
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)09月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1508 2面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)救急総合診療科は、「マイナ救急ハンズオンコース」を創設した。眼科系、耳鼻科系、泌尿器科系などの救急手技は「マイナーエマージェンシー」と呼ばれ、日常診療での頻度が高い一方、OJT(現任訓練)では系統的に学ぶ機会が限られているのが現状。同コースは、身近な材料を用いた自作シミュレーターを用い、ハンズオン形式で手技を修得するのが目的だ。
インストラクターと受講生で記念撮影
自作のシミュレーターで扁桃周囲膿瘍の診察を学ぶ
同コースを企画した関根一朗・救急総合診療科部長は、「マイナーエマージェンシーは命に直結するわけではありませんが、患者さんにとっては生活に支障を来す緊急事態。だからこそ、迅速かつ適切な対応が求められます」と強調。専門医が不在で対応できない状況でも、救急医が初期対応を完遂できるようにすることが重要だ。
こうした手技を修得するために、同コースではハンズオン形式にこだわった。関根部長は「知識習得だけならWEB学習やAI(人工知能)によるサポートでも可能ですが、手技に関しては、体で覚え、現場の感覚やコツを伝えることに教育の価値があると考えます」と力説。また同コースでは、廃棄予定の医療物品を教育資材として活用したり、必要なシミュレーターを自作したりして、教育の質を維持しつつコストを抑えることも追求した。
インストラクターは関根部長を含む救急科専門医2人に加え、今年、専門医試験を受験する3人の専攻医が担当。プログラムには眼診察(点眼、細隙灯、眼球エコー)、爪脱臼、手指エコー、扁桃周囲膿瘍、尿道カテーテル、異物除去(耳の中、指輪、釣り針)、耳石置換など多岐にわたる手技を組み込んだ。また、眼診察では、眼球を模したグミを用いて眼圧測定を実施。扁桃周囲膿瘍では、ペットボトルと粘土を活用した自作のシミュレーターで診察を行うなど随所に工夫を凝らした。
受講生からは「講義で聞いても手を動かせないと実践の場で困ることがありましたが、今回はハンズオン形式だったので理解が深まりました」、「今まで学ぶ機会が少なかった尿道カテーテルや眼科の手技を実践でき、実用的な内容でした」など感想が聞かれた。専攻医3年次の受講生は「医師として5年目になっても知らないことが多く、あらためて確認すべきことがたくさんあると痛感しました」と、広範な知識と手技習得の機会に高い満足感を示し、継続開催を期待していた。
関根部長は「当コースは救急医の視点で行うことに意味があります」と強調。「ERで働く医師が、現場の初期対応では『ここまではやるべき、ここはやらずに専門医に任せる』といった判断基準を伝えたり、専門書には書かれていない工夫を教えたりすることが重要だと考えます」と力を込め、「手技に関しては専門医による監修を受けました」とそつがない。
今後は、半年後を目安に第2回の開催を計画、対象手技を拡大するなど、さらに充実したコース運営を目指す。