~知っておいてほしい周術期のオピオイド管理と神経ブロック~」をテーマとするシンポジウム(オンデマンド配信)で、中部徳洲会病院(沖縄県)の前知子・疼痛治療科部長が「知っておいてほしい神経ブロック―がん疼痛に対する脊髄鎮痛法の適応と実践」と題し発表した。
はじめに、厚生労働省も神経ブロックなど専門的治療を薬物療法のステップにかかわらず考慮するよう促している状況を報告。薬物療法を補完・最適化する侵襲的鎮痛法の役割が、より重要になることを強調し、脊髄鎮痛法を解説した。
前部長は、硬膜外鎮痛法と脊髄くも膜下鎮痛法について、それぞれの特徴や概念、位置付けを説明。オピオイド(麻薬性鎮痛薬)治療や他の神経ブロック療法との関係性も示し、適切な導入時期や事例をふまえ活用の視点を提示した。オピオイド増量に依存するのではなく、こうしたがん疼痛に対する専門的治療を早期から選択肢として共有することを呼びかけた。
「緩和ケア領域における診療ネットワーク構築─今あるものを、活かし、つなぎ、広げる」をテーマとしたパネルディスカッションでは、徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の田畑幸利看護師が「離島に緩和ケアを広げる─徳之島緩和ケアアウトリーチの取り組み─」と題し、2019年4月から取り組んでいる緩和ケアアウトリーチを紹介した。アウトリーチは、専門家や関係機関が一般社会に出向いて積極的に教育や啓発、支援などを働きかける活動。
はじめに徳之島や自院の特徴を紹介した後、緩和ケアアウトリーチ活動を開始する前の終末期に関する島の状況を提示。緩和ケアという概念や方法がなく、患者さんの意思決定支援や ACP(人生会議)を行わなかったり、在宅療養生活をあきらめたりするなど「さまざまな課題があった」と振り返った。
こうしたなか、同院の循環器内科医師が知人の緩和ケア医師に相談し、島内で緩和ケアをテーマにした講演を開催。それが契機となり、緩和ケアアウトリーチプロジェクトが発足。緩和ケアを専門とする医師10人でチームを組み、「臨床」、「教育」、「啓発」を三本柱に掲げ、活動を開始した。
具体的には、緩和ケア医師が毎月2~4日の交代制で来島し、医療者と緩和ケアチームでの回診や訪問診療を実施。緩和ケア医師不在時はICT(情報通信技術)を活用して相談する。院内外の医療・介護福祉従事者や地域住民への勉強会も実施。日本ALS(筋萎縮性側索硬化症)協会鹿児島支部や行政、鹿児島県がん診療連携拠点病院など外部機関との連携強化にも努めていることを明かした。
これらの活動により、18年は19人だった在宅看取り件数が22年は62人に増加。その後も40人前後で推移していることを示した。在宅で亡くなるがん患者さんの割合や平均在宅療養日数も増えていることから、以前よりも過ごしたい場所で長く過ごせるようになった可能性を示唆した。ただし、「島内での緩和ケアの文化の醸成は進んだものの、文化の定着には至っていない」と、さらなる飛躍を誓った。この他「緩和医療におけるダイバーシティ&インクルージョンの実装:バリアの可視化と実践知の共有」と題する委員会企画でも演者として登壇した。
「遠隔緩和ケア~コンサルテーションと遠隔医療~」と題するワークショップで、ホームケアクリニック札幌の藤原葉子院長が発表した。テーマは「北海道における遠隔緩和ケアの試み~どさんコロジーについて~」。
はじめに、どさんコロジーについて紹介。緩和ケアに関心をもつ医療従事者対象のネットワークで、25年に北海道で発足。緩和ケアに関する相談や情報交換を目的としたメーリングリストも運用し、登録者や月1回の定例会(北海道地域緩和ケア研修会)出席者を“どさんコロジスト”と呼び、場内の参加者にも参加を促した。
そのうえで具体的な活動に言及。緩和ケアに関する勉強会や医師のキャリアパス説明会、オール北海道で取り組む緩和医療専門医研修システム「北海道広域研修プログラム」の創設、交流企画集会など多岐にわたることをアピールした。定例会は、過去18回開催し、延べ参加者は2,538人。“顔の見える関係”ができあがりつつあり、最近は個別に寄せられる相談が増えている状況などを報告した。
実際にメーリングリストでアンケート調査を行ったところ、この1年で緩和ケアの症例や症状緩和について相談することが「増えた」とする回答が「変わらない」とする回答を大きく上回ったことを明示。「専門家であるかどうかを問わず相談が増えることは良いこと」とし、遠隔緩和医療連携が軌道に乗るには「まずは相談しやすい環境づくりが重要」とし、あらためて定例会の有用性を強調した。
藤原院長は「北海道地域緩和ケア研修会『どさんコロジー定例会』に対する医療介護従事者のニーズ」と題し、ポスター発表も行った。また徳洲会グループの8施設が計10演題をポスターなどで発表した。