
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)09月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1511 1面
医療法人徳洲会は9月23日、徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の新築移転記念式典を挙行した。徳洲会グループ職員、地元の行政、消防、建設に携わった企業など関係者が列席し、新病院の完成を祝った。同日、一般の方を対象とする竣工・祝賀会、内覧会も開き、約3,000人が参加した。新病院は現病院から直線距離で約1.5kmの場所にあり、10月1日に診療を開始する。旧病院は奄美群島の徳之島に1986年10月にオープン。徳之島は徳洲会を創設した徳田虎雄・名誉理事長の故郷で、徳洲とは徳之島を指す。
神事後に列席者で記念撮影
式典は、新病院の特徴のひとつでもある開放的な待合空間「結いの広場」で行った。240人が列席するなか、徳洲会グループからは東上震一理事長はじめ法人幹部、徳之島病院の職員、奄美群島のグループ病院院長らが出席した。
冒頭、徳田・名誉理事長を偲び、徳田家墓前に向かって一同が黙禱を捧げた後、竣工式を行った。神事後、玄関前で東上理事長ら8人がテープカットに臨み、あらためて新病院の完成を祝福した。
列席者に謝意を示しグループの発展に向け決意を示す東上理事長
来賓者向けの内覧会後、祝賀会を行い、まず東上理事長が施主として挨拶。「徳田先生は徳之島で育ち、医師になろうと決心しました。ここは徳洲会にとって、ひとつの歴史、奇跡が生まれた本当にメモリアルな場所」と切り出し、新病院について「本当に素晴らしい建物で感激しました」と吐露した。出生率が高い島の特性に触れ、出産に関する環境、また当直室など職員が過ごすスペースも一層充実したことなどを挙げ、あらためて「皆さんのお力添えの賜物です」と謝意を表した。
子どもの頃のエピソードを披露し、新病院に期待を寄せる塩田知事
徳洲会グループにも言及。現在、84病院を展開するまでになったものの、数を増やすこと自体が目的ではない点を強調。「徳田先生が言われたように、徳洲会の心の込もった全力の医療をいろいろな場所に届けます。今、海外では着実にさまざまな国と医療協力を進めていますし、国内では少しでも仲間を増やして日本中に徳洲会の医療を届けたいと思っています。『徳洲会があって良かった』、『徳洲会に命を救われた』と思ってくださる方がひとりでも多くなれば、それは私たちの幸せです」と語気を強めた。
禧久・県議会議員は、かつて徳田・名誉理事長が講演でよく話していた言葉を紹介
最後に、声を潤ませながら「徳田・名誉理事長の思いを受け継ぎ、私たちは徳洲会を発展させていきます」と決意を示し、締めくくった。
高岡町長は新病院について「町民の大きな誇り」
この後、新病院を設計した内藤建築事務所の河﨑邦生取締役、施工した熊谷組の上田真社長に東上理事長が感謝状を贈った。
「(新病院は)徳之島の未来への一歩」と伊田町長
来賓祝辞では5人が登壇。塩田康一・鹿児島県知事は子どもの頃に徳之島に住み、塀から落ちた時のエピソードを披露。当時、脳波の検査を受けるために船で鹿児島本土の公立病院に行ったことを振り返り、「新病院を内覧した際、脳波検査室があり、今の子どもたちは島でしっかりした医療が受けられます。大変感慨深いものがあります」と語った。新病院は将来的に病床数を現在の199床から237床に増床し、重症患者さんにも対応できるHCU (高度治療室)を設置する構想に触れ、あらためて期待を寄せた。
森田町長は新築移転でさらなる地域医療の発展に期待
