
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)07月07日 月曜日 徳洲新聞 NO.1499 1面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いて腎移植を行う特定臨床研究を近く開始する。ロボット支援下での生体腎移植が実現すれば国内初となる。日本の医療環境に適応したロボット支援下腎移植の安全性と有効性を検討し、将来的な標準治療への位置づけと保険適用を目指す。患者さんの合併症リスク軽減、術後の早期回復、腎機能の改善、QOL(生活の質)の向上などを評価指標とする計画。同院の田邉一成・院長補佐兼腎移植センター長が研究責任者を務める。
「ひとりでも多くの方に腎移植の恩恵を届けたい」と田邉・院長補佐
研究名は「ロボット支援下腎移植の安全性に関する第Ⅰ相臨床試験」。主に外部委員で構成し、倫理的・科学的観点から特定臨床研究の審査を行う医療法人徳洲会臨床研究審査委員会で実施の承認を得た。厚生労働省の「臨床研究等提出・公開システム」であるjRCTに登録したうえで、対象となる成人患者さんから研究参加への同意が得られれば、1例目を実施する。同院腎移植外科の大久保恵太部長と赤羽祥太医長が研究分担者を務める。
遠方からも患者さんが訪れ、年間約40件の生体腎移植を実施(写真は開腹手術で腎移植を行う様子)
手術支援ロボットでレシピエントへの移植を行う(写真はダヴィンチXi)
田邉・院長補佐は「日本では末期腎不全の患者数が増加傾向にある一方、提供される臓器数は大幅に不足しているのが現状です。欧米ではロボット支援下腎移植が普及しつつあり、患者さんのQOL向上や術後合併症の低減に寄与しているという報告があります」と説明する。
田邉・院長補佐は日本内視鏡外科学会技術認定医の資格をもち、執刀あるいはコンサルトした腎移植症例が約2,000例という腎移植のエキスパートだ。ダヴィンチ手術は前立腺がんと膀胱がんで300件超、腎がんでも300件超と豊富な経験をもつ。
現在、国内での腎移植の標準治療は、術式が確立していることや、熟練した技術者による高い成功率を背景に、開腹手術が主流。ただし開腹手術は侵襲が大きく、術後疼痛や回復までに要する期間の長さが課題だった。そのため低侵襲な手術法の導入が急務となっている。
こうした課題を解決するため、湘南鎌倉病院は今回の特定臨床研究を計画、安全かつ効果的な手術プロセスの確立を目指す。
「患者さんへの質の高い医療の提供に加えて、医療従事者にとっても効率的な術式の実現が期待できます。さらに本研究を通じて、国内医療機関の最小侵襲手術技術の普及・促進に寄与し、移植医療全体の治療成績向上に貢献したい」(田邉・院長補佐)と意気込む。
計画では、ドナー(臓器提供者)から摘出した腎臓を、レシピエント(移植希望者)の腹腔内に移植する際の血管吻合や尿管吻合の工程をロボット支援下で実施する。対象は18歳以上の成人患者さん。
除外基準は、高度な腹腔内癒着のある患者さん、全身麻酔に耐えられないと判断された患者さん、重大な感染症など。
同院では現在、ダヴィンチXiが稼働しており、さらに7月に日本で販売開始されるダヴィンチ5を同月中に導入予定。両機種を活用して精度の高い低侵襲な移植手術を実施していく。
一貫して“あきらめない腎移植”をモットーに掲げ、安全性を第一に、可能な限り難症例も断らずに生体腎移植に取り組んできた田邉・院長補佐。腎移植施設としての同院の強みについて「当院の腎臓病総合医療センターの日髙寿美センター長をはじめとする内科と、外科が共に患者さんのためを考え、一丸となってチーム医療として腎移植を実践していることです」と強調する。
免疫抑制療法など術前・術後の手厚い内科的な治療や管理に加え、術後に患者さんが入室するICU(集中治療室)に関しても、小山洋史・副院長兼集中治療科部長を中心とする同科の充実した診療により、術後を安心して任せることができるという。
これまで田邉・院長補佐が腎移植を行ってきた難症例としては、たとえば、宗教上の理由から輸血拒否の立場をとっている患者さんへの無輸血での腎移植や、他院で婦人科手術中に尿管損傷が発生し、腎臓を温存するべく実施することとなった自家腎移植、十数年前に腎移植を行った高齢の患者さんで、血管の石灰化が激しく、組織の高度な癒着も見られ、片側の腎臓の血管が大きく損傷していたため、ジャンピンググラフト(人工血管を介してドナーの腎臓とレシピエントの血管を吻合する手法)を行った再移植症例など、枚挙にいとまがない。
こうしたなかでも同院の生体腎移植の生着率は、移植後10年で約90%と良好な成績を達成している。
また田邉・院長補佐は、徳洲会が国際医療支援活動として取り組むアフリカ・タンザニアでの腎移植支援プロジェクトにも中心メンバーとして参画してきた。技術支援などを行い、現地医療スタッフのみによる腎移植をサポートする活動だ。2018年3月に現地医療者による初の腎移植に成功、その後も症例を重ねている。「今も継続してWEBカンファレンスなど通じて相談を受ける機会があります」。またタンザニアでは現在、腎(臓器)移植センター開設に向けた動きがあり、徳洲会はこれをサポートする計画だ。
各地の徳洲会病院への腎移植相談外来の開設も活発に展開している。具体的には沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)、鹿児島徳洲会病院、山形徳洲会病院、東京西徳洲会病院、羽生総合病院(埼玉県)に開設し、現地に足を運んで定期的に外来診療を行い、腎移植を検討している患者さんの相談を受けたり、術後のフォローを行ったりしている。
「現在は年間40件ほど生体腎移植を行っています。さまざまな事情から移植そのものをあきらめてしまっている患者さんも潜在的におられますから、各地の相談外来も窓口として機能させながら、ひとりでも多くの方に腎移植の恩恵を届けたいと考えています」と抱負を語る。