徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)09月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1510 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演86
近くにいる人が命つなぐ

健康的に日常生活を送っていた方が急に亡くなる「突然死」。成人の場合、その大半は心臓の病気による「心臓突然死」とされ、日本では年間約8~9万人が亡くなっていると言われています。心臓突然死を防ぐために、八尾徳洲会総合病院(大阪府)の松尾浩志・循環器科部長は予防の重要性を強調するとともに、3割は就寝中に発症することなどから「身近な人の対応が命をつなぐポイント」と指摘します。

八尾徳洲会総合病院(大阪府) 松尾浩志・循環器科部長

突然死は、WHO(世界保健機関)では「瞬間的な死亡もしくは原因となる病気を発症して24 時間以内に死亡すること」と定義されています。身体内部の異変によるもので、交通事故など外部要因での死亡は含まれません。

脳出血や腹部大動脈瘤破裂など、突然死の原因疾患はさまざまですが、約7割が心臓の病気と言われています。「心臓突然死」と呼び、日本では年間約8~9万人が亡くなっています。1日に換算すると約200人、およそ7分に1人が命を落としているペースになります。

「心臓の病気で急に亡くなる=運動中に倒れる」と思われがちですが、実は心臓突然死の33%が就寝中です。周りの人が気付きにくいため、まずは原因になりやすい心疾患の予防に努めることが心臓突然死を防ぐポイントになります。不整脈や狭心症、心筋症、心筋梗塞、心不全などが挙げられますが、ベースは一緒で生活習慣(病)が重要です。高血圧、脂質異常症、高脂血症、睡眠不足、糖尿病、喫煙、飲酒、肥満――これらを管理して少しでも改善するようにしましょう。

加えて、早期の受診も大切です。「動くと胸がキュッとする」、「短い距離でも歩くと胸がしんどい」、「最近、体がむくんできた」といった症状があれば、早い段階で医師に相談してください。その際、症状などをはっきり伝えることが肝要です。残念ながら、外来受診時の心電図検査などだけではわからない、患者さんの訴えでしか判断できないケースがあるからです。

こうした日常生活で予防に努める半面、万一、突然、胸が苦しくなったり倒れたりした時の対応方法も知っておく必要があります。とくに、胸が激しく痛み、冷や汗や呼吸困難などが見られる場合は、すぐに119番通報してください。急性心筋梗塞が疑われ、時間が経過するほど救命率が下がり、心筋が壊死して戻りません。治療が早ければ早いほど良い病気です。

倒れて意識がない場合は、近くにいる人の対応が大変重要になります。救急車を呼び、呼吸がない、または通常の呼吸ではないことを確認したら、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行います。何の処置も施さなければ、1分経過するたびに救命率が10%低下すると言われており、対応の遅れが、まさに命取りになりかねません。

胸骨圧迫に加えAED(自動体外式除細動器)を使うと、救命率が飛躍的に上がります。日本は“AED大国”と言われるほど設置台数が多く、世界でもトップクラスのAED普及国です。しかし、使用率はわずか5%程度にとどまっているのが現状です。

救急隊が到着するまでの全国平均は約10分。到着後、患者さんに触れて、病院に連絡して搬送すると20~30分はかかります。近くにいる人が命をつなぐのです。冒頭で説明したように、心臓突然死は決して、まれなことではありません。遭遇した時のために、正しい胸骨圧迫の方法やAEDの使用方法を学んでおくと良いでしょう。

PAGE TOP

PAGE TOP