
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)12月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1521 3面
「がん転移抑制や組織再生を促す新たな治療法として期待」と落谷・特任教授
東京医科大学医学総合研究所未来医療研究センター分子細胞治療研究部門の落谷孝広・特任教授は「エクソソームによる診断治療の最前線」と題し講演した。エクソソームは細胞間の情報伝達を担う微小粒子。この特性を応用したのが診断分野での「リキッドバイオプシー」であり、血液一滴から膵臓がんや大腸がんをきわめて早期に発見可能。
がん細胞が能動的に分泌するエクソソームを捉えるため、細胞死を待って検出する従来の腫瘍マーカーを感度・特異度で凌駕し、術後の再発モニタリングにも有用となる。
一方、エクソソームを積極的に利用する治療戦略の研究も加速。たとえば、がん細胞は転移を促す「悪玉」エクソソームを分泌し、乳がんが脳へ転移する際の足がかりをつくることが知られており、その働きを阻害する方法が研究されている。
対照的に、間葉系間質細胞などが分泌する「善玉」エクソソームには、治療応用の可能性があることを指摘。近年の研究によると、この治療効果は細胞自体が分化するのではなく、分泌するエクソソームがパラクライン効果(周辺細胞への働きかけ)により、組織修復や抗炎症作用をもたらすことが解明された。
この最先端研究を現実の医療につなげるため、落谷・特任教授の研究と徳洲会グループの連携が世界初の快挙を成し遂げた。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の細胞調整室(CPC)で、GMP(医薬品の製造管理および品質管理に関するガイドライン)グレードに準拠した高純度な治療用エクソソームの製造プロセスを確立。
精製エクソソーム製剤として世界初となる臨床投与体制を整えた。これは、がん転移の抑制や組織再生を促す「細胞フリー治療」という新たな治療法として、大きな期待が寄せられていると締めくくった。