徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)09月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1508 4面

和泉市立医療センター
「高度技能専門医修練施設」に認定
肝胆膵外科手術の質担保と外科医師確保

和泉市立総合医療センター(大阪府)は「高度技能専門医修練施設」に認定された。これは、難易度が高い肝胆膵(肝臓、胆道・胆嚢、膵臓など)の外科手術を安全に提供するとともに、実施できる外科医の育成を図るために、日本肝胆膵外科学会が設けた制度。認定されるには、厳正な審査をクリアしなければならない。認定はAとBの2区分あり、同院はB。国の地域がん診療連携拠点病院に指定されていることから、より専門性の高いがん診療を目指し、2023年に肝胆膵外科を開設、実績を重ねてきた。

診療科立ち上げから2年で達成

肝胆膵外科のチーム。(前列左から)野沢彰紀医長、田中部長、(後列左から)掛川副主任、西看護師、井上看護師高難度の肝胆膵外科手術を安全に実施ロボット支援下肝切除での術前シミュレーション。神経障害や褥瘡を防ぐためにマジックベッドや手台の位置など確認。とくにロボット支援手術では右腕がアームに接触しないよう細心の注意が必要腹腔鏡下肝切除での左半側臥位のシミュレーション。神経障害や褥瘡を防ぐためにマジックベッドや手台の位置など確認。

肝胆膵外科手術は肝臓、胆嚢・胆管、膵臓などの疾患に行う治療。悪性腫瘍をはじめ、胆石症、胆嚢炎、膵炎といった良性疾患も対象となる。肝胆膵は消化器の一部だが、各臓器が互いに密接にかかわっており、悪性腫瘍の場合は周囲の臓器を合併切除するなど、消化器外科手術のなかでも、とくに難易度が高いと言われている。

難しい手術を安全かつ確実に行える外科医の育成を目的に、日本肝胆膵外科学会は2008年に高度技能専門医制度を開始。同資格を取得するために、あわせて設けられたのが高度技能専門医修練施設だ。高度技能専門医は外科専門医、さらに消化器外科専門医の資格を有し、そのうえで同学会が認定した修練施設で一定期間、高難度の肝胆膵外科手術の経験を積むなどトレーングをしなければならない。

修練施設に認定されるには、まず日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設に認定され、かつ高度技能指導医あるいは高度技能専門医が1人以上(常勤)在籍している病院でなければならない。そのうえで日本肝胆膵外科学会が定めている高難度の肝胆膵外科手術を年間50例以上行っている施設を修練施設A、30例以上行っている施設を修練施設Bとしている。こうした基準を満たしたうえで、手術の内容に関する記録、術後合併症の有無、在院日数といったデータを提出し、審査をクリアすれば認定される。

和泉市立医療センターは従来、肝胆膵領域の手術を消化器外科で実施。年間20例弱を行っていたが、23年4月に肝胆膵外科高度技能指導医の資格をもつ田中肖吾・肝胆膵外科部長が入職し、肝胆膵外科を開設、以後、同診療科で対応することとした。

「当院は国指定の地域がん診療連携拠点病院でもあることから、より専門性の高い診療を行おうと、新規診療科として肝胆膵外科を標榜することにしました」(田中部長)

24年度までの2年間は田中部長を含め常勤医師2人体制だったが、25年度に高度技能専門医の資格をもつ渡邉元己医師が副部長職で入職、常勤医師3人体制となった。マンパワーの拡充を図るかたわら、手術器材も順次、整備。術中診断に欠かせない超音波診断装置を導入したり、とくに繊細な操作が求められる肝切離に用いる超音波外科吸引装置や術中のカラー蛍光イメージングシステムを更新したりした。「手術に支障がないように、対応させてもらいました」(掛川敬司・総務課資材係副主任)。

また、安全な肝胆膵外科手術を行うために、当初からスタッフの育成などにも注力。手順書を作成し、自院の特性に合わせ何度もブラッシュアップを図ると同時に、実際の手術室で器材を用いながら手術のシミュレーションを繰り返した。

同診療科の立ち上げ当初からかかわっている西七奈実看護師は「とくに腹腔鏡やロボット支援下肝切除は、患者さんの体勢を左にひねる体位を取ることが多く、そのため腕脇に神経障害を残さない、あるいは褥瘡をつくらないといったことが重要になります」と指摘。「スタッフが台に乗ってシミュレーションするなど、細心の注意を払い皆で検討して進めました」。

井上歩夢看護師も「田中先生がチームを大事にしてくれるので、コミュニケーションを図りながら体制や環境を整えていくことができました」と笑顔を見せる。

こうした取り組みを院内外で精力的にアピール。その結果、肝胆膵外科手術の症例が増加、さらに高難度手術も増えた。23年度は26例、24年度には30例を突破し、25年度に入って高度技能専門医修練施設を申請、6月1日付で修練施設Bに認定された。認定期間は30年5月31日まで。「手術支援ロボットの増設も症例が増えた要因のひとつです」(田中部長)。

修練施設A認定を目指す

診療科の開設から、わずか2年で修練施設に認定されたことに対し、田中部長は「手技も安定し、ストレスなく手術ができています。ただ、それも皆さんのおかげ。現在も消化器外科のバックアップを受けながら行っていますし、看護師、事務職員など、多職種の協力があってこそです。本当に感謝しています」とチームワークを強調。

認定を受けたことで、「手術の質を担保するひとつの目安になる」とアピールするとともに、「外科医師の確保にもつながるのでは」と期待を寄せる。今後、同院はさらに症例を重ね、修練施設Aを目指す。徳洲会グループでは同院を含め6病院が修練施設に認定されている。

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