
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)07月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1502 3面
第28回日本臨床救急医学会総会・学術集会が6月19日から3日間、神奈川県で開催され、徳洲会からパネルディスカッション3演題、ハイライトセッション2演題、口演17演題と計22演題の発表があった。同集会のテーマは「Go for the Cutting Edge ~最高のアウトカムを目指して~」。パネルディスカッションを中心に紹介する。
関根部長はSNSを活用した子ども向けの事故予防・救急対応教育について説明
齋藤係長はパネルディスカッションに加え、初開催の研修コースで講師も担当
薬剤師の常駐体制がもたらす効果や課題、自院の取り組みを紹介する立石主任
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の関根一朗・救急総合診療科部長は、パネルディスカッション「こどもの事故予防と救急対応の教育:家庭や学校での啓発活動」で、「SNSリール動画『1分で伝えるER』で広げる啓発活動」と題し発表。SNSを活用した子ども向けの事故予防・救急対応教育について紹介した。
同科ではInstagramを用い、動画コンテンツ「1分で伝えるER」シリーズを発信。内容の半数以上が子どもの事故予防や応急対応を扱い、開設6年で4万9,000人のフォロワーを獲得。とくに反響が大きかった動画には、乳児の窒息時対応や頭部外傷の初期対応があり、再生10万回を超えるものもある。
こうした啓発活動は、「いつでも、どこでも」視聴でき、子育て世代にとってアクセスしやすい利点がある。一方、医療情報の信頼性や情報の切り取りによる誤解を防ぐために、発信は医師主導で行い、内容のエビデンス検証を徹底している。
さらに、SNSと対面教育の連携、地域との協働による啓発活動の強化として、「消防や学校、地域商業施設などと連携し、子どもや保護者向けの講習や救急イベントも展開しています」とアピール。また、小学校低学年には「異常を発見して周囲の大人に知らせる」行動を重点的に教育していることを強調したうえで、救命活動を行った子どもらへの心理的ケアの必要性も訴えた。
札幌東徳洲会病院の齋藤靖弘・薬剤部係長は、パネルディスカッション「救急専門薬剤師の薬学的介入のポイント~最高のアウトカムを見据えた介入~」で、「救急専門薬剤師による学術・教育的アウトカムの模索~1例の症例介入を通じて~」をテーマに発表した。薬剤師が単なる調剤業務にとどまらず、臨床判断・教育・研究を通じて病院全体の質向上に貢献できることを説明。
SGLT2阻害薬による薬剤関連ケトアシドーシス(EUDK)の早期発見に関する症例を紹介した。同症例では、後輩薬剤師が救急外来で患者さんの状態に着目し、ケトン体測定を提案したことで、迅速なインスリン治療につながり、患者さんは数日で退院した。この一連の介入は後輩薬剤師が論文で発表、「薬剤師としての実践と成果の可視化」の重要性を示した。
齋藤係長は、自身の論文執筆時にメンターから受けた支援がいかに大きかったかを振り返り、「次は自分が後輩を支える番」と強調。実際に、後輩薬剤師の研究を支援し、成果を論文化できるよう導いた。「私が書いては意味がありません。後輩が自力でやりきることにより“最高のアウトカム”となります」と語気を強めた。
また同学会では、薬剤師の専門性向上を目的とした「救急・集中治療における薬剤師研修コース(救急外来試行版)」が初開催され、齋藤係長が講師を務めた。導入レクチャーやグループディスカッションの進行を担当。搬送要請から搬送直後、病棟移行前までの3フェーズに分け、急性中毒対応などテーマに活発な意見交換が行われた。定員60人に対して120人以上の応募があり、会場は熱気に包まれた。
福岡徳洲会病院の立石裕樹・薬剤部主任は、パネルディスカッション「救急医療の薬剤師業務のポイント」で、「2次救急外来における専従薬剤師の必要性と今後の展望」と題し発表。救急現場での薬剤師の常駐体制がもたらす効果や課題を、同院の具体的な取り組みとともに紹介した。
同院は年間1万3,000件以上の救急搬送を受け入れる二次救急病院で、薬剤師は平日の日勤帯に1人常駐している。立石主任は「薬剤師が救急車を迎え入れる時点から、現場で即時に介入できることが大きな強み」とし、全患者さんの薬歴収集、他職種への情報提供、注射薬の調製、薬物有害事象の抽出など、薬剤師が救急現場で果たす役割の広さを説明した。
薬剤師による介入は医療の質と安全性を高めている。たとえば、持参薬情報の確認にかかる時間が、一般病棟で行った場合の26時間から、救急外来の担当薬剤師が介入することで2時間に短縮されたデータや、薬歴記載の正確性が向上したデータも提示。さらに、薬剤師が常駐する平日の日勤帯には、薬剤関連インシデントの発生率が有意に低下する傾向も見られた。
一方、こうした体制が全国に広がらない背景には、マンパワー不足と診療報酬上の評価の欠如があると指摘。立石主任は「薬剤師の業務データや医療安全への貢献を可視化して、診療報酬への反映を目指す必要があります」と訴え、今後は定量的な効果の発信が重要であると提言した。