
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)03月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1535 4面
国際ジャーナリストでタレントのモーリー・ロバートソンさんが1月末に食道がんで亡くなったと報道がありました。著名人では、漫画家の赤塚不二夫さんや俳優の岡田眞澄さんも食道がんで亡くなっています。膵臓がんなどと同様に、発症早期の段階では自覚症状が乏しく、発見時には進行してしまっているケースが多いです。主な危険因子は飲酒と喫煙で男性に多いのが食道がんの特徴です。千葉徳洲会病院の村田一平・外科医長が解説します。
村田一平・千葉徳洲会病院外科医長
食道がんの低侵襲手術であるVATSを執刀する村田医長(左から2人目)
食道は、のどと胃をつなぐ25cmほど(成人)の消化管で、食べたものを胃に送る働きをしています。管腔の内側から粘膜、筋層、外膜で構成され、食道がんは粘膜から発生する悪性腫瘍です。食道の壁にはリンパ管が網目のように走っているため、早い段階からリンパ節に転移しやすい特徴があります。
早期の段階ではほとんど症状が出ず、自覚症状が現れた時には、すでに進行がんになっていることが多いです。症状で最も多い主訴は「食べ物が胸につかえる感じがする」。その他、食事摂取量の低下などによる「体重減少」、食道のそばを通り声帯を司る反回神経への浸潤・圧迫などによる「声のかすれ(嗄声)・誤嚥」などです。病変部位からの出血にともなう「吐血・下血」も現れることがあります。これらの症状がある場合は早めの受診を推奨します。
生活習慣が強く関係し、主な危険因子は飲酒と喫煙です。とくに、飲酒で顔が赤くなる方は、体内で発がん物質(アセトアルデヒド)を分解する力が弱いため注意が必要です。飲酒と喫煙の両方の習慣がある人は、非飲酒・非喫煙と比べ、リスクが約50倍に跳ね上がるという報告もあります。
早期発見に有用なのが内視鏡検査(胃カメラ)です。毎年定期的に受けることが大切です。食道がんが見つかった場合、進行度を判定するためCT(コンピュータ断層撮影)検査やPET(陽電子放出断層撮影)検査を行い、食道壁のどの深さ(層)まで達しているかなどに応じて治療方針を決定します。
がんが粘膜の表面にとどまる早期がんでは、内視鏡で一括切除する内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行います。粘膜下層まで達していれば、ESD、外科的手術、化学放射線療法(抗がん剤+放射線治療)から選択します。筋層以深に浸潤している進行がんは、まず抗がん剤で、がんを小さくしてから手術を行う術前補助化学療法が標準治療です。術前の体力があるうちに、転移している可能性がある微小ながんを早期にたたくことで、切除率の向上や術後再発の低減などが期待できます。遠隔転移がある進行がんは手術適応外のため、化学療法や放射線療法が中心です。
手術や化学療法、放射線療法の適応や、ご本人に積極的な治療の希望がない場合は、緩和治療となります。がんによる食べ物の詰まりの改善を目的に、内視鏡を用い食道ステントを挿入します。がんで狭くなった食道が広がり、再び食べ物が通過できるようになります。
食道がんの外科的手術は胸部、腹部、頸部の3カ所を操作する必要があり、大きな侵襲がともないます。近年では胸腔鏡補助下手術(VATS)やロボット支援下手術、呼吸機能に不安のある患者さんに用いる縦隔鏡下手術といった低侵襲手術も普及しつつあります。いずれにしても食道がんの手術は専門性の高い手術ですので、経験豊富で専門性の高い医師や設備が整った施設で受けることをおすすめします。