徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2026年(令和8年)03月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1534 3面

第16回透析運動療法研究会
多職種が運動療法の重要性示す
大会長に大竹・湘南鎌倉病院副院長

第16回透析運動療法研究会が2月8日、神奈川県で開催され、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の大竹剛靖・副院長兼再生医療科部長が大会長、小林修三院長が大会顧問を務めた。テーマは「明日へ繋ぐ皆でつなぐ透析患者の運動療法」。大竹副院長による大会長講演のほか、同院から4演題の発表があった。

透析運動療法の重要性を訴える大会長の大竹副院長 小林院長は、大会長講演や複数の演題で座長に 透析時運動療法の参加拡大について報告する西村室長 愛甲・看護主任は透析中の運動療法による臨床効果を説明 透析中に間接嚥下訓練を実施した結果を報告する信夫ST 島野OTは肝移植後透析期での運動療法に関する演題を発表

研究会では、透析医療での運動療法の重要性を再認識し、多職種連携により、いかに患者さんのQOL(生活の質)を高めていくかを活発に議論。大会長講演では、小林院長が座長を務め、大竹副院長が「透析患者の健康増進のために~透析運動療法の目指すもの~」と題し登壇した。

まず、徳洲会グループが“生命だけは平等だ”の理念の下、長年取り組んできたアフリカなどへの透析医療支援活動を紹介。「世界には、いまだ厳しい環境にある患者さんが多く存在します」と切り出した。

一方、日本の透析医療は恵まれているが、患者さんの高齢化が顕著で、2023年末時点で75歳以上が透析患者さん全体の4割を占める現状を指摘。これにともない、心血管障害やサルコペニア(身体機能の低下、社会とのつながり減少)、フレイル(加齢による心身の衰え)、認知症、さらには重症下肢虚血といった合併症が大きな課題になっている。

とくに足の病変を放置することは、生命予後を悪化させることに直結するため、血管内治療や再生医療、運動療法を組み合わせた「足を救い、命を救う」ための包括的なアプローチが不可欠であると説明。大竹副院長は「足を守ることが命を守ることにつながります。早期のスクリーニングとフットケア、そして運動療法を実施することが重要」と訴えた。

ワークショップ「楽しく始めよう運動療法」では、西村彰紀リハビリテーション部室長(作業療法士=OT)が「外来透析患者における透析時運動療法の実践と参加拡大の経過」をテーマに発表。同院では、15年頃から透析前の運動療法を試行錯誤しながら始め、現在は透析開始後の約45分間、動画を活用したレジスタンストレーニングやエルゴメーターによる有酸素運動を実施している。

開始当初の18人から、現在は68人まで参加者が拡大。継続の秘訣として、患者さんのモチベーション維持のために、口腔体操など飽きさせないコンテンツを動画に取り入れる工夫や、多職種が一丸となって患者さんを励まし、運動療法が透析治療の一部として「当たり前」であるという環境を構築したことをアピールした。

一般演題でも多職種が多角的な発表を続けた。愛甲美穂・看護主任は「透析中の運動療法が透析患者に与える臨床効果」と題し発表。

維持透析患者15例(平均年齢75.1歳)を対象に、3カ月間の透析運動療法を実施した結果、下肢末梢血流の指標であるSPP値や、身体機能の指標であるADL(日常生活動作)などの評価で有意な上昇が認められた。とくにADLが「軽度の支援が必要」な状態から「全項目で自立」に改善した例もあり、運動療法が血流改善だけでなく、日常生活の自立度向上に寄与することを裏付けた。

信夫晶子・言語聴覚士(ST)は「透析中に間接嚥下訓練を実施した1例について」をテーマに発表。

透析患者さんは一般高齢者よりもオーラルフレイル(口腔機能の些細な衰え)の罹患率が高く、約半数が該当するとされる。症例では、90歳男性の患者さんに対し、食べ物を使用しない舌や口唇の運動、喉の筋力を高める「シャキア・エクササイズ」などを透析中に動画を観ながら実施。これらを4週間(計12回)行った結果、嚥下質問紙のスコアが改善し、食事中のむせが減少したことを報告した。

島野一真OTは「肝移植後透析期における運動療法がADLに及ぼした影響」と題し発表。

術後の長期臥床や免疫抑制剤の使用により、著しいADL低下を来した50代男性の患者さんに対し、低負荷・高頻度のリハビリを実施した。多職種連携による環境調整や生活リズムの構築により、バーセル・インデックス(ADL指標)が25点から70点まで改善し、トイレ動作の自立に至った過程を報告。重症管理下にあっても、多職種でADL目標を共有し段階的に進める運動療法が、ADL改善への大きな鍵となることを示した。

日髙寿美・腎臓病総合医療センター長や石岡邦啓・腎臓内科部長も座長として活躍。研究会の運営は、同院の事務スタッフらが協力して取り組んだ。

全体を通じ、透析患者さんにとって運動療法は、もはや特別な治療ではなく、透析治療の一部として「当たり前」に提供されるべきものであるという共通認識が深まった。

そのためには、多職種が情報を共有し、早期スクリーニングからフットケア、運動指導、栄養管理までをシームレスに行うチーム医療が、不可欠であることを示した。

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