
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)07月07日 月曜日 徳洲新聞 NO.1499 4面
4月に入職した一般社団法人徳洲会(社徳)の植木力・学術顧問(臨床研究アドバイザー)は、徳洲会グループの学術活動を強力に後押ししている。主に徳洲会メディカルデータベース(TMD)を活用した臨床研究をサポート。さらに、グループ病院での講演活動も視野に入れており、名古屋徳洲会総合病院で「臨床研究学術セミナー」を試験的に開催した。こうした活動をとおし、グループ全体の学術活動の底上げを図り、臨床現場で蓄積してきたデータの活用を進めていく。
「徳洲会グループの学術活動を活発にしていきたい」と植木顧問
現在、植木顧問は心臓外科領域での臨床研究の支援を中心に活動している。その取り組みは2023年、大橋壯樹・医療法人徳洲会副理事長からの依頼により、TMDの一部門である心臓外科データベース(心外DB)を用いた研究支援を始めたことに端を発する。
こうした活動を、さらにグループ内に展開するため、植木顧問は25年4月に社徳に所属。TMDの利活用を円滑に進める体制を整え、必要に応じて、より広範な助言も提供できる体制を構築した。
名古屋病院で開催した「臨床研究学術セミナー」の様子
現在、すでに4件の研究プロジェクトの支援を進めており、いずれも企画・準備段階にある。これらの研究では計画立案支援、必要なデータ抽出に向けた要件定義などを行っているが、とくに重要なのが臨床の内容をデータベース上の項目に変換する「翻訳」だ。この過程では、徳洲会インフォメーションシステム(TIS)と医師との橋渡しを行い、双方の理解を助け、研究の円滑な遂行に寄与している。
研究支援では、植木顧問は「テーマを押し付けることなく、研究者の興味を尊重しています」と強調。そのなかでTMDの学術的プレゼンス向上にも貢献していきたい考えだ。「実際に、薬剤の市販後調査におけるTMDの貢献度は高く、その存在感はアカデミアや製薬企業にも広がりを見せています。これは徳洲会グループの保険外収入の増加にも寄与する可能性があると考えます」と明かす。
植木顧問はこれまで心臓外科医としての臨床経験に加え、10年以上にわたりビッグデータ研究に従事している。13年には、全国的なレジストリーであるナショナルクリニカルデータベース(NCD)を用いた研究に携わり、論文作成や統計専門家との協働を経験した。
23年に、静岡社会健康医学大学院大学で社会健康医学専攻修士課程を修了し、社会健康医学の学位(Master of Public Health:MPH)を取得。現在、同大学院大学の博士課程に在学中で、25年度末で修了し、公衆衛生分野の博士号(Doctor of Public Health:DrPH)を取得予定だ。
同大学院大学では、薬剤疫学およびレセプトデータ(診療報酬明細書)を用いた研究を実施している。レセプトデータが有する長期的・広範な症例把握が可能な点に着目し、研究対象としての価値を訴求。植木顧問は「実際に、心外医師の間でも、レセプトデータを用いた研究への関心は高まっており、その活用が今後ますます期待されています」と語気を強める。
一方、教育活動にも積極的だ。4月3日に名古屋病院で「臨床研究学術セミナー」を試験的に開催した。テーマは「今日から使える!臨床での疑問を研究デザインにする方法」。冒頭、植木顧問は「研究スキルがあると、臨床経験をさらに価値あるものに変えることができます」と力を込めた。
セミナーの目標は、①やりたい研究テーマ(臨床での疑問)を具体的な「研究の問い」にする、②その問いに応えるための「研究の型」(研究デザイン)を知る、③統計の役割を理解して苦手意識をなくす。
自身の研究を例に出しながら、研究デザインを明確にするためには、「リサーチクエスチョンを一文で言えるようにすることが大切です」と強調した。
リサーチクエスチョンを検証するための型の例として、「比べて違いを知りたい」、「何が影響しているか知りたい」のふたつを挙げ、それぞれ解説。さらに、「統計は因果関係を知るための『調整』や、リスク因子を特定するための『探索』といった目的を達成する道具」とまとめた。最後に、TMDや心外DBの活用方法など紹介し、閉会した。
今後も植木顧問は、より実践的なレセプトデータやビッグデータの活用ノウハウに焦点を当て、研究者の裾野を広げるためのセミナーを計画。ニーズに応じて、グループ病院を回り開催することも視野に入れている。さらに、徳洲会心外部会で年に一度、研究発表会や勉強会の開催も計画中だ。
植木顧問は課題として、研究デザインの基本的な知識の底上げを挙げる。「統計を学ぶことを重視する傾向がある一方で、それ以外の研究手法や倫理的配慮に対する理解が甘いケースも見られます」と指摘。
また、必要なデータを抽出する際には、TISと医師がスムーズにコミュニケーションを果たすための「共通言語」をもつことも重要だ。
展望として、TMDを活用した研究の活性化を通じ、徳洲会グループ全体の学術活動を促進することを目指す。心外以外の診療科への支援も視野に入れており、ニーズがあれば積極的に対応する方針だ。なお当初目標としていた年3件の臨床研究立ち上げは、すでに目標を上回っており、活動は順調に進んでいる。
植木顧問は「研究デザインの支援、統計以外の学術的素養の補完、TISとの調整など、可能な限り多方面でサポートしていきます。グループ全体の学術活動を活発にし、学術的な信頼性と医療的価値をさらに高めていきたい」と意気軒高だ。