
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)12月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1522 3面
野崎徳洲会病院附属研究所(大阪府)の熊井準研究員の論文が国際的な学術ジャーナル『Experimental Cell Research』WEB版に掲載された。テーマは「Metastatic breast cancer cells adapt to a soft environment with limited involvement of mechanotransduction」(転移性乳がん細胞は、メカノトランスダクションの関与が限定的な状態で軟らかい環境に適応する)。
「乳がんの肺転移メカニズム解明に少しでも貢献したい」と熊井研究員
細胞の外側に存在し、細胞組織の形態や機能を維持するための物質「細胞外マトリックス(ECM)」は、腫瘍細胞の細胞内シグナル制御に重要な役割を果たしている。これまで、ECMが硬いと細胞に張力が加わり、増殖速度が高まる(メカノトランスダクション=機械的伝達刺激による細胞応答)ことは広く研究・報告されている。
一方、ECMが軟らかいと細胞に張力がかからないため、軟らかい環境で、どのように細胞が増殖しているか、その仕組みは十分に解明されていない。そこで熊井研究員らは、腫瘍細胞が軟らかい環境に適応するメカニズムと、その悪性度との関係を調査した。
研究では、肺の硬さを模倣した軟らかいゲルをつくり、複数の悪性度の腫瘍細胞株を培養したところ、軟らかい環境に適応して増殖能が増強する細胞を特定した。さらに、乳がんマウスモデルでは、軟らかい環境への適応が肺への生着を促進し、軟らかい環境への適応力と腫瘍悪性化との関連が示唆された。論文の最後には、こうした適応メカニズムは転移抑制の新たな治療標的となり得る可能性を示した。
熊井研究員は「乳がん患者さんは、がんが完治しない場合、最終的に肺転移で亡くなるケースが多く、肺転移するメカニズムを解明し、治療法を確立したいと思っています。もう少し工夫すれば、決定的な要因がわかってくると思うので、引き続きトライしていくつもりです」と意欲を見せる。