禧久伸一郎・鹿児島県議会議員は、かつて徳洲会に在籍し、20年以上、徳田・名誉理事長の秘書を務めていた当時を振り返り、徳田・名誉理事長が講演でよく話していた言葉を紹介。<僕は徳之島で苦労して育ち、弟を亡くして、どんな人でも、夜中でも診る医者になることを決意した。しかし、自分は徳之島に糞尿だけを残している。これでいいのか。とにかく何が何でも徳之島の医療を良くする。良くしなければならない>、<人は本来、自分のためには頑張りがあまり利かないが、愛する人、愛する故郷のためには頑張りが利く。愛郷無限。故郷を愛する心は無限大>などと披露し、新病院の開設を機に、今一度、徳洲会の“生命だけは平等だ”の理念の意義をふまえ、医療・福祉のさらなる向上、患者さんに愛と心で接する姿勢を徳之島病院職員に望んだ。
テープカットのセレモニー(左から上田社長、河﨑取締役、新納院長、東上理事長、塩田知事、高岡町長、森田町長、伊田町長)
高岡秀規・徳之島町長は新築移転によって、より高度で完結型の安全な医療提供が可能となり、①島民の命と健康を守る拠点、②医療人の学びの場として未来に向けた大きな希望、③地域の防災拠点――になると期待。
徳之島病院の今後について常勤医の確保を訴える大久保・名誉院長
「新しい形(病院)となって、今日を迎えられたことは町民の大きな誇り」とし、「この病院の原点を築かれた徳田先生の偉業に、あらためて深甚なる敬意を表します」と締めくくった。
新納院長は新築移転後も理念に沿って島民の健康を守っていくことを約束
伊田正則・伊仙町長は今回の新築移転を「単なる医療の刷新にとどまるものではなく、徳之島の未来を見据えた新しい医療の土台づくり」と表現。「より安全で快適な医療環境が整備されることは、“徳之島で人生を完結できる”という安心感につながり、それが“この島で暮らしたい”という思いを後押しする未来への一歩だと感じています」と胸の内を明かした。
餅投げ(左の写真)や体操クラブのデモンストレーションに多くの方が集まり歓声
森田弘光・天城町長は、とくにコロナ禍での徳之島病院に触れ「総力を挙げて対応いただきました。まさしく地域医療の中核病院として重責を担っています」と謝意を表明。新病院では感染症対応の設備を導入していることなどを挙げ、さらなる地域医療の発展に期待を寄せた。
この後、開院から新築移転まで同院の歴史をまとめたオリジナル動画を視聴した。

乾杯の音頭は歴代の院長を代表し、大久保明・名誉院長(前・伊仙町長)が取り、徳田・名誉理事長とのエピソードを披露しつつ、同院の今後に言及。救急搬送の可否が天候に左右されやすいことや人口減対策などから、「完結型の病院にしていかなければなりません」と強調。そのためには「常勤医が絶対必要」と列席者に呼びかけた。
中締め挨拶は新納直久院長が行い、新築移転後も理念に沿って島民の健康を守っていくことを約束した。
保健所の許可を得たうえで20以上の屋台が出店
同日、一般の方向けの竣工・祝賀会、内覧会も実施。竣工・祝賀会は「結いの広場」で、来賓向けの祝賀会と同様、地元の文化団体やアーティストらがステージで多彩なパフォーマンスを披露した。内覧会も同じコースを設定し、外来や病棟、透析室、リハビリテーション室、各種検査室などに加え、海が一望できる最上階の食堂も見学した。
祝賀会では多彩なパフォーマンスを披露
屋外でもさまざまな企画を用意。徳洲会体操クラブの杉野正尭主将ら6選手が登場し、演技やストレッチなどを披露した。杉野主将は昨夏のパリ五輪で獲得した金メダルを持参し、観客から拍手が湧き起こっていた。
10月1日に診療をスタートする新病院。正面玄関の看板には「徳田・名誉理事長の病院」を意味する英語の綴りも
また、2回にわたり餅投げを実施。東上理事長や塩田知事、徳洲会体操クラブの選手らが勢いよく餅をまくたびに、集まった一般の方から大きな歓声が上がった。20以上の屋台が軒を並べるなど、来場者を楽しませる企画が目白押しだった。訪れた方からは「すごい病院ができたね。見晴らしもいいし、直接見ることができて安心しました」といった声が聞かれた。一時、道路が渋滞するほど多くの方が来場したが、無事に終了。