
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)07月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1500 1面
東京西徳洲会病院は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を開始した。TAVIは重症大動脈弁狭窄症(AS)患者さんのうち、高齢などにより体力的に外科手術の実施が困難な患者さんに行う低侵襲な治療法。5月30日に1、2例目を施行し、奏功した。TAVI実施施設は5月下旬時点で全国に251施設。徳洲会グループのTAVI実施施設は9施設(表)に拡大した。西東京(多摩地域)では2番目の認定施設で、新たな治療の選択肢の提供を通じて、地域の循環器診療の充実、発展に貢献していく。
左から森山医長、齋藤センター長、堂前院長、橋冨部長
嶋田・主任部長
カテーテルを操作しTAVI治療を進める堂前院長(右から2人目)
表
ASは大動脈弁の動きが悪くなる疾患で、全身に血液を十分に送り出すことが難しくなる。進行すると胸痛や失神、息苦しさ、動悸など症状を引き起こし、突然死を招くこともある。
TAVIは、たたんだ人工弁が先端に付いたカテーテルを、足の付け根の血管もしくは肋骨の間から挿入し、硬くなった大動脈弁の内側から広げて留置する。
TAVI実施施設の認定を取得するには、手術実績や人員体制、設備機器に関して高いハードルをクリアする必要がある。
東京西病院の堂前洋・院長兼心臓血管センター長兼循環器内科部長は「TAVIが保険適用となった2013年頃から視野に入れていましたが、当時は基準を満たせず、“10年構想”で計画してきました。実施施設になるには、心臓血管外科の先生方の活躍が土台として必要になります。その後、当地域で発生した緊急の心臓大血管手術や、弁膜症手術など多数の症例を積極的に担えるまでに同科の体制が充実。同科の先生方の診療の積み重ねなどにより認定を得ることができました」と説明する。
続けて「患者さんのためハートチームが一丸となり、西東京で随一の心臓血管センターを目指し、さまざまな選択肢から最善の治療の提供に尽力していきたい」と抱負を語っている。
実施施設として申請したのは昨年。以降、第1期施設として13年に国内で初めて認定を受けた湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の齋藤滋・心臓センター長や森山典晃・循環器内科医長のサポートで、グループ内のTAVI実施施設をチームで見学したり勉強会を開催したりするなど1年以上かけて入念に準備した。
8例目まではプロクター(指導者)が手術に立ち会う。東京西病院では齋藤センター長がプロクターを務めている。
「AS患者さんの多くが80歳以上のご高齢の方々ですので、遠方の医療機関を受診するのは負担が大きく困難なケースが多いです。この地域で新たにTAVI実施施設が誕生するのは大きな意味があります。また、審査を経て認定を受けていますから、患者さんや地域からの信頼感の醸成につながることも期待できます」(齋藤センター長)
5月30日にハイブリッド手術室(血管造影が可能な手術室)で、経大腿アプローチにより、1、2例目のTAVIを施行した。ともに80代の患者さん。堂前院長が術者、橋冨裕・循環器内科部長が助手を務め、嶋田直洋・心臓血管外科主任部長、工藤雅響・麻酔科部長が参加。ほかに看護師、診療放射線技師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士と多職種が手術を支えた。時折、齋藤センター長がアドバイスを送りながら治療は無事に終了し、奏功した。
嶋田・主任部長は「当院心臓血管外科は低侵襲心臓手術(MICS)も手がけています。心臓領域の外科・内科がともに高度な低侵襲手術を手がけていることなどを強みとして、一層、患者さんに貢献していきたい」と意気込みを見せる。
堂前院長は心臓血管センターのさらなる機能向上を目指し、「今後、経皮的僧帽弁接合不全修復システム(MitraClip)にも取り組んでいきたいと考えています」と展望している。