徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)09月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1510 3面

日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会
徳洲会グループは10演題発表
大渕・鎌ケ谷病院副院長が大会長を務め盛会

第29回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会が9月5日から2日間、福岡県で開かれ、大会長を鎌ケ谷総合病院(千葉県)の大渕俊朗・副院長兼呼吸器外科部長が務めた。「新たなC.Q.(クリニカルクエスチョン)への挑戦」というテーマの下、過去最高の合計243人が参加。登録演題数と発表者数も過去最多を更新するなど、終始、盛況だった。徳洲会グループは10演題を発表するとともに、会の運営をサポートした。徳洲会の発表を中心に紹介する。

参加者や登録演題など過去最多

大渕副院長は会長講演で、クリニカルクエスチョンに挑む大切さを強調

野口分類を振り返りながら、クリニカルクエスチョンに対する経験を披露する野口部長

学会が新たに設けた企画でシンポジストのひとりとして発表する深井・主任部長

大会前日の4日には総会のコアメンバーが集まり、あらためて大渕副院長が大会長としての意気込みを披露。会合には、来賓として医療法人徳洲会の東上震一理事長も出席し、挨拶で自身の胸部外科手術に対する思い出を話すとともに、大会の成功を祈念した。

初日は大渕副院長の挨拶でスタート。大会テーマに触れ、「臨床的疑問に挑戦されている日頃の成果を存分に披露していただきたいと思っています」と参加者に呼びかけた。特別講演や特別企画、新企画などプログラムの特徴も紹介した。

特別講演1では、「野口分類でのクリニカルクエスチョンの経験」と題し、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の野口雅之・病理診断部部長が登壇。野口部長らが提唱し、現在のWHO(世界保健機関)が掲げる初期の肺腺がん組織分類などにつながった野口分類(早期の小型肺腺がんの分類)の成り立ちとその後を解説した。

世界で認められるまでには相当苦労

学会の伊豫田明理事長(右)から大渕副院長に感謝状が贈られる場面も 会場の一角には展示ブースを設置して、徳洲会グループを紹介

野口部長は、①AAH(肺胞が正常の肺胞細胞と、少し異なる細胞で覆われている病変)は腺がんの前がん病変か、②肺腺がんは大腸で見られるように多段階的に発生増悪するか、③肺腺がんで明らかになってきた、いわゆる相互排他的に起こるドライバー遺伝子変異は肺腺がんの悪性化に関与しているか、④タイプAからタイプCへの移行を阻止できるか――という5つのクリニカルクエスチョンを掲げ、これまで取り組んできた経験を紹介。

①では大学卒業後の3年目(1985年)に就職した国立がんセンター(現・国立がん研究センター)での取り組みから野口分類が生まれたエピソードを披露した。6つの分類を提唱し95年に論文化、米国の医学論文誌『Cancer』で発表したものの、世界で認められるまでには苦労したことなども吐露。

②、③は結論まで、④は途中経過を報告。「“AAHは腺がんの前がん病変か”というクリニカルクエスチョンから始まり、最終的には治癒に関するクエスチョンにつないでいったように自分では思っています。完結していませんが、いつか皆さんの前で、お話しできる日が来ればいいと思っています」と、今後も挑戦する姿勢を見せた。

2日目は、大渕副院長が会長講演を実施。「新たなClinical Questionへの挑戦」と題し、これまで取り組んできたクリニカルクエスチョンのなかから、①なぜ横隔神経はデルマトームと一致しないのか、②なぜIABPはノイズに弱いのか、③なぜ自然気胸は気象病と言われるのか、④なぜ自然気胸は若い男性に多いのか、⑤しゃっくりとは何か――の5つを披露した。

このうち、⑤については「ライフワーク」と紹介。10年前に研修医から質問されたことがきっかけで研究を始め、しゃっくりが止まる呼吸中のCO₂濃度を世界で初めて報告するなど、成果につながっていることを強調。ただし、「寝ている時にも止まらず、最長で68年続いた患者さんもいます。そういったケースを根治するのは難しい」とし、「有効な治療法のひとつを発見するなど、患者さんの協力で少しずつ真相に近づいています」とアピールした。

新たなクエスチョンへ 挑戦する気概を大切に

大渕副院長は、これまでの経験から「疑問を解決するために、回り道することがありますが、決して無駄ではない」と語気を強め、「今後も新たなクエスチョンに挑む気概を大切にしたいと思います」と締めくくった。

また、この日は新企画として「女性気胸の定義」をテーマにしたシンポジウムを実施。湘南鎌倉病院の深井隆太・呼吸器外科主任部長が「月経随伴性気胸症例の長期診療経過」をテーマに発表した。

深井・主任部長は、月経随伴性気胸は治療方針や手術適応について定まったコンセンサスがない現状を指摘。そのうえで、14年7月~25年5月までに手術を施行した5例、外来診療を行った4例について、文献などを交えながら病変部位や治療法について検討した。

その結果、“侵襲的治療を要する再発”を予防するためには、初回手術の際に、肺病変に対する十分な観察が重要になることを強調。また、ホルモン療法で3,000日以上、胸腔ドレナージ(排液)が不要な症例を認めており、初期治療としての可能性を示唆した。

各シンポジストの発表を聞いた大渕副院長は「がんばかりが注目されがちですが、がん以外の病気は山のようにあり、長いこと悩んでいる方もいます。女性の気胸もそのひとつ。解明されていないことが多く、私自身、今の通説に疑問を感じる部分があり、新たに企画しました」と説明。「何年かかるかわかりませんが、皆で頑張って答えを出せたら」と期待を寄せた。

両日で一般演題、症例報告のセッションも設けた。一般演題では、千葉西総合病院の山田典子・呼吸器外科医長が、胸腔ドレーンをテーマに発表。

症例報告では、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の横田俊也・ 呼吸器外科部長が「肺炎治療後に新たに発生した肺嚢胞による気胸の1手術例」、野崎徳洲会病院(大阪府)の篠原拓真研修医が「重症右下葉肺化膿症を併発した左続発性気胸に対し外科的治療した1例」、同院の平山伸・呼吸器外科部長が「右気胸を発症し縦隔胸膜にせり出す右下葉S6巨大肺嚢胞をVATSで治療できた1例」、湘南鎌倉病院の山口修央・呼吸器外科医長が「術後早期に再発をきたした若年気胸の一例」、名古屋徳洲会総合病院の可児久典・副院長兼呼吸器外科部長が「間質性肺炎に合併し治療に難渋した難治性気胸の2例」、出雲徳洲会病院(島根県)の児玉渉・呼吸器外科部長が「自然気胸の保存的治療後13年経過し、ブラが増大し再発した壮年期女性の手術に至るまでの検討」と題し、それぞれ発表した。

最後に、大渕副院長が挨拶。「想像以上に活発な議論が生まれたことは、うれしい誤算でした」と総括した。会の運営を鎌ケ谷病院や福岡徳洲会病院、一般社団法人徳洲会の職員がサポートした。

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