
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)07月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1500 4面
南部徳洲会病院(沖縄県)は、定位放射線治療(SBRT)装置「サイバーナイフ」による前立腺がん治療が、5年で600例を達成した。同装置は数mmから5cmほどの小さな標的を極細の放射線ビームで狙い撃ちできるため、高い線量で治療回数を抑えることが可能。通院負担や有害事象を抑えた先進的医療を提供した結果、口コミで広がり、全国的にも高い実績を誇るまでとなった。また、同院は同装置を用いた全国規模の臨床研究にも参加、第38回日本放射線腫瘍学会高精度放射線外部照射部会学術大会(5月24~25日、北海道)では、同院の眞鍋良彦・放射線治療科医長が筆頭演者を務め、大会長特別賞を受賞した。
日本放射線腫瘍学会高精度放射線外部照射部会学術大会大会長の青山英史・北海道大学大学院医学研究院放射線治療学教室教授(右)と記念撮影する眞鍋医長
ロボットアームが患者さんのまわりを自在に動き多方向から照射
南部徳洲会病院のサイバーナイフを用いた前立腺がん治療が好調だ。導入当初から年120~130例を行い、5年で600例を達成した(図)。同装置はロボットアームを用いて、1回で高線量を照射できるため、従来の強度変調放射線治療(IMRT)と比べ、治療期間を約4分の1に短縮できる。
IMRTでは20~39回の通院が必要だが、サイバーナイフによるSBRTは5回で完結する。こうした利便性や、高精度で有害事象を抑える技術が評価され、同院には離島を含む全国から患者さんが訪れている。ただし、高線量を照射するためには、高い位置精度管理が不可欠。治療中に直腸ガスなどで位置がわずかにずれると、腫瘍からはずれて周囲の臓器に線量が集中し、尿閉や排尿時痛、出血などの有害事象を引き起こす恐れがある。
A群は前立腺全体に標準線量を投与しつつ、MRIで描出できる腫瘍に限定してさらに高線量照射
そこで同院では、金マーカーによる自動位置補正、前立腺と直腸の間にスペースをつくるスペーサーゲル(Space OAR)の使用、治療間隔の見直しという三本柱により、精度と安全性の両立を支えている。
金マーカーによる自動位置補正では、事前に留置した金マーカーを数十秒おきに透視下で自動追尾。1回の照射中に20回ほど照射位置の自動補正を行うため高線量でも極小マージン(範囲)で位置精度が担保できる。
B群は尿道周辺を避けつつ前立腺全体を高線量照射
さらに、スペーサーゲルを前立腺と直腸の間に挿入することで、高線量が直腸に届かないよう配慮。こうした処置は腰椎麻酔下で行い(泌尿器科で1泊入院)、いずれも保険適用されている。

治療間隔の見直しでは、導入当初は5日連続で照射していたが、尿閉や排尿時痛などが一定数発生したため、途中で隔日照射、直近では週1~2回に変更した。眞鍋医長の研究によれば、連日照射の82例(2020年6~11月)では、尿閉や血尿によるカテーテル留置が3例あったが、隔日照射の150例(20年12月~21年8月)では重篤な有害事象はゼロだった。
離島など遠隔地からの患者さんには、2週間程度の入院で対応。眞鍋医長は「われわれは『治療の短さ』を売りにしているわけではなく、あくまで『安全性を確保しながら短期集中を可能にした』という点が重要です」と力を込める。
こうした治療実績が全国的にも評価され、同院は全国8施設で実施された臨床研究に参加。5月の第38回日本放射線腫瘍学会高精度放射線外部照射部会学術大会で、眞鍋医長が筆頭演者を務めた「前立腺癌定位照射における線量増加方法に関する多施設ランダム化第Ⅱ相(SPIDER Ⅱ)試験~1年経過観察時点の成績~」と題する発表が、大会長特別賞を受賞した。
この試験では、前立腺全体に標準的な線量を投与しつつ、MRI(磁気共鳴画像診断)で描出できる腫瘍に限定し、さらに高線量を照射するA群と、尿道周辺を避けつつ前立腺全体を高線量照射するB群で、治療の有効性と安全性を比較。1年時点の中間解析では、Grade 2以上の有害事象発生率はB群にやや多い傾向が見られたが、統計的な有意差は認めなかった。
「MRIで見える腫瘍だけを高線量照射する方法には、見落としのリスクがあります。B群のほうが、がんの制御という意味では安心感があるかもしれません。ただし、より長期間の経過観察が必要です」と眞鍋医長。今後予定している第Ⅲ相試験では、B群を標準線量群との対抗馬として検証する方向性が固まりつつある。
同院は、この試験に全65例中13例を登録し、8施設中2番目の症例数を記録。眞鍋医長は「大学病院ではない市中病院でも、質の高い治療と研究に貢献できるという証明になったと思います」とアピールする。今後は600例の登録を目指す第Ⅲ相試験へと移行する予定で、長期予後を含めた評価が待たれる。「放射線治療は日進月歩です。10年後の標準治療がどうなっているかは誰にもわかりませんが、今できる最善を積み重ねることが大切です」と意気軒高だ。