徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2026年(令和8年)02月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1530 3面

徳洲会麻酔科部会&CE部会合同会議
手術室でのタスクシフト推進
医療の質向上と安全環境構築も

徳洲会麻酔科部会と臨床工学部会(CE部会)は1月23日、東京本部とオンラインのハイブリッド形式で合同ミーティングを開催した。手術室での臨床工学技士(CE)へのタスクシフト/シェアの推進に加え、多職種連携による医療の質向上、より強固な安全環境の構築を目指し、麻酔補助業務を積極的に進めている施設が現状と課題を情報共有した。

「チーム医療こそが医療の質を決定付ける」と關根部会長 CEの業務拡大の現状を報告する高室部会長 全国の施設の麻酔科医師やCEとオンラインでつなぎ会議

徳洲会グループの「24時間365日、救急を断らない」という理念を維持するためには、手術部門のマンパワー不足解消と、高度化する医療機器管理の安全確保が喫緊の課題。合同ミーティングでは、現場レベルでの実務的な協議に加え、グループ全体の医療提供体制をアップデートするため議論を交わした。

冒頭、麻酔科部会長の關根一人・千葉西総合病院麻酔科主任部長は、「現代の周術期医療では、多職種がそれぞれの専門性を発揮するチーム医療こそが、医療の質を決定付けます」と強調。先行して協議している麻酔科医師と特定看護師との連携に加え、今後はCEとの連携を強化することが重要という考えを示した。

次にCE部会長の高室昌司・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)臨床工学部技士長が、2021年の法改正にともなうCEの業務拡大の現状を報告。業務拡大では厚生労働省が定める告示研修の受講が義務付けられているが、グループ内での実施率は約85%に達しており、全国的にも高い水準でタスクシフトの準備が整っていることをアピールした。

さらに、人工心肺や人工呼吸器といった生命維持管理装置のスペシャリストであるCEが、麻酔補助として術中に常駐することは、機器由来のインシデントを根絶するための保守管理の徹底と、生体情報のモニタリングによる安全環境の構築を同時に成し遂げる「合理的な選択」と説いた。

続いて、落合亮一・医療法人徳洲会顧問がコメント。多職種連携チーム医療を目的とした日本麻酔科学会の「周術期管理チーム」プロジェクトが11年にスタートしたが、これは欧米のPSH(周術期サージカルホーム)やEBPOM(エビデンスに基づく周術期医学)といった多職種連携の世界的な潮流と連動したものであることを解説した。

13年の横浜地裁判決を引用し、法的責任の所在に関する考察も行った。麻酔科医師の不在時に手術室で医療事故が発生した場合、現場を離れた医師でなく、患者さんに接していた執刀医の責任が問われた判例を挙げ、CEが「指示を待つ立場」であることに相違ないが、責任体制の正しい認識が必要であることを示した。

さらに、グループ共通の「麻酔補助業務・院内認定制度」を紹介したうえで、「共通言語の獲得こそが、安全なタスクシフトの前提であり、CE部会の指導的役割を期待します」と締めくくった。

次に、大隅鹿屋病院(鹿児島県)の長元優・臨床工学室主任が、グループ全体の麻酔補助業務に関するデータ分析の結果を紹介。現在、グループ内では11施設28人のCEが、すでに麻酔補助業務に従事しており、実績としてスコープオペレーターが1,965件、直接介助が5,500件に達していることを示した。

長元主任は、法改正による5つの新業務と既存の13業務を統合し、実務に即した「140項目」の実施可能業務リストを整理。一方で、薬剤のワンショット投与や気管挿管、抜管といった「禁止業務」との境界線をあらためて明確化した。とくに麻酔科常勤医師が少ない施設ほどCEへのニーズが高い実態をふまえ、「グループ共通のルール整備が現場の安全性を守ることにつながります」と指摘した。

医師の労働1000時間削減や全身麻酔症例45%にCE関与

ミーティング後半では、具体的な成功事例を共有した。野崎徳洲会病院(大阪府)の福井悠記・臨床工学室係長は、全身麻酔180 症例への立ち会いと30回の静脈路確保を目標とした3カ月の独自研修カリキュラムを紹介。 独自の「指示受けシート」を用いた運用管理により、年間322 例の全身麻酔に関与した結果、非常勤医師の労働時間を年間約1,000 時間削減したという成果も報告した。

松原徳洲会病院(大阪府)の松本優輝・臨床工学室主任は、院内の全身麻酔症例の45%にCE が関与しているという高い定着率を紹介。CEが手術室に常駐することで、機器トラブルへの迅速な初期対応や、急変時のダブルチェック機能を発揮した。また、「われわれの役割はあくまで麻酔“補助”」と責任境界を明確化することで、多職種間の信頼関係を盤石なものにしている実態を説明した。

総括では、CE部会副部会長の吉見隆司・松原病院臨床工学科技士長が、離島・へき地医療への応援体制に関する新たな展3望を提示。医師単体での派遣ではなく、「麻酔科医師+CE」をひとつの「麻酔チーム」として派遣する構想で、医療資源が限定的な環境であっても、都市部と同等の安全基準を維持するために必要な対策であると示した。

今後、CE部会ではAI(人工知能)やeラーニングを活用した学習支援、シミュレーターを用いた実技研修を駆使し、グループ全体での教育の平準化を推進させる方針。「タスクシフトの本質は、医師の負担軽減だけではなく、多職種が専門性を尊重し合うことで、患者さんへ『安全で質の高い医療』を届けることが目的」と語気を強めた。

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