
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)06月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1547 4面
阪南中央病院(大阪府)は1.5テスラのMRI(磁気共鳴画像診断)装置「MAGNETOM Flow.Plus」を導入、順調に稼働している。“ヘリウムフリー”と呼ばれる次世代タイプで、超電導磁石の冷却に必要な液体ヘリウムを使用しない、または大幅に削減できるのが大きな特徴。これにより安定的な装置稼動や、ヘリウムの再補充などにともなうコスト削減、環境負荷の軽減などが期待できる。同装置はAI(人工知能)も搭載し、短時間で高画質の画像撮影を可能にするなど、患者さんや医療従事者の負担も軽減する。導入は徳洲会グループで、六地蔵総合病院(京都府)、厚生会第一病院(大阪府)に次いで3施設目。
新MRIの活用に意欲を見せる(左から)平山主任、山枡院長、三品副主任
MRIは血管や臓器の状態を画像で確認するための医療機器。頭部や腹部、四肢、骨盤内の臓器(子宮・卵巣・前立腺など)、脊椎・脊髄など、さまざまな部位の検査で用いる。
強力な磁場が発生している筒状の装置内で体に害のない電波を当てると、体内の水素原子が反応し、その際に発生する微弱な電波を検出、コンピューター解析して体の断面を画像化する。強力な磁場を安定して発生・維持させるためには、装置内の超電導磁石を超低温(マイナス270℃程度)に保たなければならず、その際に液体ヘリウムを使用する。
従来の一般的なMRI装置の場合、冷却には1,000~1,500ℓの液体ヘリウムが必要とされ、適宜、補充しながら装置を運用する。日頃から大量の液体ヘリウムを使用するだけに、クエンチ(何らかの原因で超電導状態が保てなくなると、液体ヘリウムが急激に気化、大量のヘリウムガスが放出され磁場が急速に弱まる現象)が発生すると、装置の点検や液体ヘリウムの調達などで、一定期間、MRI検査が実施できなくなることもある。
「MAGNET-OM Flow.Plus」は、こうした液体ヘリウムに依存しない“ヘリウムフリー”と呼ばれる次世代型のMRI。液体ヘリウムは0.7ℓしか使用せず、密閉型設計のため導入後のヘリウム補充は不要。同設計を生かし、平日の夜間や休日など稼働していない時には冷却機を間欠運転したり、一定時間稼働していないと自動で省電力モードに移行したりする省エネ機能を搭載している。トラブルで磁場の再立ち上げが必要な時も自動回復機能を完備し、安全かつ早急な復旧が可能だ。
加えて、AIを搭載。検査前の患者さんの位置合わせも、各部位の位置を自動認識する機能などで、最適な画像を撮影するためのプランを操作スタッフに提案。スタッフは確認するのみで、一から行う必要はない。ノイズ(画像上に生じる実際には存在しない虚像)の除去など画像を再構成する機能も備わり、検査時間の短縮と高画質の画像撮影を両立している。
クエンチリスクがないため、クエンチ発生時に備えた排気管(クエンチパイプ)の敷設も不要。省スペース化も実現する。不安定な世界情勢が続き、ヘリウムについても供給不安がささやかれるなか、同装置であれば液体ヘリウムの管理にともなうスタッフの負担軽減、ランニングコストの低減などが期待できる。
阪南中央病院が同装置を導入したのは2月。それまでの装置は20年以上使用し老朽化が進み、更新を検討していた。「以前も同じ1.5テスラのMRIでした。導入当時は割と上位機種で、バージョンアップなどを行いながら使い続けていたのですが、故障しても替えの部品がなく、業者によるサポート期間も終了。液体ヘリウムの消費効率も悪く、かなり費用がかかっていました」と平山道永・放射線科主任(診療放射線技師)は振り返る。
さまざまな機種を検討するも価格などで決めかねるなか、一般社団法人徳洲会医療機器部から「MAGNETOM Flow.Plus」を紹介され導入を決定した。平山主任は「とても使い勝手が良く驚きました。当院の場合、整形外科や婦人科領域が多く、汎用性の高い1.5テスラが良い。価格もグループのスケールメリットを実感しました」と話す。
同院の場合、以前から近隣の診療所によるMRIの紹介検査が多く、機器更新後も好評。信頼関係の一因となっている“紹介元への返信の早さ”も、さらに向上した。
また、静音性に対する評価も高い。患者さんはもちろん、三品佐和子・放射線科副主任(診療放射線技師)は「当院にはNICU(新生児集中治療室)があり、新生児のMRIを撮影することがあります。音が静かになり、新生児が覚醒しにくくなりました。短時間で撮影できるため、“起きちゃったから仕切り直しで別の日にしよう”ということも少なくなりました」と説明する。
撮影時間の短縮により、診療放射線技師が一人体制の当直帯もスムーズに対応。山枡誠一院長は「以前は時間がかかっていましたが、最近は救急で来院した脳梗塞の患者さんを診断できるようになりました」。今後は「認知症や小児、また当地域には婦人科が結構あるので、広く活用し地域に貢献していきたいと思います。土・日曜日も使用し、診断の遅れがないように努めたいです。もっと地域に周知していきます」と意欲を示す。