
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)12月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1522 4面
八尾徳洲会総合病院(大阪府)は、門前薬局(院外の調剤薬局)との連携による「マイ肝プロジェクト」を開始した。肝疾患の潜在ニーズを引き出し、適切な治療に結び付けるのが狙い。門前薬局の薬剤師が、薬を受け取りに来た方のなかで一定の条件に該当する方に、専門医の受診を勧める。発案した肝臓外科の藤井貴子部長は「患者さんが自分の体について一層理解する機会にしたい」と力を込める。
「適切な治療を少しでも早く受けられるように」と藤井部長
戦略会議でプロジェクトの現状や今後の方針を協議する(左から)藤井部長、アイン薬局八尾店の田中直也薬局長、八尾病院の草薙みか薬局長
マイ肝プロジェクトは、八尾病院が門前薬局のアイン薬局八尾店と連携し、9月に開始した試み。同店舗に薬を受け取りに来た方のうち、直近半年以内の血液検査で、肝機能を示すALT(肝細胞内に含まれる酵素の数値)が31以上または血小板数が20万/μl未満にひとつでも該当する場合、薬剤師が肝疾患の可能性を伝え、肝臓領域の専門医にかかっていないのであれば受診を勧奨する。
目的は、地域に潜在する肝疾患ニーズの掘り起こし。肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、病気になっても症状が出にくい。肝機能が低下すると、肝炎、肝硬変、肝臓がんといった疾患につながり、いずれも増加傾向にあることが指摘されている。
藤井部長も「今、国民の4分の1が脂肪肝、その4分の1が肝硬変に進行する手前、さらに進行した肝硬変では4分の1が肝臓がんになると言われています」とし、「肝臓は心臓と同様、機能不全になれば死を意味します。基本的に肝硬変は治らず、肝臓がんも“肝硬変が進みすぎて治療の選択肢がない”ケースが少なくありません。早い段階で発見・進行しないように管理したいというのが私の思いです」。
マイナ保険証は過去の特定健診結果が閲覧でき、八尾病院では院外処方箋にかかりつけ患者さんの血液検査結果が反映される。この2つの仕組みと、以前から地域の調剤薬局薬剤師が薬剤指導を行っているという環境から、プロジェクトを考案した立案する要因となった。
「血液検査結果の共有は、もちろん同意を得た患者さんのみです。プロジェクト名はマイナの“マイ”と“My”をかけています」と藤井部長。日本肝臓学会の「奈良宣言2023」ではALTの数値を打ち出しているが、「肝臓が悪化していくと、同数値が上がらなくなり30に達しないケースもある」(藤井部長)ため、奈良宣言でALT31以上の次の段階に掲げられている「血小板20万/μl未満」も同プロジェクトでは前面に掲げた。
開始から3カ月が経過し、藤井部長は「目立った症状がない、他科で採血して“問題ない”と言われたといった理由で、受診に至らないことが少なくありません」と現状を説明するが、それでも末期の肝硬変が判明したケースなどがあるという。
現在、2カ月に1回のペースで戦略会議を設け、プロジェクトの周知や声のかけ方などを検討。より患者さんの理解促進、スムーズな受診につながるように改善を重ねている。担当医師との連携強化なども図る予定だ。
同プロジェクトは臨床研究としても実施。プロジェクト開始から5年間、受診勧奨を行った患者さんのデータを受診の有無などでまとめ、予後を分析する。「主治医の判断や負担を超えたところで隠れた肝疾患のニーズの掘り起こしができたらと考えています。現在は調剤薬局が1カ所ですが、門前薬局はもう1カ所あるので、将来的には追加することも視野に入れています」と藤井部長。
「疾患の見落としがないように院内で横断的にスクリーニングする取り組みは、いろいろな病院で実践されていると思いますが、院外で患者さんをスクリーニングして見落としを防ぐ取り組みも良いはずです。肝臓の状態を明らかにする“入り口”として続けていきたい」と意気軒高だ。